ビジネス著作権

アパレル著作権とは?

アパレル関連業者と一口に言っても、生地から新しく製品を製造する事業者と古着を再加工して新たなデザインに仕上げたり、バッグやぬいぐるみ等全く異なる製品に加工する事業者など様々です。

まずは、生地から新たな衣服を製造する事業についてみてみると・・・・

被服の加工工程における事業者の権利

一例として、被服を加工する工程を以下に表示します。

① デザイン設計
     ↓
② パターン製作
     ↓
③ トワル組み
     ↓
④ サンプルパターン製作
     ↓
⑤ サンプル品の制作
     ↓
⑥ 量産パターン製作
     ↓
⑦ 量産加工

以上のように、大手の服飾メーカーの加工工程には、デザイナー、パタンナーと呼ばれるパターン(型紙)を製作する事業者、そのパターンをもとに立体的な形状を簡易的に試作するトワル組みを専門に行う事業者、パターンを基に衣服を加工して、量産する服飾メーカー、その他ここには記載しておりませんが、被服の生地を製造する事業者など、いろいろな事業者が存在します。

衣服と言えば、デザイナーという言葉が思い浮かびますが、他にも大勢の異なる人たちが専門的な仕事をしているわけであり、その結果には、何らかの権利が存在してもおかしくありません。

とりわけ、デザイナーの権利に目が向きがちですが、確かにデザイナーが製作する衣服のデザインは、創作性や芸術性といった著作権の要件にぴったり合致しますので、著作権の主張はしやすいと言えます。また、意匠権や商標権といった他の知的財産権の主張も有名デザインナーを抱える企業にとっては、当然主張すべきものとしてしっかり管理されているのではないかと思われます。

一方、その他の専門家の権利はどうでしょう。

パタンナーの権利は?

著作権法第10条第1項各号に著作物が例示されており、パターン(型紙)がその中のどれに当てはまるかというと、恐らく以下に表示した第6号ではないでしょうか。

「地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物」

学術的かというと恐らく当てはまりませんし、工業製品を製造する中で用いられますので、意匠権を検討すべきかもしれません。

意匠権とは、視覚を通じて美感を起こさせるものでなくてはなりません。また、工業製品の設計図面の創作性に関して、産業財産権の保護の対象なので、設計図に具現された技術思想は著作権の保護を享受できないという見解もあります。

しかしながら、建築設計図を考えてみると、明らかに工業製品の設計図面ではありますが、著作物性を認めています。

一方、パターンについて考えてみると、パターンが美感を引き起こすことは到底考えられませんので、やはり著作物性の有無を考えるべきだと思います。

パターンは誰が書いても同じであれば、創作性のある図面とは認められませんが、製作者によってできたパターンが異なるのであれば、単純に否定することはできません。

また、デザイナーが求める衣服に仕上げるまでにパターンの修正が何度も行われる場合を考えると、手法は同じであっても、同じパターンは存在しないはずです。そう考えると、建築図面や地図が著作物として認められるのと同様に、パターンも著作物として認められる余地は十分にあるのではないかと考えられます。

更に、衣服の良し悪しは、デザインは勿論のこと、パタンナーの技術に支えられていると言われています。つまり、パタンナーが作るパターンの良し悪しが衣服の出来栄えを左右するといえるわけですので、そういう高い技術を持ったパタンナーが苦労して製作したパターンが、無断で複製、転載、転用されたとしたらどうでしょう。

あるパターンの製作をお願いしたら、ある人は数千円、ある人は10万円を超えるとしたら、同じ価値とは到底言えないはずです。一見するとあまり変わらないかもしれませんが、出来栄えは全然違うはずです。これは、極端な例かもしれませんが、それほど出来栄えを左右する重要な工程で作成されるものに何の権利もないと考える方が寧ろ時代遅れではないかと思いませんか?

