契約関係

契約書作成サービス

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契約書はビジネスの必須アイテム

契約とは、一言でいうと「約束」であり、本来文章になっていなくとも、口約束だけで法律的には有効です。
しかしながら、現在の複雑なビジネス環境においては、口約束だけで済むような簡単な契約は皆無と言っていいでしょう。

また、当事者だけでなく、複数の人間がビジネスに関与しますし、担当者の交代も発生しますので、言った言わないの原始的な問題も当然起こります。そこで、どんな些細なビジネスであれ、契約書にしておく必要があります。

建設業など一部の業界では、いまだに電話一本、注文書もあるのかないのかはっきりしないようなビジネスのやり方をしているところもあります。
それで問題が発生しなければいいいのですが、ちょっとした認識の違いが思わぬミスにつながり、信頼関係に亀裂が生じるとも限りません。

企業の中には、書籍やネットで契約書の雛形を探してきて、それを修正して使うところもかなりあるようですが、それは、契約にかなり明るい人が社内にいる場合に限った話です。

しばしば、ちょっと契約書をチェックして欲しいという依頼がありますが、大抵、重要な部分がぬけていたり、重複箇所が随所にみられ、とてもじゃないですが契約書といえるレベルに達していないものが数多く見受けられます。

契約書は、1か所変更を加えただけで、関連する箇所すべてを同時に修正する必要があります。雛形とはいえ、誰かわからない他人が作成したものですから、内容をしっかり読み取って、理解する必要がありますが、慣れない人にとっては、決して簡単なことではないので、修正して使うのであれば、専門家に任せた方がいいでしょう。

しかしながら、専門家といっても、法律はよく知っているが、ビジネスの経験に乏しい場合気を付けなくてはいけません。

依頼者がビジネスマンの場合、ビジネスの一般的なルール、言葉、社内の組織、対外的な関係など当然知っているもの、通じているものと思って話をするケースが往々にしてあります。ところが、ビジネスの経験に乏しい人は、理解できていないのに、理解したつもりになって契約書を作成してしまうケースがあります。

出来上がった契約書は、依頼者の業務を反映したものではないため、曖昧な部分や抜けている箇所が何か所もみられ、そのまま契約を締結してしまうと、後で大きな問題に発展してしまい、信頼関係に傷が付くばかりでなく、最悪訴訟になりかねません。

これは、大企業と中小企業の間の契約でもよく見られることですが、大会社が普段使っている契約書をベースに契約をしようとしてもかなり無理があります。

大企業の基本的な契約書に関するルールを踏襲しつつ、独自に契約書を作成した方が、Win-Winの関係を維持しやすいのではないでしょうか。

お互いの信頼関係を崩したくなければ、相手が大企業であればなおさら、相手に任せてしまうのではなく、自社で作成を引き受けて、業務に沿った最適な契約書を使って契約することをお勧めします。

それをお手伝いするのが、当事務所の重要な役目です。

過去の取扱実績

これまで取り扱ってきた主な契約書は以下の通りです。

  • 英文・和文業務委託基本契約
  • 英文・和文販売代理店契約
  • 英文・和文リセラー契約
  • 英文・和文人材紹介委託契約
  • 英文・和文秘密保持契約
  • 英文・和文株式譲渡契約
  • 英文・和文株式投資契約
  • 人材採用業務支援基本契約(コーチング契約)
  • テスト実施同意書
  • 個人情報保護契約
  • 事業譲渡契約(法人から法人へ)
  • 事業譲渡契約(個人事業主から個人事業主へ)
  • 販売業務委託契約
  • マーケティング業務委託契約
  • 広報誌制作業務委託契約
  • 著作物複製許諾契約
  • ソフトウェア委託開発基本契約及び個別契約
  • ソフトウェア及びハードウェア保守契約
  • ソフトウェア使用契約(ライセンス契約)
  • ホームページ作成及び管理契約
  • 不動産賃貸契約
  • 不動産転貸借契約
  • マスターリース契約(サブリース契約)
  • 不動産賃貸管理契約
  • 不動産設備管理契約
  • 金銭消費貸借契約
  • 金銭預託契約
  • 訪問販売契約
  • 雇用契約
  • 顧問契約

※尚、上記契約書作成業務の中には、英文・和文両方の契約書も一部含まれています。

当事務所に依頼するメリット

1.作成が迅速かつ丁寧

一般に、法律についてあまりご存知ないという依頼者がほとんどだと思われますので、面談の中で、法律的に考慮すべき点を逐一確認しながら、業務の流れや相手方との関係を理解するように努めています。
また、面談の中で話が出てこなかった事項についても、これまでのビジネス経験から、常識的に考えて、追加したほうがよいと判断した場合には、追加するようにしています。

従って、最初に作成した契約書案をほぼそのまま相手に送付することも可能です。

このように、当事務所は、短納期でクオリティの高い契約書を提供することを心がけています。

2.知的財産権の保護

業務委託にしろ、共同開発にしろ、成果物には所有権のみならず、特許などの産業財産権や著作権等が発生するケースが非常に多く見受けられます。特に著作権に関する取り決めはしっかりやっておかないと、契約が終わった後に著作権違反で訴えられることになりかねません。また、クライアントの所有する貴重な知的財産を契約書でしっかり守る必要もあります。

当事務所は、クライアントに不利にならないように、常に知的財産権を含めた契約書を作成しています。

3.優れた費用対効果

契約書は、オーダーメイドが基本です。それを迅速かつ丁寧に作成するには、それなりに費用は嵩むものですが、中小零細企業でも、頻繁にご利用いただけるように、リーズナブルな価格で提供しています。

4.依頼者に理解できる契約書を作成

契約書というと、難解なしろもので、読む気も起らないという人も多いと思いますが、当事務所が作成する契約書に関しましては、ご依頼者様が理解できないということは決してございません。
契約書の内容を業務の流れに沿ったものにしておりますので、誰にでも理解しやすく、漏れも極力少なくなるように配慮していますので、契約当事者同士でも十分にお互いの意見を主張しあうことが可能です。

5.万全のフォローアップ

契約には修正がつきものです。相手が大手であればあるほど、その回数は多くなります。
当事務所は、特に修正回数に制限を設けてはおりませんので、契約の基本的な内容が変わらない限り、何度でも修正にお付き合いいたします。
また、契約時期が、時と場合によって大幅にずれることがあります。その場合でも、当事務所は、しっかりサポートいたします。

契約書に関する主な業務

  • 法人及び個人向け契約書の新規作成
  • 法人及び個人向け既存契約書のチェック並びに修正作業
  • 契約書作成に関するご相談並びにアドバイス
  • 不正競争防止法に関する営業秘密などの社内規定の作成やアドバイス

契約に関するサービスの概要

契約の中には、ご存知の通り「企業 対 企業」(別称 B to B)又は、「企業 対 個人消費者」(別称 B to C)、「個人 対 個人」(別称 C to C)といった1対1の契約もあれば、保険やソフトウェアライセンス約款のような1対Nを基本とした契約形態もあります。

行政書士たじり法務事務所は、B to B 若しくは B to C における1対1または1対Nの契約形態における契約書の作成及びご相談に応じています。

契約書は作成側が有利、不利?

B to B の場合においては、契約当事者のどちらが契約書を準備するのか決まったルールはございませんが、相手方が一部上場企業など大手企業の場合には、相手方の契約書をベースに契約書を作成するケースが多いように見受けられます。

この場合、もう一方の当事者は、ゼロから契約書を作成する時間とコストを節約できるというメリットがあるように思いがちですが、ここに大きな落とし穴があるのです。

契約書は、確かに、権利・義務が当事者間でバランスを欠いた場合、契約が成立しませんし、力関係によって明らかに強引に締結させられたことが明白なものは、公序良俗違反で無効になる可能性もあります。

しかしながら、全く公平なものを作成することは不可能ですので、そこは契約書を作成する方がどちらかというと有利な契約に持ち込める可能性が高くなります。

作成する側が、自分の方に不利になるような契約書を作成しますか? まず考えられないでしょう。

更に、作成する方が大手の場合、専門家が契約書を作成していると考えて差し支えないでしょう。それに対して、もう一方の側が中小企業やベンチャー企業であれば、社内に法律に精通した人材は多くないでしょうし、通常あまり深く考えないで署名してしまうケースが多いと考えられるからです。

