金銭消費貸借契約の事例及び作成の要点

金銭消費貸借書には、取引の形態毎にさまざまなものがあります。
従って、その取引に欠かせない基本的なルールの記述はもとより、忘れてはいけない重要事項も合わせて知っておく必要があります。

また、契約形態によりいろいろなバリエーションをもった契約が可能であるため、契約の詳細についても併せて確認しておく必要があります。

金銭消費貸借契約書

金銭消費貸借契約書に関しては、既に金銭消費貸借契約のところに記載した通りですので、そちらを参照して頂ければ作成の要点もつかめると思います。

ここでは、本契約を一部変更することによって可能な新たな契約書について記載します。

準消費貸借契約

民法第588条において、「消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。」という規定がありますが、これから金銭を借りるのではなく、既にある債務を当事者の合意に基づき消費貸借契約の目的にすることも可能です。

例えば、当事者間で既に行われた取引で発生した売主の売掛金債権を、本契約における金銭消費貸借の目的とすることに合意した旨及びその日付並びに金額を記載することで、金銭消費貸借契約を金銭準消費貸借契約に変更することが可能となります。


諾成的金銭消費貸借契約

既に述べたように、金銭消費貸借契約は、契約と同時に金銭の貸借が実際に行われる要物契約であり、借主が一方的に弁済の義務を負う片務契約が一般的です。

ところが、貸主から借主に対する金銭の貸付の実行を、契約より以降のある一定の日に行うことを約する契約も可能です。

つまり、将来のある日において、所定の金額を貸主が貸付け、借主が借り入れることに合意した旨を記載することにより、片務契約を諾成契約にするわけです。

債務が近い将来かなりの確率で発生することが予見できる場合、こういう契約も可能と考えます。


連帯保証付契約及び保証のない契約

金銭消費貸借において、連帯保証人をつける場合、契約書そのものに貸主、借主、連帯保証人の3者による記名・押印を行う場合と連帯保証契約を別に締結する場合の2通りがあります。

後者の場合は、連帯保証人なしで先に金銭消費貸借を締結し、後日、連帯保証人を付する場合にもちられる形態です。

この場合、本契約同様3者による連帯保証契約であったり、連帯保証人が一方的に保証する旨を記載した保証書の形態をとる場合が考えられます。いずれにしても、本来、連帯保証契約は、貸主と連帯保証人両者のみで行うことが可能です。しかしながら、主債務者の同意を取って契約にその旨記載しておく方が後々トラブルを未然に防ぐ意味でも望ましいと考えられます。

一方、借主と連帯保証人間の関係に着目すると、連帯保証人が貸主に対し債務を直接弁済した場合、借主に対し求償権が発生します。その求償に関する細かな取り決めや連帯保証人になることを保証人に委託し、それに対し保証委託手数料を借主から保証人に支払う旨を定めた保証委託契約書を締結する場合もあります。

この保証委託契約書は、保証人と借主の関係が身内などの縁者ではなく、独立的な地位をもった関係において用いられると考えていいでしょう。

ところで、連帯保証人がいない場合ですが、金銭消費貸借契約書において、連帯保証人に関する記述を一切省いて、貸主と借主の両者のみの契約形態にすることで可能です。


抵当権設定契約書

抵当権は、不動産に設定される典型的な担保権で、債務者が直接担保を提供して、その担保に債権者のための抵当権を設定する場合と第三者が債務者のために自身の担保を提供して、その担保物件に抵当権を設定する場合があります。

後者の契約を物上保証といい、設定者を物上保証人といいます。

物上保証人が存在する場合、債権者、債務者、物上保証人で且つ債権設定者の3名が契約書に登場します。

ところで、当初物上保証人が存在するものとして契約書を作成したものの、契約前に自身の不動産を担保物件に変更した場合は、どうすればいいのでしょうか?

