合同会社の設立・運営

合同会社の設立・運営

持分会社

合同会社は、平成18年5月施行の会社法に新しく創設された種類の会社で、合名・合資会社のような社員の信頼関係を基礎として自ら経営を行う反面、株式会社のような間接有限責任といった仕組みを合わせたような特質をもっています。

もともと米国で広く普及しているLLC(Limited Liability Company)を模して創られたのが合同会社ですので、日本でも会社法施行当初からかなり普及するとみられていました。

ところが、思ったほど普及していません。

それは、課税方法が米国と違っていたということが一番大きな理由であると言われていますが、それだけではなさそうです。

しかしながら、ここにきて合同会社のメリットが見直されてきているのも事実であり、当初の目論見通り普及の兆しが見えています。

会社を作りたいが、どういう種類の会社がいいのか分からないとか、悩んでいる方は、是非、以下に記載する合同会社のメリット・デメリットから、その特徴並びに株式会社との違いを理解して、目的に沿った会社を設立してください。

分からないことがあれば、お問合せからメールもしくは電話にてお問合せください。

合同会社のメリット・デメリット

合同会社には、以下のように株式会社や他の持ち分会社とは違った数々のメリットがあります。

[メリット]

  1. 設立時に法務局に支払う登録免許税が安く、また維持費も安い
  2. 公証人による定款認証が不要のため、手続に要する労力、認証費用が節約できる
  3. 決算公告の義務がない
  4. 払込額の2分の1超を資本金に計上する義務がない
  5. 社員総会、取締役、監査役、会計監査人などの設置義務がない
  6. 業務執行社員、代表社員に任期の定めがない
  7. 出資比率に比例しない利益配分が可能
  8. 出資金額にかかわらず、社員は平等の発言権を有する
  9. 原則、会社内部のことは、社員全員の一致で決定することができる
  10. 迅速な意思決定ができる
  11. 比較的小規模の会社に向いているが、所有と経営を分離させたくない大会社の経営者にも最適な会社形態である
  12. 法人が業務執行社員になるだけでなく、代表社員になることも可能
  13. 親会社が米国法人で日本の子会社が合同会社の場合、パススルー課税が認められる

他にもまだまだ合同会社のメリットはありますが、逆にデメリットにはどんなものがあるのでしょうか。メリットばかりに目を奪われて、大きなデメリットがあることを知らないで失敗する人もおりますので、以下のデメリットについてもよく理解し、重要な判断材料にしてください。

[デメリット]

  1. 公証人による定款認証がないため、登記時に登記官から定款の補正を指摘させる可能性がある
  2. 会社内部のことは、社員全員の一致が原則
  3. 社員となるものは、定款作成から登記申請までの間に、出資全部の履行が求められる
  4. 株式会社のように自己株式(持分)を取得することができない
  5. 知名度が低い
  6. 株式会社に組織変更しなければ上場することができない

他にもデメリットはありますが、いずれにしても日本では会社といえば株式会社を指すくらい当たり前のことと思われておりますので、金融機関や取引先などから、何故株式会社ではなく合同会社を選択したのか、相手が納得するようなしっかりした説明を求められる場合があります。

株式会社と合同会社の相違点

以下に、合同会社と株式会社や他の持分会社と異なる点について、もう少し詳しく説明します。

有限責任社員と資本金制度

合同会社は、株式会社同様、有限責任社員のみで構成されており、また、資本金制度も存在します。無限責任社員がいないわけですから、資本金の代わりに労務を提供するわけにはいきません。つまり、会社債権者保護の観点から、金銭等による全額払い込み義務が社員には課されます。

合同会社では、社員の氏名・名称は、定款の記載事項となっておりますので、社員の交代や加入に際しては、定款の変更と同時に全額払込みが完了しない限り、社員とは認められません。

株式会社では、資本金の額のみで、株主は定款記載事項ではありません。また、他の持分会社では、全額払込み義務は課されていませんので、社員の氏名・名称の定款変更が済み次第、社員となることができます。ここが、合同会社と、株式会社や他の持分会社との大きな相違点になります。

一方登記に関しては、株式会社のように取締役、監査役などの役員の変更を全て登記する必要はなく、業務執行社員と代表社員のみ登記すればいいので、定款変更に要する手数料の節約が可能です。

資本金の減少と出資の払戻しについて

会社の業績が悪化し、資本金に見合う財産を確保しておくことが難しくなった場合、資本金を減らして、その減らした分で損失分を埋め合わせることができます。

ただし、この場合、債権者保護手続が必要となり、会社債権者に意義を述べる機会を与え、意義を述べた債権者には、債務の弁済などをしなければなりません。

出資の払戻しは、他の持分会社同様認められますが、合同会社では定款を変更して、出資の額を減少させた後でないと認められません。また、定款変更ですから、当然社員全員の同意が必要となり、他の持分会社の様に自由な払戻しはできません。

また、払戻金が剰余金を超える場合の出資払戻しの禁止や社員の責任などの規定等もありますので注意が必要です。

退社に伴う出資の払戻しについては、払い戻す額が剰余金をこえる場合、債権者保護手続が必要になります。

所有と経営の一致

合同会社では、所有者が経営を自ら行う意欲があり、所有と経営が分離していない、つまり株主が自ら経営に当ることから、不特定多数の人が出資する株式会社とは大きく異なります。