また、契約書のドラフトをチェックするにしても、相手方が作成した条文を相手方にも納得してもらうように校正するのは非常に骨の折れる作業です。

結論から言うと、以下のような心構えが必要ではないでしょうか。

  • 可能であれば、契約書を作成する方を選択すること
  • 相手方が契約書を作成する場合、もう一方には、不利な契約になる可能性が高いと思って校正に当たること

特に、貴社がサービスを提供する側であれば、尚更、契約書を作成する側に立つことをお勧めします。また、当事務所が契約書作成及び校正のお手伝いをさせて頂きます。

契約書の作成

以下は、ビジネスでよく利用される主要な契約の一部です。現在行われている取引の参考にしてください。更に、取引を継続的なものにするために、ぜひ活用してください。

基本契約・個別契約新規の継続的な取引を行うときに必要な最も基本的な契約形態です
業務委託契約営業やマーケティングなど専門的な事業を展開している企業に業務を委託する場合によく利用する契約形態です
売買契約商品やサービスの売買取引に利用される契約形態です
金銭消費貸借契約金銭の賃貸借で利用される契約形態であり、連帯保証契約と合わせて利用する場合が多く見受けられます
企業買収・事業譲渡M&Aで用いられる契約形態です
マスターリース契約不動産の管理・運営を第三者に委託する場合に用いられる契約形態です
知財と秘密保持契約著作権などのライセンス利用許諾やビジネスで一番最初に結ぶ可能性のある秘密保持について規定した契約形態です

【基本契約と個別契約】

基本契約とは、特定の相手方との間で発生する継続的なビジネスにおける、共通する基本的事項を定めた契約をいいます。

例えば、継続的にある特定の企業と売買取引を行う場合に用いられる契約書に、売買取引基本契約書や代理店契約書、リセラー契約書、特約店契約書、販売委託契約書などがあります。また、ある特定の企業に開発を委託する場合には、開発委託基本契約書といったものが用いられるのが一般的です。

これに対して、個別契約とは、注文と承諾により成立する個々の製品やサービスに対する具体的な契約をいいます。

従って、取引を行う製品やサービスが予め限定されている場合には、契約書を基本と個別に分ける必要はありません。

一方、新たな製品やサービスが今後とも継続的に供給され、それらを当事者間の取引の材料にしたいという場合や、複数ある商品やサービスがお互いかなり異なる場合、基本事項をまとめた契約書と各商品やサービス毎の個別契約に分けて作成した方が、契約の内容が理解し易いうえ、重複や漏れなどが少なくなり、トラブルの発生を抑制する可能性は高くなります。

POINT

基本契約書

基本契約書に定める内容としては、個別の取引で、その都度定めることが煩雑となる共通事項のみを記載し、具体的な事項については、個別契約に委ねます。これにより、頻繁に変更される可能性の高い具体的な事項に対し、頻繁な基本契約の改変を避けることができます。

契約者の位置づけ

販売委託契約などでは、受託者が委託者に対し、どういう形態で契約内容を実行するかを規定する必要があります。

例えば、委託者が受託者の販売の代理人という位置づけであれば、売主は委託者となります。これを、「代理商契約」ともいいます。代理店やリセラーとは契約形態が異なりますので、混同しないようにしてください。

これに対して、売買契約上の売主が受託者となる場合の契約を「問屋(といや)契約」といいます。とはいえ、自分の名で(自分が表に立って)買ったり売ったりしても、お金の出処や買値・売値、売買の損益は委託者の勘定であり、手数料が受託者の収入(利益)になります。

印紙税

継続的基本契約書の場合、印紙税額は、1通につき4,000円となります。
但し、契約期間が3ヶ月以内、且つ、更新の定めがない場合は除かれます。

【業務委託契約】

ビジネスをやっていく中で最も多く発生する契約の一つに、業務委託契約があります。
これも契約形態でいえば、基本契約に当たります。

業務委託とは?

業務委託契約とは、当事者の一方が相手方に対し一定の業務を委託することであり、企業等が外部の企業や個人に業務を委託するときに締結するもので、受託者は、自分の責任と管理の下で業務を行うことになります。

この業務委託契約には、民法上の準委任や委任といった契約形態のものもあれば、請負契約の形態もあり、更にそれらを混合した形態も存在します。

例をあげると、製造委託契約や建物建築工事請負契約等が典型的な請負契約の例になります。

また、販売業務委託契約や保守業務委託契約、コンサルティング契約、マーケティング業務委託契約、顧問契約などは、委任契約の例に当たります。

更に、2016年1月1日より施行のマイナンバー法における個人番号利用事務等委託契約も委任契約の例に該当します。

一方、OEM契約は、売買という委任契約と製造という請負契約が混合した契約形態になりますし、開発委託契約などは、開発という請負契約と保守という委任契約の混合契約になります。

このように、業務委託契約では、法律行為だけでなく、法律行為ではない事務の委託を含んだ委任契約と請負契約及びその混合形態に大別されますが、契約がそのどれに当たるかによって、雇用形態や報酬の支払い方法が異なりますので、契約書を作成する上で注意が必要です。

POINT

委任契約とは

委任契約とは、当事者の一方(委任者)が相手方(受任者)に一定の事務の処理を委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約です。

本人に代わって業務を行う代理契約などがその典型的な契約であり、報酬は受託者が予め要求しない限り無償となりますが、請求する場合は、事前に受け取ることも可能ですし、業務完了時に受け取ることも、併用することも可能です。

また、継続的に業務をこなす場合には、全体の報酬を毎月分割して受け取ることも可能ですので、非常に柔軟性にとんだ契約形態といえます。但し、雇用形態としては、派遣のように派遣先の指示に従って業務をこなすわけではありませんので、委託者の事務所で作業を行う場合、混同しないように気をつけなければなりません。

請負契約とは

請負契約とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約をいいます。

委任契約との大きな違いは、仕事が完成するまで基本的に一銭も報酬は入ってこないということです。

従って、大きなプロジェクトの場合、完成までに長い年月を要することになり、中小企業にとっては資金繰りなどに支障をきたしかねません。そこで、プロジェクトをいくつかのフェーズに分割して、そのフェーズ毎に個別契約を交わすことによって、契約期間を短くして、報酬の支払回数を増やすなどの処理を行うこともあります。

このように、契約形態ごとに法律上の規定が異なりますので、法律を遵守しつつ、各企業の実情に合わせた独自の契約書を作り上げる必要があるわけです。

【売買契約】

売買契約とは、契約の当事者の一方(売主)が所有している財産を、相手方(買主)に移転することを約し、相手方がその対価として代金を支払うことによって成立する契約をいいます。専門用語では、この契約形態を諾成契約といいます。

諾成契約の場合、契約の成立に契約書は必ずしも必要なく、合意のみ、つまり口約束のみで、その契約は法的に成立します。しかしながら、以下のような場合には、契約内容を確認し、後々トラブルが発生しないように契約書を作成するのが一般的です。

  • 不動産売買契約のように目的物の価格が高額にのぼる売買契約
  • 長期にわたり売買を継続する契約
  • 動産売買契約において、目的物の特定後や、引渡し前に目的物が滅失した場合の処理を予め明確にしておきたい場合等

売買契約書に記載すべき事項

売買契約書と一言で言っても、基本契約書と個別契約書に大きく大別できますが、個別契約書は目的物によって契約書に記載する内容がかなり異なりますので、ここでは商品売買基本契約書を作成する場合を例にとってご説明します。

定 義

目的物となる商品が何か、どこまでの範囲を指すのか、といったことを最初に定義します。
また、商標登録しているものや会社独自の商品名やブランド、一般的に馴染みのない用語や特殊な使い方をする言葉などを定義しておくことにより、契約書の内容を誤解しないようにします。

最も大切な条文ですが、見当たらない契約書も多いのが実情ですし、目的の中に記載する場合もあります。

いずれにしても、記載方法はどうであれ、契約書の最初の方に忘れずに記載した方がいいでしょう。

目 的

契約の目的を最初の方に記載します。例えば、「甲は、乙に対し、個別契約に基づき、本製品を売渡し、乙はこれを買い受ける(ものとする)。」というように、誰が読んでも、契約の目的が確実にわかるように記載します。

個別契約

個別契約書では具体的にどんな事項を規定するのか、また、個別契約で規定していない事項については、基本契約の規定を適用するといったような個別契約と基本契約の関係等について記載します。

支払条件

毎月の会計業務の締日と支払日、並びに手形か指定金融機関への現金振り込みか、といった支払方法を規定します。
支払いが遅延したときの遅延損害金(支払利息)について記載することもあります。

検収及び引渡

納入品(若しくは購入品)の受け入れ検査についての検査方法や時期についての記載、並びに不合格品が発生した時の措置(引き取りや不足分の納入等)について記載します。

所有権の移転

いつの時点で所有権が移転したものとするのか規定します。引渡しがあった場合とか、納入物を特定したか時点等、具体的に記載します。

保証

製品の保証期間並びに製品の品質に問題がみつかった場合の責任範囲等を規定します。

権利義務の譲渡等の禁止

本契約で得られた権利、義務を無断で第三者へ譲渡することを禁止する旨を規定します。

秘密保持

営業や技術情報といった具体的な秘密事項の種類並びに規定の範囲(基本契約書のみならず、個別契約にまで及ぶ)を指定します。また、契約満了後の秘密漏洩禁止期間などを記載します。

契約解除

任意に契約を解除する場合の条件(解除までの期間や通知方法等)や、契約違反による解除の場合の解除条件や即時解除などのついて具体的に記載します。

契約期間及び更新

個別契約とは別に基本契約の契約期間の設定及び契約の終了並びに更新方法の条件等について記載します。

損害賠償

基本契約及び個別契約に違反した場合の損害賠償について記載します。但し、個別契約書に具体的に規定されている場合には、そちらを優先します。

暴力団等に関わる措置

都道府県毎に反社会的勢力に対する条例が既に施行されている場合はもちろんのこと、そうでない場合であっても、必ず記載しなければならない規定の一つです。

管轄裁判所

基本契約、個別契約に関する裁判上の紛争にに対する管轄裁判所について記載します。

誠実協議

基本、個別両契約に定めがない場合に誠実に協議すべきことを規定します。一般的に日本国内で使用されている契約書につきもののおまじないのような規定ですので、記載するかどうかはどちらでもかまいませんし、相手次第といってもいいでしょう。

売買契約の例

売買契約書といわれるものには、どのような契約書があるのでしょうか?