債務者自身が担保物件を提供し、抵当権を設定する場合、物上保証人の氏名も債務者にし、最後の抵当権設定者の記名、押印を債務者自身がすれば、契約書自体有効になります。

つまり、物上保証人の有無にかかわらず、物上保証人が存在するものとして抵当権設定契約書を作成することで、どちらの場合にも使うことが可能だということです。但し、不動産の内容は、当然変更する必要があります。


抵当権設定契約書に求められる主な事項

抵当権設定契約書を作成する場合、以下の通り、最低限契約書に記載すべき事項があります。

  • 債務者の債務(被担保債務)の内容:元本、利息、遅延損害金、債務者
  • 担保物件の内容並びに抵当権設定登記手続の義務
  • 担保物件に建物が含まれる場合は、火災保険の設定並びに質権設定

上記の必要事項の中で、特に気を付けなければならないのが、不動産に関する内容です。
抵当権の設定登記を法務局で行う場合、登記原因証明情報として、契約書の貼付が求められますので、契約書に不備があれば、抵当権の設定登記が却下されてしまいます。

では、登記原因証明情報とは、いったい何を指すのでしょうか?

  • 登記の原因となった事実又は行為及びこれにより権利変動が生じたことを証する情報
  • 務者の債務(被担保債務)の内容
  • 抵当権者(登記権利者)と抵当権設定者(登記義務者)
  • 不動産の表示(登記簿記載の通りに記載)

上記の事項を間違いなく、漏れなく契約書に記載する必要があります。

また、不動産の表示に関しては、契約書に直接記載することもできますし、別紙として添付することも可能です。


印紙税と登録免許税

抵当権設定契約書には、印紙の貼付は不要ですが、不動産に抵当権を設定する際には、登録免許税が課されます。

登録免許税の額は、債権金額の1000分の4となります。尚、計算した登録免許税の額に100円未満の端数があれば切捨てとし、1000円未満の場合は、1000円となります。


根抵当権設定契約書

根抵当権とは、継続的な取引契約に基づくなど一定の範囲内で発生又は消滅を繰り返している不特定の債権を、極度額の範囲内で担保するために不動産に設定される担保物件です。

ところで、根抵当権には、極度額というものがありますが、これは、債権者が設定する担保物件に対する貸し出し可能な上限金額といえるものですが、その運用においては、以下の二通りの解釈がありますので、契約書には、どちらを指すのか、明記する必要があります。

累積根抵当権

甲乙間の取引において、A、B2個の不動産担保物件に根抵当権が設定され、各々極度額が1億円とした場合に、AB両担保物件を合わせて最大2億円まで貸し出しが可能、つまり極度額の合計金額まで債権回収が可能なものを累積根抵当権といいます。


共同根抵当権

共同根抵当権とは、累積根抵当権と異なり、被担保債権を複数の根抵当権の極度額に応じて按分するものであり、そのため、いくら根抵当権を合わせても、上限が変わるわけではありません。

金融機関が設定するときは、一般的に共同根抵当権となりますが、それ以外の場合は、累積根抵当権となります。

また、共同根抵当権を設定する場合には、契約書のみならず、登記においても共同根抵当権設定の登記をする必要があります。


根抵当権設定契約書に求められる主な事項

根抵当権設定契約書を作成する場合、抵当権設定契約書同様、以下の通り、最低限契約書に記載すべき事項があります。

  • 債務者の債務(被担保債務)の内容として、債権の範囲、極度額、債務者
  • 担保物件の内容並びに根抵当権設定登記手続の義務
  • 担保物件に建物が含まれる場合は、火災保険の設定並びに質権設定

上記の必要事項の中で、特に気を付けなければならないのが、不動産に関する内容です。
抵当権の設定登記を法務局で行う場合、登記原因証明情報として、契約書の貼付が求められますので、契約書に不備があれば、抵当権の設定登記が却下されてしまいます。

では、登記原因証明情報とは、いったい何を指すのでしょうか?

  • 登記の原因となった事実又は行為及びこれにより権利変動が生じたことを証する情報
  • 務者の債務(被担保債務)の内容
  • 根抵当権者(登記権利者)と根抵当権設定者(登記義務者)
  • 不動産の表示(登記簿記載の通りに記載)

上記の事項を間違いなく、漏れなく契約書に記載する必要があります。

また、不動産の表示に関しては、契約書に直接記載することもできますし、別紙として添付することも可能です。


印紙税と登録免許税

根抵当権設定契約書には、印紙の貼付は不要ですが、不動産に根抵当権を設定する際には、登録免許税が課されます。

登録免許税の額は、債権金額の1000分の4となります。尚、計算した登録免許税の額に100円未満の端数があれば切捨てとし、1000円未満の場合は、1000円となります。


債権質設定契約書

債権質とは、債務者の債務を保証するための担保権として、賃貸借に基づく保証金や敷金の返還請求権、生命保険や火災保険などの保険金請求権を担保に供するときに設定します。

