NPO法人の設立・運営

NPO法人の設立

特定非営利活動法人(NPO法人)とは?

営利を目的とせず、社会貢献活動を行う民間組織をNPOといいますが、これは、Non(非) Profit(利益、営利) Organization(組織)の頭文字をとった略語であり、法人格を持たない任意団体(ボランティア団体や市民活動団体)もあれば、法人格を有する特定非営利活動法人(NPO法人と略して言う場合が多い)もあります。

一般的にボランティア活動を行っている任意団体が、いくつかの理由で法人格を有するNPO法人に移行するケースが多いようですが、最初から法人格を有するNPO法人を設立しても構いません。但し、ボランティア活動の実績がゼロで始める場合、理想と現実のギャップの大きさに活動内容の見直しを余儀なくされることもありますので、ボランティア活動に精通した人と一緒に起業することをお勧めします。

1 なぜ法人格を取得するのか

任意団体を運営していてすぐにあることに気が付きます。

あることとは、任意団体名では契約の当事者にはなれないし、銀行などの口座も任意団体の名前だけでは開設できないということです。個人事業主と同じと考えればわかりやすいかもしれません。

代表者個人の契約から法人契約に

金融機関での口座開設や不動産の購入、自動車の登録、電話の加入、備品などの固定資産の購入など、任意団体では全て代表者個人が契約の主体となりますので、代表者が交代すれば当然名義変更の手続きが必要になりますし、場合によっては、再度新たな契約を締結する必用があるかもしれません。それは、あくまで個人の信用に基づく契約なので、代表者が変われば使用の度合いも変わりますので仕方がないでしょう。

一方、法人格を有する団体であれば、代表者が誰であろうが、法人が契約の主体となりますので、契約時の代表者がその後変わっても、新たに契約を締結し直す必要はありません。

また、損害賠償などの責任が個人から法人へ移行するので、代表者及び役員個人の精神的、金銭的な負担が大きく軽減されます。

信用が個人と法人では全然違う

情報が広く公開されるので、社会から信頼を得られやすくなるうえ、社会における知名度も高くなります。

また、企業や行政から業務委託などが受けられやすくなりますし、職員と雇用契約を締結することも可能となりますので、人材確保が任意団体よりも有利になります。

法人格を有することで最もそのメリットを感じるのが、補助金、助成金が受けられやすくなるということです。任意団体を補助金・助成金の対象としていない企業や行政が非常に多いのに対して、NPO法人はほとんどの補助金・助成金の対象になっています。

活動の規模が大きくなり、より組織的、継続的な活動を行うことができるようになる

どんどん規模が大きくなり、いろいろな種類のボランティア活動を行う場合、しっかりした組織を構築し、民主的な運営を行うことが不可欠です。逆に考えると、規模を拡大しようとした場合、任意団体ではなく、法人格を有した方がやりやすいということになります。

また、任意団体は、始めるのも止めるのも簡単な手続きで行うことができます。視点を変えると、いつやめるか分からないのが任意団体ですので、長期的な視野に立って協業しようと思っても、相手方の企業や行政にとっては信用面で大きな不安が残りますので、難しいのが実情です。

一方、NPO法人は、都道府県知事の承認を得、法務局に法人登記をしておりますので、解散、廃業は簡単ではありません。法的なしっかりした手続きを踏む必要がありますので、長期的な契約も可能です。逆に言うと、事業を長期的に継続する意思がはっきりしている場合には、法人化を検討すべきではないでしょうか。

2 法人化のデメリット

 任意団体であっても法人における定款と同様な規約は存在しますし、助成金を受けようとする場合には、NPO法人と同レベルの規約が求められることもありますが、その通り実施しなかった、若しくはできなかった場合でも、会員が納得していれば、特に大きな問題にはならないでしょう。まして、団体登録している市区町村から細かな指示を受けることもありません。

また、収支決算や監査なども任意団体もNPO法人と同様に行いますが、法的に決められたフォームに基づく必要はありませんし、かなり簡略化することも可能です。

 一方、NPO法人の場合、社員総会を開催して、活動報告、予算、決算を明らかにし、会計原則に即した会計処理を行う必要があります。最後には、毎事業修了後、所轄庁への報告義務があります。