代表的なものとして、以下のような契約書があります。

販売委託契約書

販売委託契約とは、自己の名で他人のために物品を購入したり、販売することを業とする者と、物品の購入や販売を委託する側との間で交わされる契約です。

この契約に基づいて受託者が販売を行う場合、売主が委託者になるのか、受託者になるのかによって、買主に対する責任も変わってきます。

販売委託契約書においては、売主が委託者になる「代理商契約」と、受託者が売主になる「問屋(といや)契約」があります。

代理商契約

代理商契約では、受託者は、委託者より代理人として販売する形態をとりますので、売主は委託者になり、また、その責任も委託者に帰属します。

問屋契約

問屋契約は、代理商契約とは異なり、受託者は自分の名で販売し、且つ、売主にもなりますので、販売した物品やサービスにおける買主に対する一次的な責任は、受託者が負うことになります。

しかしながら、この販売委託契約で最も大切なことは、受託者が物品を仕入れても、所有権は受託者には移転しないということです。

独占禁止法について

販売を委託する場合に問題となるのが販売価格であり、独占禁止法違反に該当しないかどうか契約の段階でしっかり確認しておく必要があります。

販売する物品の所有権が委託者に帰属するか、受託者に帰属するかによって、販売価格の決め方が全く異なります。

本契約では、受託者が委託者から物品を仕入れても所有権は移転しない旨を明確に記載する必要があります。

更に、仕入れた物品の支払いについても、売り上げた分だけを委託者に通知し、その仕入れ分のみを支払うことで、受託者が支払いを済ませた物品を受託者自身で所有しないようにすることが大切です。

これによって、委託者が販売価格を委託者に指示しても、独占禁止法で禁止されている再販売価格維持行為には該当しません。

従って、契約書のタイトルだけ見ても、どういう販売形態なのか判断付きませんので、契約書はどうも苦手だという方は、是非ご相談ください。

競業避止義務について

委託販売の場合、受託者は他の同業者から物品を仕入れることも可能であり、最も競争力のあるものばかりを選択的に仕入れることだって出来ないわけではありません。

委託者は、通常、あまり競争力のないものを強力な販売力を持っている受託者にお願いして売ってもらいたいと思っていたり、販路拡大のために契約すると考えられますので、その意図に反するような行為をされては困ります。

そこで、競業避止義務という規定を設けて、競合する製品を扱わないか、若しくは、扱う場合は、委託者の承諾を得るように契約書に明記するわけです。

印紙税

販売委託契約書は、継続的取引基本契約書に該当しますので、印紙税額は、契約書1通につき4,0000円かかります。但し、契約期間が3か月以内、且つ、契約の更新の定めがない場合を除きます。

特約店契約書

特約店契約とは、委託者が商品を受託者に売渡し、受託者は委託者の特約店として商品を販売する契約です。

特約店契約の特徴は、同一地域における独占的な販売形態にありますが、絶対にそういう契約を締結しなければいけないわけではありません。

受託者が提示する条件が厳しければ厳しいほど、相手の要求も高くなってきます。
そこで、地域独占を緩めて、売り上げ目標を若干下げる代わりに、「特約店を同一地域内で設ける場合には、受託者の承諾を要する」という文言をいれることもできます。

販売価格について

特約店契約の場合、商品の所有権は、委託者から受託者に移転しますので、独占禁止法で規定されている再販売価格維持行為は禁止されます。

価格決定権は、受託者に委ねられることになりますので、委託者が表示する価格は、オープン価格であったり、参考価格や標準価格といった表示にとどまります。

契約上も厳しい制限を課すことはできませんので、せいぜい「適正な価格で販売すること」という文言を入れる程度です。

一方、特約店には、地域における独占販売権に加え価格決定権も付与しているわけですので、当然しっかり商品を販売してもらわないと契約を交わした意味がありません。

そこで大事なことは、売上目標の設定です。

売上目標の設定

ある一定期間における売上目標を設定し、その目標の達成度に応じて仕入価格を変動させたり、大きく下回った場合のペナルティを規定したりすることが可能です。

例えば、連続して数か月間販売目標を下回った場合は、新たな特約店を受託者の承諾なしで設けることができるとか、仕入れ価格を5%アップするとか、いろいろなことが考えられます。

このように、特約店契約は、地域独占という特典を得る対価として、払うべきものが必ず存在することを前提に考えるべき契約であるということを認識しておく必要があります。

印紙税

特約店契約書は、継続的取引基本契約書に該当しますので、印紙税額は、契約書1通につき4,0000円かかります。但し、契約期間が3か月以内、且つ、契約の更新の定めがない場合を除きます。

ディストリビュータ契約書

ディストリビュータ契約とは、委託者が商品を受託者に売渡し、受託者の名のもとでエンドユーザ若しくはリセラーに販売する契約です。

この場合、商品の移動ともに所有権も委託者から受託者に移転しますので、代理商契約と混同しないようにしてください。

ディストリビュータ契約の中には、独占販売権を付与するマスターディストリビュータ契約があります。

これは、独占販売権を得たディストリビュータが商品をメーカーより一括して購入し、その傘下にあるリセラーや二次代理店を通して商品をエンドユーザに販売するものです。

この場合、マスターディストリビュータは、基本的に自社でエンドユーザに販売することはしないのが普通です。なぜならば、メーカーより購入する価格(仕切り価格)が、二次代理店やリセラーと比べて非常に有利に設定されているため、彼らの営業活動を妨害してしまう可能性が大きいからと考えられます。

一方独占販売権を付与されない場合であっても、ディストリビュータはリセラーに比べて価格競争力上優位であることは確かです。その代り、リセラーに比べて高い販売目標か課せられ、また、大量一括購入など在庫を抱えるなど大きなリスクも伴います。

従って、仕切り価格の優位性が、そのまま価格競争力につながるわけではありません。

こういうことを踏まえて、以下の事項について考える必要があります。

販売価格と売上目標

先にも述べたように独占権があるかどうかによって契約書の内容は大きく異なります。
ここでは、独占権がない場合を想定して話を進めます。

販売目標は、四半期、半年、年単位で見直しが行われるのが普通であり、仕切り価格もそれに連動すると考えてしかるべきです。

販売価格については、独占禁止法で規定されている再販売価格維持行為は禁止されますので、ディストリビュータで自由に設定することが可能です。

ディストリビュータ契約の場合、売上目標、販売価格、営業経費、営業利益などに加えて、在庫管理並びに商品や契約によっては保守について考慮する必要があります。

印紙税

ディストリビュータ契約書は、継続的取引基本契約書に該当しますので、印紙税額は、契約書1通につき4,0000円かかります。但し、契約期間が3か月以内、且つ、契約の更新の定めがない場合を除きます。

リセラー契約書

リセラー約とは、委託者が商品を受託者に売渡し、受託者の名のもとでエンドユーザに販売する契約です。

この場合、商品の移動ともに所有権も委託者から受託者に移転しますので、価格についても、リセラー側で任意に設定可能です。

ところで、リセラーの位置づけはというと、メーカーによってかなり異なります。

基本的に、メーカーのブランド及び保証サービスなどをそのまま顧客に販売し、営業的などのクレームや問い合わせについてはリセラーが対応するというのが最も一般的ではないかと思われます。

一方、リセラー独自で保証サービスを付加したり、メーカーに認定を取得して技術的な問合せや保守サービスを提供するVAD(Value Added Distributor)のような機能を持つ場合もあります。

使用する売買契約書(見積書等)についても、メーカーから指定されたものを使用する場合もあれば、リセラー独自の場合もあります。

リセラーもディストリビュータもメーカーの販売代理店の一種であることにかわりはなく、メーカー毎にその位置づけや呼び名が異なるので、契約する場合は、そのメーカーの制度をよく理解する必要があります。

