民事信託

民事信託とは?

民事信託って何? どんな時に使えるの?

まず、民事信託とは、「遺言相続に代わるもの」ですよ、と言われても、「え~?」という答えが返ってくるだけです。民事信託自体、初めて聴いたという人や、聞いたことはあるけど、どういう制度か全然分からないという人が大半ですから、その先の言葉がでてこないのも納得がいきます。

また、「成年後見を補完する仕組みですよ」と言う人もいます。益々、分からなくなってきましたね?!

成年後見自体、法律が2000年に施行されたのですが、なかなか普及していないのが実情です。赤の他人に財産の管理を頼んでも大丈夫かという心配もあるでしょうし、介護と同じように親の面倒は家族がみるものという古い固定観念をお持ちの方や世間の目を気にする人が多いからなのかもしれません。

でも、認知症になってしまったら、財産の管理は誰かに頼まなくてはいけないですよね。違いますか?

近くに家族がいない場合や家族に面倒をかけたくないと常日頃から思っている人には、成年後見は、最適な対応策の一つだと思いますが・・・

確かに、成年後見は、本人の財産をしっかり管理し、本人と家族の生活を護るいう意味では、優れた制度ではありますが、しかしながら、「本人の財産は、本人のためにしか使えない」という大きな制限があります。

  • 家族の誰かが生活に困っている場合、本人が家族のために救済を希望しても、原則その管理する本人の財産は家族のためには使えません。
  • 本人のためとはいえ、株式や投資信託等の金融商品を購入して運用したり、新たに賃貸用の建物を建築したり、不動産業を経営するためには使えません。

一方、近くに親族がいて、財産の管理をしっかりやり、残された配偶者等の面倒もみれる場合は、民事信託という選択肢もありますし、成年後見制度と併用することも可能です。つまり、成年後見と民事信託は補完関係にあるとも言えます。

では、民事信託とはどういう制度なのでしょうか?

具体的には、以下のように、財産を持っているご本人を「委託者」といい、その財産の管理を任された人のことを「受託者」、受託者から定期的に一定の財産の給付を受ける人のことを「受益者」と言います。

 

民事信託とは、ご本人の財産を信頼できる人(例えば、自分の子供)に預けて管理してもらったり、賃貸アパートなどの経営を代わりにやってもらったりして(これを「信託財産」という)、いざ本人が認知症になった場合には、生活費を信託財産から給付してもらうことで、亡くなるまで何不自由なく暮らせるようにした仕組みです。

また、本人だけでなく、その配偶者についても同様に亡くなるまで生活に困らないように金銭的な面倒をみることができます。

民事信託は、以下に例示するように、他にも様々な活用方法があります。

  • 信託の目的によっては、本人の財産を家族のために活用することができます。
  • 賃貸用のマンション・アパートを購入する等して事業を拡大することができます。
  • 金融商品を購入して資産運用も可能です。但し、リスクの高い商品には手を出すべきではありません。
  • 孫の教育を支援するために利用することも可能です。

民事信託と遺言の違い

遺言という制度は、以下のような特徴があります。

  • 遺言は、遺言の死亡時店に限定した制度です。
  • 民事信託は、委託者死亡時に資産を承継させることもでき、次の世代に連鎖させる後継ぎ遺贈型の財産承継も可能です。
  • 信託財産は、本人の遺産からも除かれるので、遺産分割の対象にもなりません。

いかがですか?

民事信託は、遺言にとって代わることができるものであり、相続、事業承継等を行う上で非常に強力なツールであることが少しお分かりいただけましたか?