 また、定款変更など重要な変更が発生した場合、所轄庁への届け出や承認申請、情報開示の義務が発生します。

 原則として法人県民税・市町村民税均等割が課税されますし、法人税法上の収益事業を行っている場合には、更に法人税、法人事業税、法人県民税・市町村民税法人税割が課税されます。但し、法人税の減免の制度がありますので、要件に合えば利用することをお勧めします。

I 法人設立までの流れ

NPO法人を設立するには、大まかに言うと、以下の流れに沿って手続きを行うことになります。

  1. 都道府県知事の認証を得る
  2. 所轄の法務局にて法人登記を行う
  3. 都道府県知事に完了届を提出
  4. 県税事務所、市役所市民税担当に開業届提出

NPO法人は、一般法人とは異なり、登記に関する登録免許税は課せられませんが、登記事項の新規・変更時には、都度、都道府県知事の認証が必要となります。また、定款変更は総会の決議事項になりますので、役員は、手続きに多くの時間と労力がかかることを認識しておく必要があります。

1 設立の準備から認証まで

NPO法人の都道府県知事への設立申請手順は、以下のとおりです。

① 法人設立相談

法人の代表者及び事業運営の中心人物となるべき発起人同士若しくは行政書士等許認可の専門家を交えて、法人の設立に向けた相談を行う。

主な相談事項は以下のとおり:

  • 法人の商号
  • 主たる事務所及び従たる事務所の所在地
  • 設立趣旨及び活動目的
  • 活動分野及び事業内容
  • 事業年度
  • 正会員及び賛助会員の入会金と年会費の決定

設立申請までに必要であれば都度集まって、上記内容について協議し、修正等を行なうことで、定款の骨子を固める必要があります。

② 社員10名以上を集める

発起人となるべき10名以上の人を集めることは、簡単なようでなかなか難しいものがあります。何故なら、非営利活動法人ですので、基本的には、ボランティアの精神に則り、労力、知力等を無償で提供したうえ、更に年会費等を支払うわけですので、それに見合った見返りが期待できない場合には、誰も高い会費を払いたいとは思わないでしょう。そうならないためにも、会費等の適切な額がいくらか、事前にヒアリングするなどしてスムーズに社員集めが進むように準備をしておく必要があります。

③ 定款のドラフトを作成する

特定非営利活動法人ガイドブック(都道府県単位)をもとに定款のドラフトを作成することになりますが、事業計画及び活動予算と密接に絡みますので、具体的な事業計画や予算を立てながら定款の事業目的、主旨、事業内容などの確認や見直しといった作業を進めていく必要があります。

設立相談時に代表者を誰にするか、恐らく決まっていると思いますが、定款には社員であり且つ役員の氏名を記載する必要がありますので、会員がなかなか集まらない場合は、会費や入会金の額を調整しながら人員の募集を行い、最終結果を定款に反映させてください。

④ 設立趣旨書を作成する

設立趣旨書には、「主旨」と「申請に至るまでの経過」の2点について、簡潔にまとめてA4用紙に記載する必要があります。

まず、主旨ですが、絶対に外してはいけないポイントが2点あります。

  • NPO法人の活動の社会的意義
  • 法人が取り組んでいこうとする活動の公益性

結果的に、定款の目的に同じか類似した内容になってしまうかもしれません。

申請に至るまでの経過ですが、法人を設立する前に任意団体として ボランティア活動を行っていた場合は、時系列的にいつ、どういう活動を行ったかを簡潔に記載する必要があります。また、必須記載事項として、「何故法人化する必要があるのか」その理由を分かりやすく説明する必要があります。

任意団体での活動がなく、全く新規に活動を始める場合であっても、「何故法人化する必要があるのか」ということは、しっかり記載しなければなりません。

⑤ 事業計画(案)を設立年度と翌年度の2年分作成する

承認申請で一番時間がかかるのが、この事業計画と活動予算の作成です。

まず、非営利活動のみの場合は、「特定非営利活動に係る事業」の項目に、「定款の事業名」「事業内容」、「実施予定日時」、「実施予定場所」、「従事者の予定人数」、「受益対象者の範囲及び予定人数」、「支出見込額」を記載した一覧表を作成します。

この中で、「定款の事業名」と「支出見込額」は、そのまま活動予算に組み込まれることになりますので、事業計画に変更が生じた場合には、必ず活動予算の修正も忘れないように行う必要があります。