販売価格と売上目標

ディストリビュータが存在するかどうかによって大きく変わりますが、ない場合は、ディストリビュータと同じと考えて差し支えないでしょう。

ディストリビュータの傘下でリセラーとして機能する場合は、売り上げ目標については、ディストリビュータに対して責任を持つことになりますので、価格についても、ディストリビュータからの仕切り価格に左右されることになります。

契約についても、メーカーとのリセラー契約に加えて、ディストリビュータとの契約を交わす場合もあるでしょう。全てケースバイケースです。

印紙税

リセラー契約書も、継続的取引基本契約書に該当しますので、印紙税額は、契約書1通につき4,0000円かかります。但し、契約期間が3か月以内、且つ、契約の更新の定めがない場合を除きます。

フランチャイズ契約書

フランチャイズ契約とは、事業者(フランチャイザー)が、加盟店(フランチャイジー)に対し、自己の商号や商標の使用を許諾し、経営ノウハウの提供並びにマーケティング活動等を加盟店に代わって行うのに対し、加盟店は、その対価として加盟金や一定のロイヤリティの支払いを約する継続的な契約です。

フランチャイズ契約においては、他の契約と異なり、企業対企業というよりも、企業対一般消費者若しくは個人事業主といった契約形態が多くなりますので、フランチャイザーとフランチャイジーとの立場の違いによるトラブルが発生しやすいのが特徴です。

当然、フランチャイジーの立場は非常に弱くなりがちですので、フランチャイジー保護のために、以下の通り中小小売商業振興法の第11条に、フランチャイズ契約に関する規定があります(「連鎖化事業」とはフランチャイズ事業のことです)。

中小小売商業振興法 第11条(特定連鎖化事業の運営の適正化)

連鎖化事業であって、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他
の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する
旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者は、当該特定連鎖化事業
に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところに
より、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項につ
いて説明をしなければならない。

1. 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
2. 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項2
3. 経営の指導に関する事項
4. 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
5. 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
6. 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項

上記の内容が契約書に明記され、且つ、説明がフランチャイザーからフランチャイジーになされることが必須条件ですので、どちらかでも疎かになったりした場合は、公正取引委員会による勧告が行われ、それでも改善しない場合はフランチャイザー名が公表されることになります。

契約の解除については、明確な法律の規定はないようですので、契約書の内容が公序良俗に違反していないかどうかということを契約を締結する前によく確認しておく必要があります。公序良俗違反であれば、契約後であっても契約の一部若しくは全部が無効となりますが、可能な限りトラブルが起こる前に未然に防ぐことが大切です。

フランチャイズ契約というのは、フランチャイジーにとって、ゼロから始めるよりもリスクが低い代わりに、初期費用も掛かりますし、いろいろな制限もあるわけですが、逆にフランチャイザーにとっても、フランチャイジーを成功させる責任があります。

その一例が、売り上げの最低保証です。

フランチャイザーの責任

フランチャイジーにばかりリスクを押し付けるわけにはいきません。フランチャイジーにいくらノウハウを提供し、販売支援を行っても、すぐに軌道に乗るかどうか誰もわかりません。

フランチャイジーとしては、大きな加盟金を支払い、自費で商品を仕入れ、ロイヤリティーをフランチャイザーに支払うわけですから、フランチャイザーにある程度の売り上げを保証して欲しいと思うのは当然です。

これが、売上高の最低保証制度です。

これを契約書に記載してもらえるかどうか分かりませんが、この条項があるかどうかは、契約の動機づけに大きく影響しますので、契約時、必ず確認する必要があります。

印紙税

フランチャイズ契約書も、継続的取引基本契約書に該当しますので、印紙税額は、契約書1通につき4,0000円かかります。但し、契約期間が3か月以内、且つ、契約の更新の定めがない場合を除きます。

不動産売買契約書

買主が代金を支払い、売主が不動産の所有権を買主に移転することを約する有償・双務契約であり、物件、代金、支払時期や方法、物件の移転登記や引渡の時期、引渡しの態様、その他手付の意味などを定めておく契約書。

不動産売買契約とは、土地・建物といった不動産を購入するために買主が売主に代金を支払い、これに対し、売主がその不動産の所有権を買主に移転することを約する有償・総務契約です。

不動産取引においては、金額も大きく、トラブルも多いことから、売買物件、売買代金、代金の支払い時期や方法、売買物件の所有権移転登記及び引渡しの時期、抵当権の有無や土地取引の場合の建物の存在の有無、更地に要する費用の負担等を、契約書に定めておく必要があります。

不動産売買においては、通常不動産業者による物件の説明並びに宅地建物取引主任者が書面により行う重要事項説明、契約の場所によってはクーリングオフなどの説明がありますが、契約書は、内容的にそれら書面の文章と重複するところがありますので、契約書の内容に矛盾がないか確認する必要があります。

手付及び解約

不動産売買契約を締結した場合、契約時に買主側から手付金が支払われるのが一般的です。

この手付には、以下の3通りがあり、はっきりしない場合は、解約手付と解されるのが一般的です。

解約手付

当事者の一方に債務不履行がなくても、又は当事者間に解除についての合意がなくても、交付された手付を理由に契約を解除できるもので、当事者は、自分が履行に着手していても、相手方が履行に着手する前であれば、手付を交付した者は手付を放棄し、手付を受領したものは手付の倍額を償還して、契約を解除することができます。

違約手付 

買主に債務不履行があれば、売主は違約金を没収することができる手付。

証約手付

売買契約が成立した証拠とする目的を持った手付。

引渡しの態様

売買の目的物が土地の場合、土地上に古家が存在している場合も珍しくないので、現況のままでの引渡しとするのか、更地での引渡しとするのか、契約の段階で明確にしておく必要があります。

建物が売買の目的物の場合、空き家にして引き渡すのか、借家人付きで引き渡すのか、ということも明確にしておく必要があります。後者の場合、敷金等の引き継ぎもありますので、忘れないように明記しておく必要があります。

所有権移転登記費用と公租公課の負担

所有権移転登記に係る登録免許税及び司法書士等の報酬を売り主側で負担するのか、買主側で負担すのか明確にしておく必要があります。

また、土地建物にかかる固定資産税、都市計画税、不動産取得税などの公租公課についても明記しておく必要があります。例えば、売買代金授受の日の前後で売主、買主の負担を分けるという考え方もあります。

農地転用の場合

農地を宅地に転用するために売買契約を締結する場合、農地法第5条第1項に定められた、農地の宅地への転用並びに所有権の移転に関する許可手続きの申請を売り主と買主が連名で都道府県知事に対して行わなければなりません。

売買契約だけでは、所有権移転の効力はありませんので、農地の転用については、特に気を付ける必要があります。

印紙税

不動産売買契約書に係る印紙税は、印紙税額一覧表の第1号文書並びに印紙税の軽減に関する法律文書を参考にしてください。

記載金額税 額
1万円未満非課税
10万円以下200円
10万円を超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1,000円
100万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円
5,000万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

不動産再売買予約契約書

再売買予約契約とは、売主が目的物を一旦は買主に販売して売買代金を受領し、所有権も移転しますが、将来、売主が買主から目的物を再度買い取ることを予め予約しておく契約です。

当然、再度買い取る時は、売主から販売した時の代金に加え、利息を付けて買い取ることになりますし、所有権も代金の支払いと同時に元の売主のところに戻ることになります。

この再売買予約契約は、売渡債権として債権担保目的で使用されるわけですが、この場合、債権者(買主)が債務者(売主)所有の目的物である不動産の売買代金として、債務者に金員を交付し、その代りに、目的物の所有権を担保の目的として債権者に移転します。債務者は、のちに債務を弁済し終えたときに予約完結権を行使し、再売買の形で目的物を買い戻すことができるわけです。

民法においても、再売買の予約が規定されておりますが、民法の規定は、目的物が不動産に限定されているうえ、買戻し期間の上限が10年に限定されていたり、その他厳格な制限があるため、再売買の予約の方が実際には利用されています。

仮登記手続

不動産再売買予約の目的物である不動産と融資額が不相当な場合が十分考えられますので、予約契約と同時に、所有権移転の登記手続きと再売買予約の仮登記を行う旨、契約に規定する必要があります。

若しくは、所有権移転登記手続きの代わりに、所有権移転の仮登記手続と、再売買予約完結の意思表示がなされた際に所有権移転仮登記抹消登記手続を行う規定を契約書に記載する方法もあります。

いずれにしても、仮登記担保法を利用することで、債権者の暴利行為が行われないように規制することが大切です。

目的物の使用

所有権は、債権者に移転しますが、引渡しは行われません。従って、引き続き従前の所有者(債務者)が、継続して目的物を使用することができますので、その使用対価についても契約書に明記しておく必要があります。