例えば、ある取引において、A社がB社に対し、半年を限度とする売掛債権を有していたと仮定した場合、通常であればわざわざその売掛債権に対し担保を請求する必要はないのですが、B社の業績がはかばかしくない場合、A社にとっては、売掛債権が回収できるかどうか不安です。そこで、B社がA社に対し継続的に販売して毎月得ている売掛金に対し、A社がB社に対する売掛債権を被担保債権とする債権質を設定するわけです。

この場合、債権者A社は、被担保債権の額に応じた部分に限り、執行手続きによらずに直接取立てをすることができることになります。

一方、指名債権を担保に供する方法としては、債権譲渡がありますが、このように、継続的な取引において発生する債権や本契約と分離して債権のみ譲渡するのが適切でない場合は、債権質を用います。

また、債権質の設定は、抵当権同様、債権者と設定者が異なる物上保証で行うことも可能です。例えば、甲が乙に対し債権を有し、丙が丁に対して債権を有している場合、乙の甲に対する債務を被担保債務とし、丙が丁に有する債権に質権を設定することが可能です。
この場合、甲が質権者、丙が質権設定者となります。


債権質設定契約書に求められる主な事項

債権質契約書作成においては、債権譲渡と同様に、以下のような事項を契約書に記載する必要があります。

  • 債務者の債務(被担保債務)の内容:元本、利息、遅延損害金、債務者
  • 担保に供する債権の内容:敷金の返還請求権や売掛債権など
  • 期限の喪失など債務者の義務など

ここで、気をつけなければならないことの一つに、敷金返還請求権の行使時期です。

敷金は、賃貸借が解除され、明け渡しが完了して初めて行使できるものですが、途中で債権回収の必要性が生じた場合に、賃貸借契約が継続中であるにも関わらず、第三者が強引に契約解除できるかどうか、疑問が残るところです。

仮に賃貸借契約が賃貸人と賃借人との合意に基づき解除された場合であっても、賃貸人が原状回復義務などを怠っていた場合には、保証金や敷金からその費用が差し引かれ、残金のみが質権の対象となりますので、額面通りの担保価値は期待できないと考えた方が賢明ではないでしょうか。


承諾書又は登記

保証金や敷金の返還請求権に質権を設定する場合、債務者である賃貸人に対する確定日付のある通知若しくは承諾書が必要です。

通常、賃貸契約書には敷金や保証金に対し質権などの担保を設定することを禁じている場合が少なくないので、賃貸人が積極的にその禁止を解除する旨を明記するなどの措置が必要です。

また、先の売掛債権等に質権を設定する場合などは、承諾書の代わりに登記することも可能です。


印紙税

債権質設定契約書には、印紙の貼付は不要です。


集合債権譲渡契約書

集合債権譲渡契約とは、一定の範囲で現に存在し、又は将来発生する債権を集合的に譲渡して担保に供する場合の契約です。

債権譲渡担保は、内容証明郵便によって譲渡人から債務者に対し、債権を譲渡した旨を通知するだけで、比較的簡単に第三者対抗要件を具備できるため、金銭消費貸借などの担保としてよく用いられます。

この債権譲渡担保を集めて、債務に充当する契約を集合債権譲渡契約といいます。

ところで、債権譲渡担保は、抵当権と同様に債務者と設定者が異なる物上保証が可能です。

例えば、甲が乙に対する債権者、丙が丁に対する債権者と仮定した場合、丙が、乙の甲に対する債務を物上保証するために、丁に対する債権を甲に譲渡する旨を内容証明郵便にて丁に通知します。これによって、本譲渡債権を、甲が乙に対して有する債権の担保とすることができます。

丙は、乙の甲に対する被担保債務を物上保証するに足るまで、甲に対し、この債権譲渡を繰り返します。

従って、物上保証人若しくは債務者である債権譲渡人は、債権者の要請があればすぐに、債務者に対し、債権譲渡した旨の通知を出せるように準備しておく必要があります。これを通知留保と言います。


債権譲渡における債務者その他第三者への対抗要件

民法467条1項によれば、「指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。」とありますので、先に例のように丙が丁に対し確定日付のある通譲渡知を行います。