法律は、その時代に適応すべく常に進化しなければいけませんが、必ずしも時代を反映しているとは言い切れません。法律にないから権利は認めないという短絡的なものではありませんから、パターンにおいても、著作物としての権利を主張し続けることが大切であり、無断での複製や譲渡、貸与、転載、転用等を禁止するよう契約書などの書面に明記することが必要でしょう。

アパレル著作権に関するQ&A

今や、被服生地から洋服のみならずバッグや小物入れ等の製品及び古着・中古着物等から異なるデザインの被服や、バッグ・小物入れ等にリメイクされた製品が市場に溢れています。

ところが、こういったリメイクを専門とする人々が見落としがちなのが、生地や古着等に付属する著作権や商標権、意匠権といった知的財産権の存在です。

何となく聞いたことはあるけど、どういう権利なのか、自分が今やっていることが法律違反なのかどうか、違反だとしたらどう対処すればいいのか等、知りたいけど誰に聞けばいいのかわからないという人も多いようです。

以下に、そういった洋服やバッグ、小物類等へのリメイクを専門とする方々から頂いたご相談と解答をいくつか取り上げて掲載しましたので、参考にしてください。

生地の利用に関するQ&A

  1. 被服生地から被服やバッグ等の製品を製作する場合



    1. 著作物性のある生地(キャラクターものやデザイナーズブランド)を使って商品をつくり、それを販売したときに抵触する法律は何ですか?
      1. 一般的に布製生地は被服製作が予定されているので、著作物性があっても被服に加工する場合は問題ありません。これを「明示又は黙示の許諾」といいます。
      2. 著作物性のある被服生地を被服以外に加工する場合は、明示又は黙示の許諾に該当しませんので、著作権の侵害となる可能性が高いと言えます。従って、生地の販売元に予め許諾を得てから購入又は加工するようにしてください。

    2. 被服生地に商用利用不可と明示されている場合は、どうしたらいいのでしょうか?
      1. 仮に生地を被服に加工する場合であっても、商用利用はできません。しかしながら、商用利用とは具体的にどのレベルを指すのか、詳細を確認するようにしてください。一切の商用利用が不可なのか、ある一定の条件の下で許可されるのか、その解答によって対応が随分違ってきます。

    3. 生地を直接販売元から購入する場合だけでなく、間接的に購入する場合(中古生地)、他人が生地を持ち込んで被服などの製作を依頼される場合は、受けてもよろしいのでしょうか?
      1. 基本的な考え方は、上記と同じですので、この場合、新品・中古によって対応が変わることはありません。

    4. 被革やエナメル素材等をバッグ等に加工する場合は、問題ありますか?
      1. バッグに加工することが予定されている被革やエナメル素材であれば、当然バッグへの加工が許されるので、素材のデザインに著作物性があっても問題はありません。但し、商用利用不可の場合は、上記のように別途対応が必要です。

    5. 法律に違反する場合、どういった罰則が科せられるのですか?
      1. 著作権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれを併科。

  2. 他人の所有する古着や中古の着物を預かりリメイクする場合



    1. 個人の所有物である古着・着物などを預かり、それを洋服やバッグにリメイクする「中古服・着物のオーダー」があります。当然、材料費や縫製代は請求しますが、加工した製品をその個人に返す場合でも、生地に企業のロゴマークやイラスト、刺繍などのデザインが含まれている場合は問題になりますか?
      1. 著作物性のある洋服や着物は、個人で購入した時点で著作権の中の譲渡権は消尽しますが、複製権や翻案権、二次的著作物の利用に関する現著作者の権利は消尽しません。従って、購入した洋服や着物に企業のロゴや著作物性があると思われるイラスト、刺繍などが施されている場合、勝手にリメイクすることは、商標権又は著作権の侵害となる可能性が高いと考えられます。

    2. 市販するわけではなく、購入した個人に返すだけなのに、加工した人も罰せられるのですか?
      1. この場合、リメイクを行った人は、商標権又は著作権侵害の手助けをしたということで、その行為が幇助行為に当たり、依頼主とともに共同不法行為が成立します。
        どうしてもやって欲しいと言われたら、洋服の販売元若しくは著作権者等から、洋服若しくはバッグ等にリメイクするための承諾を得てから行うようにしてください。