無償として、別途利息をつける方法もあれば、有償とすることも可能です。

印紙税

印紙税につきましては、国税庁のホームページに以下のように規定されています。

  • 買戻しが再売買の予約の方法によるものである場合は、当該不動産の売買に係る契約金額と再売買の予約に係る契約金額との合計金額を記載金額とする。
  • 買戻しが民法第579条《買戻しの特約》に規定する売買の解除の方法によるものである場合は、当該不動産の売買に係る契約金額のみを記載金額とする。

記載金額に対する印紙税額は、不動産売買契約書に記載されている印紙税の一覧表を参照してください。

動産売買契約書

動産売買契約というのは、買主が代金を支払い、それに対して売主が財産権を買主に移転することを約する有償・双務契約です。

動産売買契約においては、売買の目的物、代金の額と支払時期はもちろんのこと、引渡しの完了時期、所有権移転の時期、危険負担について明確に規定しておく必要があります。

動産の場合、売主から買主に目的物が引き渡された時点で、引渡し並びに所有権が移転しますので、第三者に対抗することができます。

しかしながら、売買契約後、売主が買主のために占有する意思表示を示し、目的物を売り主の手元に置いたままとする引渡し状態(これを「占有改定」といいます。)の場合、買主は目的物を即時取得することができないため、第三者に対抗することができなくなりますので、引き渡し時期と所有権移転時期の設定には、注意が必要です。

印紙税

物品などの動産売買契約書には、印紙は不要です。

これらの契約書は、同じ売買契約書とはいえ、目的物が全然異なりますので、記載する内容にもかなり違いがあります。しかしながら、先に述べた契約書の記載事項の一例をもとに、必要な規定を追加したり、削除することで、漏れや重複の少ない基本契約書を作成することができます。

また、専門家に依頼する場合でも、どういうものが記載されているか大凡の検討がつきますし、出来上がった契約書のチェックも基準がありますから、チェックしやすいのではないでしょうか。

【金銭消費貸借契約】

金銭消費貸借契約とは、最も一般的な例では、貸主が借主にお金を貸して、借主が決められた期限までに借りたお金を返済するというものですが、以下に、その特徴を列挙します。

  • 原則的に貸主が借主に対して金銭を交付することによって成立します。これを、「要物契約」といいます。
  • 借主の弁済(金銭等の返済)義務だけが存在し、貸主の義務は存在しません。このような一方にしか義務のない契約を「片務契約」といいます。
  • 貸主、借主双方の意思表示のみで契約が成立します。これを諾成契約といいます。

まとめますと、金銭消費貸借契約は、「諾成片務要物契約」であり、必ず貸主の金銭交付が先にきて、その後借主の返済義務が生じますので、貸主と借主の義務の履行時期がずれることになります。ここが、売買契約のような双務契約と大きく異なるところです。

POINT

金銭消費貸借契約において最も重要なポイントは、いかにして借主の義務の履行を確保する仕組みを作るかということです。

以下に、いくつかその実例をあげて説明します。

期限の利益喪失の設定

金銭を貸すときに、通常返済時期を設定します。親族間であれば利子をつけない場合もあるでしょうが、一般的な取引で利息の設定を行わなかった場合は、個人間では、5%の法定利息が、企業間では年6%の法定利息が適用されます。

ところで、上記の利息は、期限までに貸した金銭を返却した場合に適用される利息であり、言い換えれば、期限ぎりぎりまでは、元本と決められた利息以上の支払が猶予されるということです。これを「期限の利益」と言います。

ところが、返済期限を過ぎても債務が履行されない場合には、債務全額の一括請求や担保などを設定している場合には担保権の実行、その他非常に高い利息の適用といったことが可能になります。

逆に言うと、借主が「期限の利益を喪失」した場合、どのような不利益を被るか、予め契約書に明記することにより、借主の債務の履行を促すという機能があります。

いずれにしても、「期限の利益喪失事項」は、金銭消費貸借契約には不可欠の条項となります。

連帯保証人の確保

借主の返済能力に問題がある場合や債務の額が担保を超える場合などに、貸主が借主に対して連帯保証人を付すことを契約の条件とする場合があります。

ここで気をつけなくてはいけないことに、金銭消費貸借契約そのものは、口約束だけでも契約が成立する諾成契約ですが、連帯保証人との契約は、契約書を交わさない限り成立しないということです。

貸主が期限までに債務を履行しなかった場合(「履行遅滞」といいます)、貸主は、借主ではなく連帯保証人に対して、直接、全額の返済を請求することができますので、借主の債務の履行確保には有効な手段となります。

抵当権の設定

借主が、土地や建物といった不動産を所有している場合には、その債務に見合った抵当権を借主の不動産に設定することにより、債務の履行を促します。

借主が期限までに債務の履行ができなかった場合には、貸主は担保権を実行して、換価することにより、貸した金銭を取り戻すことができます。

但し、貸した金銭の額に対し、抵当不動産の価値が大きすぎる場合、公序良俗違反となり、契約が無効となってしまう可能性がありますので、注意が必要です。

担保の設定

貸主が価値のある絵画や骨董などといった動産を所有している場合に、債務の履行が完了するまで貸主がそれらの動産を担保として、一時的に留置することをいいます。

借主が期限までに債務の履行ができなかった場合、貸主は、留置していた担保物件を所有するか、若しくは売買して換価することにより貸した金銭を取り戻すことになります。

注意すべき点としては、先の抵当権と同様に、担保物件の価値と貸した金銭の額に大きな差がないことです。差が大きい場合は、公序良俗違反で契約が無効となる可能性があります。

印紙税

金銭消費貸借契約書に係る印紙税は、印紙税額一覧表の第1号の3文書を参考にしてください。

記載金額税 額
1万円未満非課税
10万円以下200円
10万円を超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1,000円
100万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円
5,000万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

金銭消費貸借契約の例

金銭消費貸借契約といわれるものには、どのような契約があるのでしょうか?

代表的なものとして、以下のような契約があげられます。

金銭消費貸借契約書

金銭消費貸借契約書に関しては、既に金銭消費貸借契約のところに記載した通りですので、そちらを参照して頂ければ作成の要点もつかめると思います。

ここでは、本契約を一部変更することによって可能な新たな契約書について記載します。

準消費貸借契約

民法第588条において、「消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。」という規定がありますが、これから金銭を借りるのではなく、既にある債務を当事者の合意に基づき消費貸借契約の目的にすることも可能です。

例えば、当事者間で既に行われた取引で発生した売主の売掛金債権を、本契約における金銭消費貸借の目的とすることに合意した旨及びその日付並びに金額を記載することで、金銭消費貸借契約を金銭準消費貸借契約に変更することが可能となります。

諾成的金銭消費貸借契約

既に述べたように、金銭消費貸借契約は、契約と同時に金銭の貸借が実際に行われる要物契約であり、借主が一方的に弁済の義務を負う片務契約が一般的です。

ところが、貸主から借主に対する金銭の貸付の実行を、契約より以降のある一定の日に行うことを約する契約も可能です。

つまり、将来のある日において、所定の金額を貸主が貸付け、借主が借り入れることに合意した旨を記載することにより、片務契約を諾成契約にするわけです。

債務が近い将来かなりの確率で発生することが予見できる場合、こういう契約も可能と考えます。

連帯保証付契約及び保証のない契約

金銭消費貸借において、連帯保証人をつける場合、契約書そのものに貸主、借主、連帯保証人の3者による記名・押印を行う場合と連帯保証契約を別に締結する場合の2通りがあります。

後者の場合は、連帯保証人なしで先に金銭消費貸借を締結し、後日、連帯保証人を付する場合にもちられる形態です。

この場合、本契約同様3者による連帯保証契約であったり、連帯保証人が一方的に保証する旨を記載した保証書の形態をとる場合が考えられます。いずれにしても、本来、連帯保証契約は、貸主と連帯保証人両者のみで行うことが可能です。しかしながら、主債務者の同意を取って契約にその旨記載しておく方が後々トラブルを未然に防ぐ意味でも望ましいと考えられます。

一方、借主と連帯保証人間の関係に着目すると、連帯保証人が貸主に対し債務を直接弁済した場合、借主に対し求償権が発生します。その求償に関する細かな取り決めや連帯保証人になることを保証人に委託し、それに対し保証委託手数料を借主から保証人に支払う旨を定めた保証委託契約書を締結する場合もあります。

この保証委託契約書は、保証人と借主の関係が身内などの縁者ではなく、独立的な地位をもった関係において用いられると考えていいでしょう。

ところで、連帯保証人がいない場合ですが、金銭消費貸借契約書において、連帯保証人に関する記述を一切省いて、貸主と借主の両者のみの契約形態にすることで可能です。

抵当権設定契約書

債務者の金銭債務を保証するために自身が所有する不動産に債権者のための抵当権を設定する契約です(物上保証も可能)。

抵当権は、不動産に設定される典型的な担保権で、債務者が直接担保を提供して、その担保に債権者のための抵当権を設定する場合と第三者が債務者のために自身の担保を提供して、その担保物件に抵当権を設定する場合があります。

後者の契約を物上保証といい、設定者を物上保証人といいます。

物上保証人が存在する場合、債権者、債務者、物上保証人で且つ債権設定者の3名が契約書に登場します。

ところで、当初物上保証人が存在するものとして契約書を作成したものの、契約前に自身の不動産を担保物件に変更した場合は、どうすればいいのでしょうか?

