法定後見

法定後見制度とは

法定後見制度とは、認知症や病気、障害等により、判断能力が衰えたり、ほとんど無くなってしまった人に対し、入院や介護施設の入居手続きを行ったり、介護認定の申請その他役所関係の手続といった身上監護及び預貯金や有価証券等の財産管理を健常者が本人に代わって行う支援制度です。従って、体に障害があっても、判断能力が十分ある場合には利用できませんので、ご注意ください。

後見等開始の申立

法定後見制度を使用する場合、本人、配偶者、4親等以内の親族、市区村長の家庭裁判所への申請が必要です。

申請が行われたら、家庭裁判所は、以下の様に関係者へのヒアリングを実施し、成年後見人等の選任並びに成年後見等の開始の審判を行います。

  1. 本人に対する聞き取り調査
  2. 医師による本人の判断能力の鑑定
  3. 申立人に対する申立の経緯や親族の意向
  4. 申立人に対する本人の判断能力や財産状況の確認
  5. 後見人等候補者に対する適格性調査等

成年後見等というのは、以下に説明する通り、判断能力の程度によって、補助、保佐、成年後見の3つの類型があり、本人は、この3類型のどれかに該当します。家庭裁判所の担当者と本人との面談でどの類型に該当するか判断できない場合は、医師による鑑定が必要となります。

申立から成年後見開始まで、2か月から3ケ月の期間を要することを前提に、申請するようにしてください。例えば、本人が成年後見相当であれば、その期間は、親族の誰かが本人の身上監護や財産管理を行う必要があります。それができない場合は、別途財産管理を専門に行う担当者の選任を家庭裁判所に申請することが可能です。

法定後見の類型

補 助 保 佐 成年後見
判断能力の程度 不十分 著しく不十分 全くない
開始決定について本人の同意 必要 不要 不要
成年後見人等の権限 (必ず与えられる権限) ・特定の事項(*1)についての同意権と取消権(日常生活に関する行為を除く) 財産管理についての全般的な代理権、取消権(日常生活に関する行為を除く)
成年後見人等の権限 (申立てにより与えられる権限) ・特定の事項(*1)の一部についての同意権と取消権日常生活に生活にする行為を除く)
・特定の法律行為の代理権
・特定の事項以外の同意権と取消権
・特定の法律行為の代理権

(*1)民法13条の行為:借金、相続の承認や放棄、新築や増築など

法定後見のメリット・デメリット

メリット

  • 取消権や同意権による被後見人等の財産の保全
  • 判断力に応じた後見事務が付与される
  • 生活保護受給者でも申立可能(助成制度あり)

デメリット

  • 後見人等への報酬の支払いが発生する(3万円~5万円/月)
  • 成年後見申立から後見開始までに2~3カ月の空白期間
  • 申立人が指名した後見人等候補者が必ずしも後見人等に選任されるとは限らない
    • 被後見人等の意思が尊重されない可能性
    • 同居の家族と後見人等がうまくいくとは限らない
  • 被後見人等の財産に対する相続税対策や資産運用ができない
  • 被後見人と同居している場合、家族に後見事務の手間(領収書の提示等)が発生