  3. 自分で購入したり、無償でもらった古着や中古着物など中古素材をリメイクする場合
    1. 自分で購入したり、人からもらったりした古着や中古着物を使って商品をつくり、第三者へ販売をする場合、法律上何か問題ありますか?
      1. 登録商標が古着にプリントされていたり縫い込まれていたりした場合、商標権の侵害にあたりますので、無断でリメイクすることはできないと考えてください。
      2. 著作権に関しては、キャラクターや非常にユニークなデザインなどがプリントされている場合は無断でリメイクすると著作権侵害となる可能性が高いと考えられます。
      3. 商標もなく、キャラクターもなく、デザインに創作性が感じられない場合は、商標権、著作権の侵害には該当しない可能性が高いと言えます。但し、創作性の有無は個人の感覚に寄るところが大きいので、絶対にそれらの権利を侵害することはないとはいいきれませんので、あまり楽観的には考えない方が無難です。
      4. 古着を加工して製品を製作し販売する場合、非常に面倒ですが、古着や中古着物そのものを加工して商用利用していいのかどうか、販売元に確認するのが最も確実な方法です。

中古品の売買に関する許認可について

  1. 中古素材(廃棄素材)をつかった商品を販売するときは、何か特別の販売資格や許可などが必要だったりしますか。
    1. 古着を購入して、何らかの加工を施したとしても、あくまで身に着けることを目的とした製品であることにかわりがなければ、古物商許可が必要です(古物商許可が必要な古物の中に衣類が入っており、事例として、洋服、着物、その他衣料品、敷物類、テーブル掛け、帽子、布団、旗等があげられています。)。
    2. 一方、古着をバッグや小物入れなどに加工して別の目的となる製品として販売する場合はどうかというと、やはり身に着けるものであると広義に解釈して、古物商許可は必要と考えておいた方がいいでしょう。
    3. 古着をぬいぐるみに加工した場合はどうかということですが、部屋に置いておくような大きさのぬいぐるみは、流石に身に着けるものではないので、古物営業許可は不要と考えていいでしょう。
  2. 古着を無償で引き取る場合でも古物商許可が必要ですか?
    1. 無償で引き取った古着を加工して販売する場合には、古物商許可は必要ありません。
  3. 古物営業許可を受けないで古着を加工して販売した場合の罰則を教えてください?
    1. 無許可営業の場合、古物営業法違反で、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。
      中古の生地を含む衣類を購入し(無償で引き取る場合を除く)、加工して販売する場合、目的物がバッグや小物入れ等をメインにしている場合であっても、被服加工を請け負う可能性がある場合には、安心して取引を行うためにも、古物商許可を受けることをお勧めします。

市販の洋裁本に掲載された型紙について

  1. 市販の洋裁の本に掲載されている型紙をもとに洋服を作ろうと思っているのですが、その下に以下のような注意書きがあります。これは、具体的にどういうことを指しているのでしょうか?
    注1)本書のコピー、スキャン、デジタル化等の無断複製は著作権法上での例外を除き、禁じられています。本書を代行業者等の第三者に依頼してスキャンやデジタル化することは、たとえ個人や家庭内での利用でも著作権法違反になります。
    注2)本書で紹介した作品の全部または一部を商品化、複製頒布、及びコンクールなどの応募作品として出品することは禁じられています。
    1. 著作権法上での例外とは、個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合、その著作物を複製することができます。
      つまり、本人が購入した本に掲載された型紙を基に、実寸大の型紙を起こし、服を製作することは可能です。但し、販売目的で型紙を使用する場合は、注2の禁止事項に抵触するのでできません。
      また、頒布複製が容易となるスキャナーなどによるデジタル化を許諾なく第三者に依頼して行うことは、例外なくできません。

  2. 図書館に所蔵されている洋裁の本に記載されている型紙を複製することは、非営利の場合であれば問題ないですか?
    1. 図書館でコピー機による複製を行う場合、非営利であっても地図などと同様に複製する範囲に制限が課される可能性があります。また、複製をお断りする図書館も見受けられますので、ご利用する図書館にご確認ください。