債務者自身が担保物件を提供し、抵当権を設定する場合、物上保証人の氏名も債務者にし、最後の抵当権設定者の記名、押印を債務者自身がすれば、契約書自体有効になります。

つまり、物上保証人の有無にかかわらず、物上保証人が存在するものとして抵当権設定契約書を作成することで、どちらの場合にも使うことが可能だということです。但し、不動産の内容は、当然変更する必要があります。

抵当権設定契約書に求められる主な事項

抵当権設定契約書を作成する場合、以下の通り、最低限契約書に記載すべき事項があります。

  • 債務者の債務(被担保債務)の内容:元本、利息、遅延損害金、債務者
  • 担保物件の内容並びに抵当権設定登記手続の義務
  • 担保物件に建物が含まれる場合は、火災保険の設定並びに質権設定

上記の必要事項の中で、特に気を付けなければならないのが、不動産に関する内容です。
抵当権の設定登記を法務局で行う場合、登記原因証明情報として、契約書の貼付が求められますので、契約書に不備があれば、抵当権の設定登記が却下されてしまいます。

では、登記原因証明情報とは、いったい何を指すのでしょうか?

  • 登記の原因となった事実又は行為及びこれにより権利変動が生じたことを証する情報
  • 務者の債務(被担保債務)の内容
  • 抵当権者(登記権利者)と抵当権設定者(登記義務者)
  • 不動産の表示(登記簿記載の通りに記載)

上記の事項を間違いなく、漏れなく契約書に記載する必要があります。

また、不動産の表示に関しては、契約書に直接記載することもできますし、別紙として添付することも可能です。

印紙税と登録免許税

抵当権設定契約書には、印紙の貼付は不要ですが、不動産に抵当権を設定する際には、登録免許税が課されます。

登録免許税の額は、債権金額の1000分の4となります。尚、計算した登録免許税の額に100円未満の端数があれば切捨てとし、1000円未満の場合は、1000円となります。

根抵当権設定契約書

継続的な取引契約に基づくなど一定の範囲内で発生又は消滅を繰り返している不特定の債権を、極度額の範囲内で担保するために不動産に設定する契約です(物上保証も可能)。

根抵当権とは、継続的な取引契約に基づくなど一定の範囲内で発生又は消滅を繰り返している不特定の債権を、極度額の範囲内で担保するために不動産に設定される担保物件です。

ところで、根抵当権には、極度額というものがありますが、これは、債権者が設定する担保物件に対する貸し出し可能な上限金額といえるものですが、その運用においては、以下の二通りの解釈がありますので、契約書には、どちらを指すのか、明記する必要があります。

累積根抵当権

甲乙間の取引において、A、B2個の不動産担保物件に根抵当権が設定され、各々極度額が1億円とした場合に、AB両担保物件を合わせて最大2億円まで貸し出しが可能、つまり極度額の合計金額まで債権回収が可能なものを累積根抵当権といいます。

共同根抵当権

共同根抵当権とは、累積根抵当権と異なり、被担保債権を複数の根抵当権の極度額に応じて按分するものであり、そのため、いくら根抵当権を合わせても、上限が変わるわけではありません。

金融機関が設定するときは、一般的に共同根抵当権となりますが、それ以外の場合は、累積根抵当権となります。

また、共同根抵当権を設定する場合には、契約書のみならず、登記においても共同根抵当権設定の登記をする必要があります。

根抵当権設定契約書に求められる主な事項

根抵当権設定契約書を作成する場合、抵当権設定契約書同様、以下の通り、最低限契約書に記載すべき事項があります。

  • 債務者の債務(被担保債務)の内容として、債権の範囲、極度額、債務者
  • 担保物件の内容並びに根抵当権設定登記手続の義務
  • 担保物件に建物が含まれる場合は、火災保険の設定並びに質権設定

上記の必要事項の中で、特に気を付けなければならないのが、不動産に関する内容です。
抵当権の設定登記を法務局で行う場合、登記原因証明情報として、契約書の貼付が求められますので、契約書に不備があれば、抵当権の設定登記が却下されてしまいます。

では、登記原因証明情報とは、いったい何を指すのでしょうか?

  • 登記の原因となった事実又は行為及びこれにより権利変動が生じたことを証する情報
  • 務者の債務(被担保債務)の内容
  • 根抵当権者(登記権利者)と根抵当権設定者(登記義務者)
  • 不動産の表示(登記簿記載の通りに記載)

上記の事項を間違いなく、漏れなく契約書に記載する必要があります。

また、不動産の表示に関しては、契約書に直接記載することもできますし、別紙として添付することも可能です。

印紙税と登録免許税

根抵当権設定契約書には、印紙の貼付は不要ですが、不動産に根抵当権を設定する際には、登録免許税が課されます。

登録免許税の額は、債権金額の1000分の4となります。尚、計算した登録免許税の額に100円未満の端数があれば切捨てとし、1000円未満の場合は、1000円となります。

債権質設定契約書

債務者の債務を保証するための担保権として、賃貸借に基づく保証金や敷金の返還請求権、生命保険や火災保険などの保険金請求権を担保に供するときに設定する契約です。

債権質とは、債務者の債務を保証するための担保権として、賃貸借に基づく保証金や敷金の返還請求権、生命保険や火災保険などの保険金請求権を担保に供するときに設定します。

例えば、ある取引において、A社がB社に対し、半年を限度とする売掛債権を有していたと仮定した場合、通常であればわざわざその売掛債権に対し担保を請求する必要はないのですが、B社の業績がはかばかしくない場合、A社にとっては、売掛債権が回収できるかどうか不安です。そこで、B社がA社に対し継続的に販売して毎月得ている売掛金に対し、A社がB社に対する売掛債権を被担保債権とする債権質を設定するわけです。

この場合、債権者A社は、被担保債権の額に応じた部分に限り、執行手続きによらずに直接取立てをすることができることになります。

一方、指名債権を担保に供する方法としては、債権譲渡がありますが、このように、継続的な取引において発生する債権や本契約と分離して債権のみ譲渡するのが適切でない場合は、債権質を用います。

また、債権質の設定は、抵当権同様、債権者と設定者が異なる物上保証で行うことも可能です。例えば、甲が乙に対し債権を有し、丙が丁に対して債権を有している場合、乙の甲に対する債務を被担保債務とし、丙が丁に有する債権に質権を設定することが可能です。
この場合、甲が質権者、丙が質権設定者となります。

債権質設定契約書に求められる主な事項

債権質契約書作成においては、債権譲渡と同様に、以下のような事項を契約書に記載する必要があります。

  • 債務者の債務(被担保債務)の内容:元本、利息、遅延損害金、債務者
  • 担保に供する債権の内容:敷金の返還請求権や売掛債権など
  • 期限の喪失など債務者の義務など

ここで、気をつけなければならないことの一つに、敷金返還請求権の行使時期です。

敷金は、賃貸借が解除され、明け渡しが完了して初めて行使できるものですが、途中で債権回収の必要性が生じた場合に、賃貸借契約が継続中であるにも関わらず、第三者が強引に契約解除できるかどうか、疑問が残るところです。

仮に賃貸借契約が賃貸人と賃借人との合意に基づき解除された場合であっても、賃貸人が原状回復義務などを怠っていた場合には、保証金や敷金からその費用が差し引かれ、残金のみが質権の対象となりますので、額面通りの担保価値は期待できないと考えた方が賢明ではないでしょうか。

承諾書又は登記

保証金や敷金の返還請求権に質権を設定する場合、債務者である賃貸人に対する確定日付のある通知若しくは承諾書が必要です。

通常、賃貸契約書には敷金や保証金に対し質権などの担保を設定することを禁じている場合が少なくないので、賃貸人が積極的にその禁止を解除する旨を明記するなどの措置が必要です。