一方、営利活動も合わせて行っている場合には、「その他の事業」という項目に、「定款の事業名」、「事業内容」等を記載した一覧を追加する必要があります。

ここで最も大切なことは、定款に記載した全事業の事業計画を作成する必要があることです。今年度はこの事業はやめて、次年度から開始しようという考えは、認められないということです。事業が複数ある場合、最初の年から全てを満遍なく同時並行的に実行に移すというのはかなり無理があります。従って、ヒト、モノ、カネを集中する事業と手を抜かざるを得ない事業、具体的な計画の立案だけで終わってしまう事業もあるでしょう。とにかく、初年度の短い期間でできる範囲のことを納得できる内容にまとめることが必要です。

事業計画は、2年分作成する必要があり、2年目は1年目に比べて更に充実した内容になると思います。予算の額も大きくなりますので、大きくなりすぎて活動予算の正味繰越額がマイナスにならないように注意してください。

⑥ 活動予算(案)を設立年度と翌年度の2年分作成する

活動予算書を作成する場合、まず、非営利事業だけのフォーマットと非営利事業に加えて営利事業がある場合のフォーマットの2種類があるので、適切なフォームを選択する必要があるということです。

大した収益事業ではないのであれば、非営利事業の中でうまく処理することを考えた方がよろしいでしょう。

活動予算を作成するうえで大切なことは、決して次期繰越正味財産額がマイナスにならないことです。マイナスになるようでしたら、事業計画の内容を見直すなり、寄付を増やすなり、会員数を増やして会費の総額を増やすなどの措置が必要になります。

⑦ 設立総会を開催し、以下の事項を決議する

  • 議長及び署名人の選任
  • 法人設立の意思の決定
  • 定款案についての審議・議決
  • 役員及び代表者の選任
  • 事業計画案及び活動予算案の審議・決定
  • 特定非営利活動法人促進法第2条第2項第二号及び同法第12条第1項第三号の規定に該当していることを全員で確認

以上の総会議事録をみてお分かりの通り、設立総会は、定款案、事業計画案、活動予算案、役員就任の本人の承諾、10名以上の社員が集まったことが確定した段階で実施する必要があります。

⑧ 認証申請に必要な書類の作成

設立総会で決議される前にほぼ完成といえるレベルの以下の書面を作成しておく必要があり、総会では、全会一致で承認されるように事前に内容を校正しておくことをお勧めします。

書類名
設立認証申請書
  定款  
役員名簿
各役員の就任承諾及び誓約書 
社員のうち10名以上の者の名簿 
確認書
設立趣旨書
設立総会議事録
事業計画書(設立当初の事業年度及び翌事業年度) 
10活動予算書(設立当初の事業年度及び翌事業年度)

その他、各役員の住所又は居所を証する書面として「住民票」を添付する必要がありますので、就任承諾書及び誓約書を取得するときに併せて取得することをお勧めします。そうすることによって、住所に間違いがないか、確認することもできます。尚、マイナンバーが掲載された住民票を添付される方が時々いらっしゃいますが、担当機関ではマイナンバー付の住民票は受け付けませんので、提出前の事前確認の時に併せて確認してもらった方が確実でしょう。

⑨ 申請書の提出

原則として、主たる事務所の所在地を所管する担当機関(ガイドブックに記載)に提出しますので、予め担当機関の担当者のご都合を伺って、双方都合の良い日に予約を入れておく必要があります。

当日は、代表者本人及び支援する行政書士と同伴で提出することをお勧めします。

また、提出する書面は、予め提出書面をメール等で担当者に送付するか、印刷して持参するなどして、提出後に補正が発生することがないようにしておく必要があります。

通常、申請を行うと、内容に特に問題なければ担当機関に受理されたのち、2週間縦覧され、最終審査が行われます。

審査に合格すれば、「認証決定通知」が代表者宛に送付されます。認定決定通知書とは、認証通知書と定款が袋綴じされ一体となった書面であり、法務局に登記するときに、この袋綴じされた通知書のコピーを添付する必要があります。

2 認証決定通知から設立登記完了届まで

① 公表・縦覧・審査

設立申請書類を主たる事務所を管轄する担当機関に提出し、受理されると、埼玉県では「埼玉県NPO情報ステーション・コバトンびん」に以下の事項が公表されます。

  • 申請のあった旨
  • 申請のあった年月日
  • 特定非営利活動法人の名称
  • 代表者の氏名
  • 主たる事務所の所在地
  • 定款に記載された目的