当然、株式を上場することはそのままの形態では不可能です。しかしながら、他から資金を調達する必要性がないほど豊富に運用資金があり、業績が順調に伸び、利益が十分に上がっている会社であれば、上場による煩雑な規制に囚われることなく、長期的な視野にたって経営を行うことが可能です。

米国では、当然上場しているであろうと思われるような大企業であっても、合同会社と同じ形態の会社が多く見られます。会社名の最後にLLCという名前が付いている会社がこれにあたります。

日本においても、外資を中心に、合同会社として営業している大企業が数多くみられるようになりました。

最近MBOなどで上場を廃止するケースが多く見受けられますので、設立当初から潤沢な資金を背景とした合同会社が、今後増えていくのではないかと考えられます。

設立費用について

株式会社の場合、以下の費用がかかります。

  1. 定款印紙代:4万円(電子定款の場合、不要)
  2. 公証人による定款認証:5万円
  3. 定款謄本2通:2千円
  4. 登録免許税:資本金の1000分の7(15万円に満たない場合は、15万円)

合同会社の場合、以下になります。

  1. 定款印紙代:4万円(電子定款の場合、不要)
  2. 公証人による定款認証:不要
  3. 定款謄本:電子定款を保存したCD-R
  4. 登録免許税:資本金の1000分の7(6万円に満たない場合は、6万円)

資本金につきましては、株式会社は、最低1円から、合同会社は0円でも法律的には可能ですが、どちらにしても現実的ではないので、少なくとも上記設立に係る費用並びに当面の維持費は必要です。

会社の機関と企業経営及び利益の分配

合同会社には、株式会社の株主総会に匹敵する社員総会だけでなく、取締役、取締役会、監査役、監査役会等の機関の設置が不要です。そのため、迅速な意思決定が可能となり、機動性の高い企業経営が可能です。

そのため、会社の合併契約を例にとると、設立する会社を合同会社にすることにより、契約当事者である会社同士で契約内容を取り決め、その内容を合同会社の定款に容易に反映させることができます。

また、両社は、各々業務執行社員として会社の経営に直接関与することもできますし、更にそこから上がった利益を出資比率若しくは予め定款で定めた比率に基づいて、容易に分配することも可能です。

また設立する会社が米国の子会社の場合、パススルー課税が認められているので、税制面においても株式会社を設立するよりメリットが大きいといえます。

尚、パススルー課税とは、法人などの所得に課税せず、その出資者、この場合は出資者である親会社の利益と合算した総利益に対し課税する仕組みであり、二重課税を防ぐという意味合いもありますが、子会社が赤字の場合は、親会社の利益が減少するので、節税効果も期待できます。

合同会社に適した事業とは

上記の合同会社のメリット・デメリット、株式会社との相違点を基に、合同会社に最適と考えられる事業や人等について、以下に列挙します。

子会社や合弁会社

子会社が、親会社とは異なる独自の営業展開をしている場合を除き、一般的に親会社の知名度や信頼をベースに営業展開しているケースが多いので、会社の形態が株式会社である必要性はかなり低いと考えられます。

逆に、法人が代表社員になれる上、株主総会、社員総会、取締役や監査役の設置義務もないので、迅速な意思決定が可能であり、また、役員の更新にかかる手続きも不要ですので、維持費も安くて済みます。よって、子会社には、合同会社が最適な会社形態ではないかと考えられます。

合弁会社においては、契約内容を反映した定款を作成し、両当事者が直接経営を行うことが可能となるため、所有と経営が分離した株式会社よりも本来の目的の沿った経営が実現しやすいと考えられますので、合同会社がお勧めです。

節税を目的とする会社

不動産管理会社や資産管理を目的とする管理会社等の場合、節税を目的とするため、会社の形態が事業の目的に影響を及ぼすことはほとんど考えにくいので、より維持費の安い合同会社は最適な会社形態といえます。

出資額に関係なく平等の発言権が必要な場合

株式会社の場合、株式数によって議決権に差が生じますが、共同事業の中には、出資者個人の議決権に差があるとうまくいかない場合もありますから、そういう場合には、合同会社が最適な会社形態になります。

会社名が表面に出ない会社

美容院や理容院、その他街の雑貨屋、八百屋、飲食店等では、屋号だけを表示するのが一般的です。このように、会社の種類を表示する必要がない場合や顧客自体が会社の種類を気にしない場合には、合同会社がお勧めです。

主婦やシニアが起業する場合

失敗してもリカバリの猶予期間が少ないシニアや手持ちの運用資金が少ない主婦においては、会社の設立費用や維持費の安い合同会社がお勧めです。

定款の作成

合同会社の設立では、定款作成が一番重要な作業になりますが、会社法に関する知識が不足している人や会社経営の経験がない人には難しいといえます。

定款の不備により、経営上の問題が生じることも十分考えられますので、是非、定款作成のプロである行政書士に電子定款の作成を依頼することをお勧めします。