また、先の売掛債権等に質権を設定する場合などは、承諾書の代わりに登記することも可能です。

印紙税

債権質設定契約書には、印紙の貼付は不要です。

集合債権譲渡契約書

債務者の債務を保証するために、一定の範囲で現に存在し、又は将来発生する債権を集合的に譲渡して担保に供する場合の契約です。

集合債権譲渡契約とは、一定の範囲で現に存在し、又は将来発生する債権を集合的に譲渡して担保に供する場合の契約です。

債権譲渡担保は、内容証明郵便によって譲渡人から債務者に対し、債権を譲渡した旨を通知するだけで、比較的簡単に第三者対抗要件を具備できるため、金銭消費貸借などの担保としてよく用いられます。

この債権譲渡担保を集めて、債務に充当する契約を集合債権譲渡契約といいます。

ところで、債権譲渡担保は、抵当権と同様に債務者と設定者が異なる物上保証が可能です。

例えば、甲が乙に対する債権者、丙が丁に対する債権者と仮定した場合、丙が、乙の甲に対する債務を物上保証するために、丁に対する債権を甲に譲渡する旨を内容証明郵便にて丁に通知します。これによって、本譲渡債権を、甲が乙に対して有する債権の担保とすることができます。

丙は、乙の甲に対する被担保債務を物上保証するに足るまで、甲に対し、この債権譲渡を繰り返します。

従って、物上保証人若しくは債務者である債権譲渡人は、債権者の要請があればすぐに、債務者に対し、債権譲渡した旨の通知を出せるように準備しておく必要があります。これを通知留保と言います。

債権譲渡における債務者その他第三者への対抗要件

民法467条1項によれば、「指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。」とありますので、先に例のように丙が丁に対し確定日付のある通譲渡知を行います。

また、判例によると、「他人の債権を譲渡する契約をし、当該債権の債務者に対して確定日付ある譲渡通知をした者が、その後同債権を取得した場合には、何らの意思表示を要せず、譲受人は、当然に債権を取得し、これをもって第三者に対抗することができる。」とありますので、先の例でいうと、乙に債務不履行など期限の利益を喪失するような事態が発生した場合、債権者が、譲渡債権の債務者に対して直接債権譲渡を通知することができ、且つ、丙丁間の契約書や注文書、請求書などの証書を甲に交付する旨契約することも可能となるわけです。

通知のほかに第三者対抗要件として、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」による債権譲渡登記の制度があります。

債権譲渡登記申請

これは、譲渡人と譲受人が共同で債権譲渡登記を申請することにより、債務者以外の第三者への対抗要件を具備できるものです。

但し、債権譲渡登記をすることによって譲受人が債権譲渡を対抗できるのは、あくまでも第三者に対してであって、債務者に対し譲受人が自分が新たな債権者であることを対抗するには、債権譲渡があったことと債権譲渡登記がされたことについて、登記事項証明書を交付して通知するか、又は債務者が承諾する必要があります。この通知は、譲渡人だけでなく、譲受人もすることができます。

この債権譲渡登記の利用は年々増加しており、企業が資金調達を行う手段として一般化しているといえます。しかしながら、通知と比較して、手続きの煩雑さ、経費の問題、債権譲渡事実を誰もが知ることができるといった問題もありますので、事案によって、通知と登記のどちらか最適な方を選択して、契約書を作成することをお勧めします。

譲渡禁止特約

債権に譲渡禁止特約が付いている場合、債権譲渡自体が無効になりますので、事前のか悪人が必要です。

印紙税

集合債権譲渡契約書には、1通200円の印紙貼付が必要です。

リース契約書

リース取引とは、企業が機械やコンピュータなどの設備を調達する場合、売主から直接購入するのではなく、一旦リース会社に対象物件を買い取らせた後、その物件をリース会社から借り受ける契約です。

リース取引では、まずリース会社が購入代金全額を負担するため、借主は、購入する場合と比較して、初期投資の負担を大きく軽減することが可能となります。

リース取引は、「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に区分され、前者は、リース期間中に借手が物件利用の経済的価値を全て享受する代わりに、実質的に契約期間中の中途解約が不能で、且つ、資産を通常購入した場合に要する対価部分(購入代金)に加えて、貸手に対して対価の支払いを延期した利息部分(費用、手数料、保険代など全て)をリース料総額として支払うものです。

ファイナンス・リース取引

ファイナンス・リース取引は、更に「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に区分されます。

また、所有権移転ファイナンス・リース取引は、所有権移転条項付、割安購入選択権付、特別仕様物件のいずれかの条件に該当します。これ以外は、所有権移転外ファイナンス・リース取引となります。

ファイナンス・リース取引は、一見すると賃貸借契約と似た外観をとりますが、実態は、借手によるリース物件の購入と、その物件の所有権を担保とするリース会社による購入資金の貸付と分割弁済(リース料)になります。

一方、所有権移転外ファイナンス・リース取引は、以下の要件を満たす取引をいいます。

  • 解約不能リース期間中のリース料総額の現在価値が、借手がリース物件を現金で購入すると仮定した場合の合理的な見積金額(見積現金購入価額)のおおむね90%以上であるリース取引
  • 解約不能リース期間がリース物件の経済的耐用年数のおおむね75%以上であるリース取引

平成20年4月1日以前は、以下の要件を満たす場合、賃貸借として会計処理を行うことができましたが、現在は、「売買取引に準じた処理」が求めれています。例外として、中小企業又は少額短期リースについて「賃貸借処理」が認められています。

  • 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引
  • リース期間が1年以内のリース取引
  • 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引

リース料の設定

リース料の設定は、先にも記載したように、物件購入価格に費用、手数料(利息相当)を加えた総額を、分割弁済回数で除したものとなります。

契約解除と損害賠償の予定

契約不履行などで契約解除がなされたとき、貸手若しくは借手には、予定損害賠償額として残リース料総額を支払う義務が生じます。これにより、実質的に、リース期間中の解約が不能と評価されるわけです。

また、契約が解除されると、リース物件は回収されてリース会社によって処分されますが、その価額は、残リース料の支払いに充当されます。

再リースの設定

契約期間満了後、再リースする可能性がある場合、契約書の中に再リース契約が可能な規定を追加しておくだけで、新たな契約を締結する必要はありません。

印紙税

リース契約書には、印紙の貼付は不要です。

【金銭預託契約】

委託者がものの保管をお願いし、受託者が承諾して成立する契約を寄託契約といいますが、原則、保管したものを契約期間満了若しくはある一定の条件を満たしたときに返還します。

一方、味噌や醤油といった消費財をちょっと借りて、後で同じ種類、品質、数量のものを返還することも寄託契約の一種ですが、これを特に消費寄託契約といい、保管するのではなく消費してしまったので、代わりに同レベルのものを返還するところが前者と違います。
このように保管を委託したものを返還するのではなく、代わりに同レベルのものを返還する典型的な例が、現行預金です。

また、金銭やものを一時的に誰かに預けることを預託とも言います。
特に委託者が金銭をある一定の条件の基で預け、受託者が承諾した契約を預託契約といいます。

この預託契約では、単に保管するだけでなく、委託者の代わりに受託者が預託した金銭を消費することを認め、最終的な残りの処分についても契約で取り決めることが可能です。

例えば、委託者が病院などに長期入院したときに、いろいろな支払いを第三者や家族に依頼することがあります。これも、預託契約の一つの例です。

この場合、委託者が退院した時点で契約終了となりますので、契約終了時、残金を委託者に返還することが一般的ですが、場合によっては、帰らぬ人になることもあります。
この場合でも、契約にその旨記載して、残金を相続人誰それに返還すると記載しておけば、まさかのときでもスムーズに処理することが可能となります。
但し、その旨を相続人に予め知らせておくか、遺言書に明記しておかないと、預託したこと自体が受託者しかしらないことになり、返還しないことに誰も気が付かないということになりかねません。

このように、親族や第三者と預託契約を締結し、ある一定条件の基、預託金の使途をお願いする預託契約は、核家族化が進み、一人で生活している人にとっては、有意義な契約形態であると考えられます。

以下は、委託者が老人ホームに入居したり、死亡して相続が発生したときを想定した預託契約についての一例です。

施設入居や相続を前提とした預託契約

相続が発生すると、委託者は被相続人となり、受託者が親族(血族で相続権がある場合)の場合、相続人となり、受託者は、契約で決められた事項に対し、預託金の中から支払いを済ませます。

例えば、契約の中に、相続が発生したときに、葬儀費用、お返し、家賃などの債務の履行に充てるといった事項を記載しておくわけです。

また、相続だけでなく、一人での生活が難しくなった場合等、老人ホームや介護施設に入居することも考えられますので、そういった場合の費用を委託者からの申し出があれば預託金から支出する旨記載しておけば、委託者は、そうぜざるを得ません。

契約期間の終了に関しては、預託金が完全になくなるか、若しくは、相続発生によって、預託金が相続財産の一部に組み込まれた時点ということにしておけば、税務上の問題もないはずです。