また、受理日から2週間(ガイドブックには1カ月と記載されているものがあるかもしれませんが、2021年6月より2週間に短縮されました)、一般市県民向けに以下の内容が縦覧されます。一般市県民は、その内容を確認して、担当機関に意見を述べることが可能です。

  • 定款
  • 役員名簿
  • 設立趣旨書
  • 設立の初年度及び翌年度の事業計画書
  • 設立の初年度及び翌年度の活動予算書

市県民から意見の申出があれば、担当機関は、事実の確認を行う場合があります。

② 認証/不認証の決定・通知

埼玉県では、縦覧期間終了後2カ月以内に認証または不認証の決定を行い、その旨を書面で通知します。また、不認証の場合には、その理由が付されます。

この通知の期間は、2カ月以内となっておりますが、特に問題がなければ、約半月程度で通知が届きます。担当機関に届け出るときに、危惧される点などがないかどうか確認しておくとその後の設立登記等の日程が立てやすくなります。

③ 法務局で設立登記申請

法人設立登記申請は、認証通知書を到達してから2週間以内に、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局(登記所)で、設立登記をしなければなりません。

登記に必要な書類は後述しますが、認証通知(定款付)原本は一部しかありませんし、事務所に保管しておく必要がありますので、提示するだけで、代わりにその写しを登記所に提出します。ここが一般法人と違うところです。

尚、認証があった日から6カ月を経過しても設立の登記をしないときは、認証を取り消されることがあります。

④ 法務局で必要書類等の取得

登記申請を行ってから登記が完了するまでの日数は、登記所によって異なりますが、少なくとも2週間はかかると考えておいた方が無難です。

登記が完了したら、最寄りの法務局(どこの法務局でも構いません)で、法人の印鑑登録カードの申請を行い、印鑑登録証明書1部、履歴事項全部証明書2部又は3部取得します。

履歴事項全部証明書は、都道府県の担当機関に正本を1部提出する必要がありますし、銀行の口座開設などでも必要になりますので、都合2部は最低必要です。通常、金融機関は、証明書のコピーを取った後、正本を本人に還付しますので、還付された正本は、法人の事務所で保管して下さい。

⑤ 設立登記完了届出書提出

登記が完了したら、速やかに登記完了届出を行ってください。この時に登記完了届出書に、登記事項証明書正本一部及び写し2部、財産目録3部を添付する必要があります。

⑥ 税務関係等各種届出

設立届出が完了したら、速やかに都道府県税事務所及び市町村役場にて事業所開設の届け出を行います。届出書は、所定のフォーマットがありますので、ホームページからダウンロードしてください。都道府県税事務所では、減免申請についての説明がありますので、代表者または経理担当者のどちらかお一人は、立ち会った方がいいでしょう。

⑦ 閲覧又は謄写

法人から提出された書類のうち、所轄庁による公開が定められているものは、担当窓口で閲覧または謄写できます。

また、都道府県の専用のホームページには、NPO法人の商号、代表者の氏名、連絡先が公開されますので、連絡先の電話番号が個人の自宅の場合は、非公開にするか、法人の電話設置後に担当機関に連絡してください。

II 設立認証の手続

1 設立申請に必要な書類一覧

設立認証に必要な書類及び部数は、以下のとおりです。

書類名提出部数
設立認証申請書
  定款  
役員名簿
各役員の就任承諾及び誓約書の謄本(コピー) 各1
各役員の住民票(マイナンバーの記載のないもの)各1
社員のうち10名以上の者の名簿 
確認書
設立趣旨書
設立総会議事録の謄本(コピー)
10事業計画書(設立当初の事業年度及び翌事業年度) 
11活動予算書(設立当初の事業年度及び翌事業年度)

この中で特に時間がかかる書類は、定款であり、事業計画書並びに活動予算書になると思われます。これらの書類は、一度都道府県知事に提出してしまうと簡単に変更することはできなくなりますので、焦らずじっくり検討してください。

尚、提出先は、主たる事務所の所在地によって異なりますので、ガイドブックの「特定非営利活動法人(NPO法人)設立相談窓口」のページで確認してください。

2 設立認証申請書

各都道府県で指定した様式を所定のホームページからダウンロードして使用します。

埼玉県では、様式第1号(規則第1条関係)の書式を使用します。

注意事項

  • 用紙の大きさは、日本産業規格A列4番とすること。
  • 設立認証申請書の2の代表者の氏名には、ふりがなを付すこと。
  • 設立認証申請書の3の事務所の所在地は、定款では最小行政区画の表記とした場合でも、略さず郵便番号、町名及び番地まで記載すること。
  • 定款に記載された目的は、定款に記載された通りに記載すること。
  • 申請人が個人の場合、記載する住所又は居所は、申請人の自宅になりますので、住民票に記載された通りに正確に記載し、認印を押印すること。例えば「三ケ島」を「三ヶ島」と記載する等の間違いに注意すること。
  • 申請人が法人の場合は、主たる事務所の所在地並びに名称、代表者の氏名を記載し、代表印を押印すること。
  • 日付は、申請日の日付を記載すること。