また、判例によると、「他人の債権を譲渡する契約をし、当該債権の債務者に対して確定日付ある譲渡通知をした者が、その後同債権を取得した場合には、何らの意思表示を要せず、譲受人は、当然に債権を取得し、これをもって第三者に対抗することができる。」とありますので、先の例でいうと、乙に債務不履行など期限の利益を喪失するような事態が発生した場合、債権者が、譲渡債権の債務者に対して直接債権譲渡を通知することができ、且つ、丙丁間の契約書や注文書、請求書などの証書を甲に交付する旨契約することも可能となるわけです。

通知のほかに第三者対抗要件として、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」による債権譲渡登記の制度があります。

債権譲渡登記申請

これは、譲渡人と譲受人が共同で債権譲渡登記を申請することにより、債務者以外の第三者への対抗要件を具備できるものです。

但し、債権譲渡登記をすることによって譲受人が債権譲渡を対抗できるのは、あくまでも第三者に対してであって、債務者に対し譲受人が自分が新たな債権者であることを対抗するには、債権譲渡があったことと債権譲渡登記がされたことについて、登記事項証明書を交付して通知するか、又は債務者が承諾する必要があります。この通知は、譲渡人だけでなく、譲受人もすることができます。

この債権譲渡登記の利用は年々増加しており、企業が資金調達を行う手段として一般化しているといえます。しかしながら、通知と比較して、手続きの煩雑さ、経費の問題、債権譲渡事実を誰もが知ることができるといった問題もありますので、事案によって、通知と登記のどちらか最適な方を選択して、契約書を作成することをお勧めします。

譲渡禁止特約

債権に譲渡禁止特約が付いている場合、債権譲渡自体が無効になりますので、事前のか悪人が必要です。

印紙税

集合債権譲渡契約書には、1通200円の印紙貼付が必要です。

リース契約書

リース取引とは、企業が機械やコンピュータなどの設備を調達する場合、売主から直接購入するのではなく、一旦リース会社に対象物件を買い取らせた後、その物件をリース会社から借り受ける契約です。

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リース取引では、まずリース会社が購入代金全額を負担するため、借主は、購入する場合と比較して、初期投資の負担を大きく軽減することが可能となります。

リース取引は、「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に区分され、前者は、リース期間中に借手が物件利用の経済的価値を全て享受する代わりに、実質的に契約期間中の中途解約が不能で、且つ、資産を通常購入した場合に要する対価部分(購入代金)に加えて、貸手に対して対価の支払いを延期した利息部分(費用、手数料、保険代など全て)をリース料総額として支払うものです。


ファイナンス・リース取引

ファイナンス・リース取引は、更に「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に区分されます。

また、所有権移転ファイナンス・リース取引は、所有権移転条項付、割安購入選択権付、特別仕様物件のいずれかの条件に該当します。これ以外は、所有権移転外ファイナンス・リース取引となります。

ファイナンス・リース取引は、一見すると賃貸借契約と似た外観をとりますが、実態は、借手によるリース物件の購入と、その物件の所有権を担保とするリース会社による購入資金の貸付と分割弁済(リース料)になります。

一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引は、以下の要件を満たす取引をいいます。

  • 解約不能リース期間中のリース料総額の現在価値が、借手がリース物件を現金で購入すると仮定した場合の合理的な見積金額(見積現金購入価額)のおおむね90%以上であるリース取引
  • 解約不能リース期間がリース物件の経済的耐用年数のおおむね75%以上であるリース取引

平成20年4月1日以前は、以下の要件を満たす場合、賃貸借として会計処理を行うことができましたが、現在は、「売買取引に準じた処理」が求めれています。例外として、中小企業又は少額短期リースについて「賃貸借処理」が認められています。

  • 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引
  • リース期間が1年以内のリース取引
  • 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引


リース料の設定

リース料の設定は、先にも記載したように、物件購入価格に費用、手数料(利息相当)を加えた総額を、分割弁済回数で除したものとなります。

契約解除と損害賠償の予定

契約不履行などで契約解除がなされたとき、貸手若しくは借手には、予定損害賠償額として残リース料総額を支払う義務が生じます。これにより、実質的に、リース期間中の解約が不能と評価されるわけです。

また、契約が解除されると、リース物件は回収されてリース会社によって処分されますが、その価額は、残リース料の支払いに充当されます。

再リースの設定

契約期間満了後、再リースする可能性がある場合、契約書の中に再リース契約が可能な規定を追加しておくだけで、新たな契約を締結する必要はありません。

印紙税

リース契約書には、印紙の貼付は不要です。