3 定 款

定款は、NPO法人を運営するために必要な基本的な事項やルールを定めたものであり、非常に重要な書面となります。法人は、法令の規則に従い、定款に記載された内容の範囲内で権利を有し、義務を負います。

定款には、法の定める【絶対的記載事項】、定款に記載することにより法が定める要件を変更することができる【相対的記載事項】及び法人の運営にとって必要な規定を法令に違反しない限り自由に記載することができる【任意的記載事項】があります。

詳細は、ガイドブックを参照してください。

定款をゼロから作成するのは大変ですから、各都道府県で用意しているひな形となるべき定款をもとに、各NPO法人用に独自で修正して使うようにしてください。以下は、埼玉県で用意している定款の記載例になります。

  

第1章の総則は、法人の商号、事務所の所在地、法人の目的活動の種類、事業の種類を記載する箇所となりますので、全ての法人固有のものとなり、最も時間を要するところです。従って、しっかり設立役員と協議し、担当機関に都度確認しながら進めるようにしてください。

また、予算や人材等と密接に絡みますので、事業計画書並びに活動予算書の作成と並行して作業を行う必要があるでしょう。

最後の附則は、設立当初の役員名、役員の任期、事業年度、入会金や会費を記載する箇所となりますので、ここも各NPO法人固有のものとなります。

尚、役員や一般会員を公募するうえで、会費や入会金をいくらにするかということは非常に重要なことですので、決定する前に、実際に役員に就任される方や名簿に記載する方に事前に意見を聞いておくことをお勧めします。安すぎては運営に差し支えますし、高すぎては、会員が集まりませんからね。

4 役員名簿

法人の理事及び監事の名簿になります。

名簿には、役員報酬の有無を記載する欄がありますので、役員報酬を受けている方がいれば忘れずに記載するようにしてください。尚、役員報酬は、役員がスタッフ又は職員として働いた労働の対価として受け取る給与ではありません。

役員名簿は、下記の記載例をダウンロードして、作成してださい。

名簿における「役名」には、団体内部の役職名ではなく、法律上の「理事」又は「監事」のどちらかを記載するようにしてください。理事長や代表理事は、法律上の役職ではありません。また、役員の人数は、少なくとも理事3人以上、監事1人以上でなければいけませんが、定款で定めた役員数とあっているか確認してください。

更に、定款の附則に記載した設立当初の役員と合っているか、確認してください。

住所又は居所については、住民票通りに一字一句間違いないよう記載する必要がありますので、予め住民票を取得しておくことをお勧めします。また、役員の氏名にフリガナが必要ですので、各役員に間違いないか確認を取ることを忘れないようにしてください。

5 就任承諾及び誓約書

各役員が記入し、申請団体(法人)に提出します。原本は、法人で保管し、コピーを担当機関に提出します。

役員名簿は、下記のフォームをダウンロードして、作成してください。

気をつけなくてはいけないのは、記入した日付です。設立総会の日以降で、設立日までの日付を記載する必要があります(設立総会に参加したとき、ついでに就任承諾書に署名した場合は、設立総会の日付を記載してください。また、申請直前に住所等間違いに気が付いて訂正が必要になる場合もよくあることです。その時は、申請日の日付を記載してください)。

その他気をつけることは、住民票通りに一字一句間違えないように記載することです。住民票を事前に取得しておいて、予め住所を記載した書類を各役員に提示し、各役員は署名と押印(認印)をすれば済むようにしておけば、間違いや書き損じのリスクを減らすことができます。ガイドブックには記名押印とありますが、記名では本人が本当に承諾したかどうか、問題ならないとも限りませんので、役員本人の署名を貰うようにした方がいいでしょう。

本文には、理事又は監事のどちらかを選択するようになっておりますので、どちらかを削除するようにしてください。

6 社員のうち10人以上の者の名簿

社員10人以上を有していることが、法人認証要件ですので、非常に重要な書類になります。

名簿は、下記のフォームをダウンロードして、作成してください。

社員とは、定款で定める会員の種類のうち、社員に当たる者で、総会で議決権を持つ会員を指します。名簿には、社員10人以上の氏名、住所又は居所を記載する必要があります。但し、役員名簿のように氏名にフリガナは不要ですし、住民票も不要です。また、個人だけでなく他の団体や法人も社員になることができます。この場合は、団体や法人を代表する人の名前と住所又は所在地を記載します。

尚、法人の役員(理事、監事)も社員になることができます。

7 確認書

特定非営利活動法人法第2条第2項第2号及び第12号第1項第3号に該当することを設立総会にて確認した旨を記す書類になります。

確認書は、下記のフォームをダウンロードして、作成してください。

ここでも、気をつけることは、就任承諾書同様、日付と住所の記載です。設立総会の日以降で、かつ申請日までの日付を記載し、住民票の通りの住所を記載してください。

氏名は、記名又は署名となっておりますので、署名に拘る必要はなく、どちらでもかまいません。

8 設立趣旨書

法人の目的や経緯、法人を設立しようとする理由とその活動、事業の必要性などについて簡潔にわかりやすく記載します。

設立趣旨書は、下記のフォームをダウンロードして、作成してください。

記載する項目は、主旨と経緯に分かれて記載しますが、主旨では、例えば、現在の社会的・経済的な情勢における当法人の必要性や存在意義、問題点や課題、取組み・解決策となる活動内容、公益性などを記載します。

経緯には、何故任意団体ではなく、法人である必要があるのか、だれもが納得できる内容を記載します。

例えば、事業の継続性や規模を考えたとき、任意団体よりも法人の方が、一般的に信頼度が高く、長期的な契約を締結しやすいというメリットがありますので、事業も拡大しやすいという利点があります。

また、不動産や固定資産の購入、保険や事業の契約を締結する場合、法人であれば法人が主体となることができますが、任意団体では、あくまで個人が主体ですので、代表者が交代すれば、契約の主体も変わります。従って、再度契約を締結したり、名義変更が必要となる等面倒な手間も生じますので、信頼性と継続性という観点から法人化する必要があるというようなことを記載します。

9 設立総会議事録

議事録には、開催日時、場所、出席者数、審議事項、議事の経過及び議決の結果、議長及び議事録署名人2名の署名及び署名した日付を記載します。

議事録は、下記の記載例を参考にして作成してください。

ガイドブックには、記名(又は署名)押印が必要となっておりますが、ここでは、署名押印(認印)が一般的です。

注意事項としては、審議事項に役員及び代表者の選任とありますので、定款に記載した理事及び監事全員の名前と総会議事録に記載した名前が完全に一致することを確認してください。

出席者数は、できれば社員全員の人数を記載し、参加できない場合は、書面による参加という形態をとることをお勧めします。書面による参加とは、参加できない社員に予め審議事項を送付し、書面によって事前にその意思表示を行っている場合を指します。

10 事業計画書

設立初年度と翌年度の事業計画書を、それぞれ別葉にて作成してください。

形式は決められておりませんが、以下の書式を参考にして作成してください。

インターネットで公開される書類となりますので、個人名や特定の住所、印影等が記載されていないことを確認して提出してください。

事業計画書に記載する事業名は、定款に記載された事業名をそのまま記載するようにしてください。長すぎるからといって短縮したりしないように気をつけてください。

また、初年度の事業期間が2,3ヶ月と非常に短い場合であっても、定款に記載された事業は、すべて網羅する必要があります。その事業に関する準備として打合せだけでもかまいません。

逆に、初年度一切何もできない事業があれば、定款から外しておくべきです。設立から数年後に事業としてやる準備ができた段階で、定款を変更して、事業を追加する承認を得て、登記変更を行ってください。しかしながら、このプロセスは時間と労力がかなりかかりますので、できるだけ定款変更がないように計画書を作成することをお勧めします。

定款にその他の事業が含まれている場合、特定非営利活動に係る事業とは分けて記載するようにしてください。

11 活動予算書

事業計画書同様、設立初年度と翌年度の活動予算書を作成する必要があります。

活動予算書の作成においては、特定非営利活動に係る事業のみの場合とその他の事業(営利事業)が含まれている場合では、フォームが異なります。

また、活動予算書は、事業計画書に即したものとなりますので、事業計画と予算にずれや矛盾がないように注意してください。

活動予算書も事業計画書同様、決められたフォームがあるわけではないですが、NPO法第27条の「正規の簿記」の原則に即して記載してください。以下の書式を参考にして、活動予算書を作成して頂いても構いません。

記載するうえで気をつけていただきたいことは、最後に記載する「次期繰越正味財産額」が赤字になっていないことです。事業計画段階で赤字になることが分かっている予算では承認を得ることはできません。必ず単年度黒字決算になるように計画してください。

それから、活動予算書もインターネットで公開されますので、事業計画書同様、個人名や住所、印影等は記載しないように気をつけてください。

NPO法人であっても、設立には費用はかかります。行政書士などに依頼して認証手続きを行う場合の報酬その他交通費、日当、公租公課(証明書等の取得費用)、代表印等が必要になりますので、初年度の活動予算書の「経常費用」における「その他費用」に創業費若しくは開業費として計上することが可能です。

III 設立の登記手続及び完了届出

認証決定通知が都道府県知事から代表者に届いたら2週間以内に法務局にて登記申請の手続きを行う必要があります。

認証手続きを完了しただけでは法人として活動できませんので、認証申請書を提出し受領されてから通知が届くまでの期間(2週間程度)に、登記手続きの準備を行うことをお勧めします。

具体的な登記手続きについては、一般社団法人や株式会社の設立とそれほど大きく違うわけではありません。大きく違うところといえば、NPO法人には、登録免許税が課税されないというところです。また、申請には認証通知書のコピーを提出し、原本還付の手続きを行うことが営利法人や一般法人の手続きと異なるところです。

1 登記事項

特定非営利活動法人における登記事項は以下のとおりです。

登 記 事 項   備   考
1名称当該法人の商号となります。
2主たる事務所事務所の所在地となり、地番まで記載します。
3目的及び事業      定款に記載した特定非営利活動法人の目的、活動種類、特定非営利活動に係る事業、その他の事業等がある場合にはその事業の種類を記載。
4役員に関する事項   定款で代表権を制限した場合、代表権有する理事のみ
登記します。

登記事項に関する変更は社員総会の決議事項となり、都道府県知事の認証を経た後、登記変更手続きが必要となり、多大な時間と労力がかかりますので、定款変更は必要最低限にとどめておくことをお勧めします。

2 設立登記申請に必要な書類等

必要書類等備   考
2設立登記申請書
2定款のコピー定款と一体となった法人設立認証書の原本を持参し、登記所に「原本還付」の手続きを取ってください。(定款と法人設立認証書のコピーは、原本同様、一緒にして袋綴を行い、法人代表印で契印してください)
3法人設立認証書
のコピー
定款と一体となった法人設立認証書の原本を持参し、登記所に「原本還付」の手続きを取ってください。(定款と法人設立認証書のコピーは、原本同様、一緒にして袋綴を行い、法人代表印で契印してください)
4代表権を有する者の
資格を証する書面                     
理事及び代表理事に就任することの就任承諾書
5別紙登記事項をまとめたテキスト(A4用紙又は電子データ)
6印鑑届書法人代表印の印鑑登録を行う書面(代表者個人の実印と法人代表印の印影が必要)
7添付書類代表者個人の印鑑登録証明書

設立登記申請書には、法人代表印の押印が必要ですので、設立認証申請書が受理されたらすぐに、法人代表印の作成手続きを行ってください。できれば、銀行印も一緒に作成することをお勧めします。また、登記申請と同時に、法人代表印の登録も必要ですので、印鑑届書を忘れずに提出してください。

設立登記申請書及び別紙、理事・代表理事の就任承諾書、定款の末尾に追加すべき文言記載例を以下にアップしておきますので、参考にしてください。

印鑑届書につきましては、以下の届出書の記載例をアップしておきますので、参考にしてください。

3 設立登記完了手続

NPO法人は、設立の認証後、法務局に登記を行うことで正式に成立したことになりますが、それですべての作業が終わったわけではありません。

NPO法人設立登記が完了したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事へ届けなくてはなりません。

そこで、設立登記完了後、以下のとおり必要な書類を入手し、届け出を行う必要があります。

① 設立後に必要な書類一覧

  書類名備考提出部数
1設立完了届出書様式3号 
2登記事項証明書  3部(正本1部、写し2部)3
3設立当初の財産目録※ 3

 ※ 設立当初の財産目録は、まだ法人として活動を開始する前の段階ですので、収支はゼロとなっているのが一般的です。会員の会費や入会金の受領、寄付金の受領は、設立時点では、法人として受領は行っていないはずです。

また、設立のための経費については、設立当初の財産目録には記載しないで、初年度決算時に、創立費若しくは開業費勘定にて精算するようにしてください。

②登記完了届出

法人登記完了後、設立登記完了届出書を都道府県知事(担当機関)へ提出します。

以下に様式第3号の書式をアップしていますので、ダウンロードしてお使いください。

尚、この書式は、設立と合併時に使用するものですので、書式の中に選択肢は、「設立」を選択し、特定非営利活動促進法の規定は、「第13条第2項」を選択して、担当機関に提出してください。

提出日は、書類を提出する日を記載し、代表者名の後には、法人代表印を押印してください(印鑑登録証明書は不要です)。

IV税務に関する手続き

最後に開業届出書を県税事務所と市役所市民税課に提出します。

営利法人や非営利法人でも一般法人の場合には、更に税務署への開業届出が別途必要になりますが、NPO法人の場合は、その他の事業を行う場合で、法人税法上の収益事業を行う場合に「収益事業開始届出書」を提出する必要があります。また、従業員へ給与を支払うようになった場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出する必要があります。

以下、県税事務所、市役所に提出する書類について説明します。

1 県税事務所

法人設立登記完了届出書を事業開始又は事業所設置日から1ヶ月以内に、県税事務所に提出する必要があります。忘れないために、担当機関に登記完了届出書を提出と同時に行うことをお勧めします。

① 法人の設立報告に必要な書類一覧

提出書類  必要部数
1法人の設立等報告書 1
2定款の写し1
3登記事項証明書の写し1

                                                            

② 法人の設立等報告書

埼玉県版の法人の設立等報告書の書式を以下にアップしておきますので、ダウンロードしてお使いください。

ここで、注意することは以下のとおりです。

  • 「代表者の氏名」の印影は、法人代表を押印します。個人ではありませんので間違えないようにしてください。また、「代表者の住所」は、代表者個人の住民票の住所になります。
  • 「資本金または出資金の額」及び「資本金等の額又は連結個別資本金等の額」は、0円です。
  • 「決算期」は、定款に記載した決算期を記載してください。
  • 「事業の種類」は、複数ある場合は、主な事業を記載してください。全部の事業を記載する必要はありません。
  • 「連結納税の承認」は、無と記載してください。

減免申請に関しては、設立等報告書の提出時に窓口の担当者が説明してくださいます。

通常は、官庁の年度末である3月までに、県税事務所から申請に関する書類が届きますので、届いたら、期限までに必要書類を窓口に提出してください。

2 市区町村役場

市区町村役所への届出書の書類は、役所ごとに書式が異なりますので、事前に確認が必要です。ここでは、埼玉県所沢市を例にとって説明します。

市区町村役場への法人の設立届出に関する書類並びに注意事項は以下のとおりです。

① 法人の設立報告に必要な書類一覧

提出書類必要部数
1法人等の異動届出書1
2定款の写し1
3登記事項証明書の写し1

     提出先につきましても、各市区町村役場にご確認ください。

② 法人の設立等報告書

所沢市では、以下の法人の異動等届出書を提出しますので、ここでは、それについて留意事項を記載します。

  • 「代表者氏名」の印影は、法人代表を印を押印してください。
  • 「設立登記年月日」が、登記事項証明書の成立日を記載します。
  • 「事業年度」は、定款に記載した年月日を記載します。
  • 「資本金の額」及び「資本金等の額」は、どちらも0円です。
  • 「事業種目」は、代表的な事業を1つ記載してください。
  • 「法人税の申告期限の延長の処分(承認)の有無」は、無にチェックしてください。
  • 「事業所等の設置状況」は、市内だけにある場合は、「所沢市内だけにあり」にチェックしてください。
  • 「本店所在地の事業所等の有無」は、有のチェックしてください。
  • 「法人区分」は、連結法事でなければ、単体法人にチェックしてください。

市区町村役場における減免申請に関しては、申請後、しばらくしてから、市民税課等から「法人税法上の収益事業を行わない特定非営利法人かどうか」確認の電話がはいります。

電話がつながらなかった場合には、書面が届きますので、届き次第、役所の担当者にご連絡してください。