また、相続発生により、被相続人の預金口座が閉鎖されても、預託金が手元にありますので慌てる心配はありませんので、非常に使い勝手の良い契約形態になります。

公正証書にする必要があるかどうか、よく問い合わせがりますが、基本的に必要ありません。どうしても、履行してくれるか心配なばあいには、検討してみて下さい。

他にも信託契約など、もっと複雑な契約形態もありますが、時間も費用もはるかにかかることを予めご承知おきください。当然、信託契約の方が、より長期的、かつ、関係する人も多くなる傾向があります。

それから、契約書に貼る印紙ですが、両当事者が各200円の印紙を貼るだけで済みます。

【貸借契約】

貸借契約には、無償でなされるものと、有償でなされるものによって、契約の名称並びに契約内容が大きく異なります。

使用貸借契約

無償の貸借契約を「使用貸借契約」といい、借主が、貸主からあるものを受け取って、無償で使用及び収益した後、貸主に返還することを約する契約です。

無償とはいえ、借主は、使用するのに必要な経費は自分で負担することになります。

例えば、自動車の使用貸借契約を締結した時、ガソリン代や駐車場の費用は借主負担になります。

契約期間

期間の定めがある契約と定めがない契約では、以下のような違いがあります。

  • 契約期間の定めがある場合:期間満了時に借主は貸主に借りたものを返還する義務が生じます。
  • 契約期間の定めがない場合:契約に定めた目的に従い使用・収益が終わった段階で借主は借りたものを返還しなければなりません。

では、契約期間の定めがない場合、貸主は、借主が契約で定めた目的に従い使用・収益が終わるまで、待っていなければならないのでしょうか?

これについては、貸主は、借主が使用・収益するのに足りる期間を経過したとき、直ちに返還を請求することができます。借主は、無償で借りているのですから、有償で借りている場合よりも立場的に弱いというのが使用貸借契約の大きな特徴です。

賃貸借契約

有償の貸借契約を「賃貸借契約」といい、貸主が、ある目的物を借主に使用・収益させることを約し、借主は、その賃料を支払うことを約する契約です。

賃貸借契約は、当事者間の合意だけで契約の効力が生じる諾成契約になります。

賃貸借契約の主な特徴は、以下の通りです。

  • 貸主は、借主に目的物を引き渡すと同時に、使用収益させる義務を生じます。
  • 貸主は、特約がない限り、使用収益に必要な修繕義務を負います。
  • 借主が、目的物につき必要費や有益費を支出した場合、貸主は、借主に償還しなければなりません。
  • 借主は、契約終了時まで、善良な管理者としての注意をもって目的物を保管(これを、「善管注意義務」といいます。)し、契約終了時には目的物を貸主に返還しなければなりません。
  • 借主は、貸主に対し、賃料を支払うべき義務を負います。
  • 契約期間は、最長20年です。最短の定めはありませんので、20年以下の範囲で契約期間を自由に設定することが可能です。
  • 契約期間の定めがない場合、当事者の一方からいつでも契約を解約する意思表示をすることができます。但し、直ちに契約が終了するわけではありません。

賃貸借契約においては、金銭や動産はもちろんのこと、土地や建物といった不動産に関する賃貸借契約が最も身近な契約として知られています。

皆様も賃貸アパート・マンションに住む前に不動産会社を回った経験はおありでしょう。

指定した賃貸料の範囲内の物件を案内してもらい、間取りや最寄りの駅やバス停までの距離などの条件で気に入った物件が見つかれば、月額賃貸料、駐車場料金、その他礼金や敷金の有無や額、支払期日など詳細を確認して契約します。

普通、借主側が気にする部分は、主に金銭的な部分ですが、一番トラブルの元になるのは原状回復や解約条件などですので、貸主側は、契約書にしっかり記載するするのはもちろんですが、借主側にもしっかり理解してもらう必要があります。

同じ貸借契約であっても、不動産の場合、金銭消費貸借よりも借主を手厚く保護する規定がなされていますし、借主に有利は判例が多く見受けられますので、契約したからといって、契約書通りに物事が運ぶわけではありません。

法律に則って契約書を作成することはもちろんですが、判例を考慮した契約書の作成も考える必要がありますし、債務不履行などの問題が生じたときに、すぐに契約書に沿って強引に行動を起こしたりしないよう貸主の方は気を付けてください。

借地借家法と民法

不動産の賃貸借契約では、民法の規定によると貸主側と借主側は対等の立場で契約することになりますが、現実的には貸主側の方が借主側よりも遥かに強い立場にあるというのが一般的ですので、弱い立場にいる借主を保護して、現実的に貸主と対等の立場に近づけようとして規定されたのが借地借家法です。

ちょうど、消費者契約と同じようなもので、基本的に不動産に関する契約を行う場合、基本とすべき法律は、まず第一に借地借家法であり、そこにない場合は、民法を適用することになります。

転貸契約

建物の賃貸借契約をした後、よく発生するのが転貸借契約です。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、俗に「また貸し」といったりします。

借主は、当然貸主の承諾なしで勝手にまた貸しすることはできません。賃貸借契約に借主がしっかり明記されております(通常は契約者)ので、勝手に貸してしまうのは契約違反になりますので、契約解除といわれても文句は言えません。

以下は、転貸契約締結までの流れです。

1.借主:賃貸借契約書の転貸契約についての内容を確認

通常、地貸借契約書の中にも転貸する場合の条件が記載されているはずですので、借主はまず、その契約内容を確認しなければなりません。

契約書に転貸不可となっている場合もあるでしょうし、転貸する場合は、貸主の承諾を得ることというのが一般的です。

2.借主:管理不動産会社に連絡

転貸借に関する記述が契約書にない場合もありますので、ますは、不動産会社に連絡をいれ、その指示を仰ぐ方がいいでしょう。

3.借主及び転借人:転貸承諾書の作成

不動産会社より、転貸承諾書の準備をするように指示があったら、借主は、以下のような書類を作成しなければなりません。転借人が作成するわけではありません。

画像の説明
4.貸主、借主及び転借人:貸主と転借人の面談及び貸主による転貸承諾書に記名押印

転貸を貸主が承諾するかどうかは貸主側の裁量に委ねることになりますので、必ずしも承諾してもらえるとは限りません。職業や立居振舞などで承諾してもらえないこともあります。反社会的勢に属している人であれば、最初に交わした賃貸契約書にその記述があるはずですし、なくても拒絶することはできます。

5.借主及び転借人:転貸借契約書の作成及び契約締結

転貸承諾が貸主より得られたら、借主と転借人との間で転貸借契約を交わす必要があります。友人、知人同士であっても、思い違いやコミュニケーション不足によるトラブルもよくあることですので、忘れずに契約を交わしてください。

契約解除

契約解除の条件は、契約書に定められておりますが、解除事由に該当したからといって、借主や転借人が即座に部屋を明け渡さなければいけないかというと、そういうわけではありません。

はじめから賃貸料金の支払いを怠り、且つ何度催告しても支払わないような悪質な場合は別として、通常明け渡しまでは6ヶ月の猶予期間が設けられることは普通です。
猶予期間とはいっても、その間の賃料は発生しますので、当然支払わなくてはいけません。

借主と貸主との信頼関係が大きく影響しますので、契約書に記載されていることが全てではないということを肝に銘じて対応する必要があります。

代表的な事例

  • 建物賃貸借契約
  • 定期建物賃貸借契約
  • 定期借地権設定契約
  • 動産賃貸借契約

主契約締結後の変更、更改契約等

  • 建物転貸借契約
  • 覚書
  • 解約通知書(クーリングオフ)
  • 和解合意書

【マスターリース(サブリース)契約】

以前から、相続・贈与などにおける不動産(土地)オーナーによる節税対策として、賃貸アパートやマンション建築が盛んにおこなわれてきましたが、今や一般サラリーマンや企業の経営者などの投資の対象としても、一般的になってきています。

ところが、個人事業主として不動産を所有し、不動産賃貸業を営む場合、法人とは異なり、経費で落とせる割合が少ないため、利益に対し多額の税金を支払うことになります。

そこで、不動産オーナーは、不動産の管理運営を行う新たな法人を設立して、個人事業主として行ってきた業務をその法人に委託する形態をとるように変わってきました。

この形態をマスターリース又は、サブリースと言います。

マスターリースの主な契約形態

マスターリースの主な契約として、ここでは3通り上げておきます。

  1. 不動産の運営管理が、個人事業主から同族会社に移転
  2. 不動産の所有権及び運営管理が、個人事業主から同族会社に移転
  3. 不動産の所有権及び運営管理が、個人事業主から一般の不動産会社に移転
画像の説明

近年、3番目の形態が増加しているとはいえ、小規模、中規模の物件については、以前から行われている1又は2の形態が最も多いと考えられます。

では、上記1,2番の形態をとった場合、契約上、どういう点を考慮すべきなのでしょうか。法律上の問題は当然のことながら、税務上の問題も考慮する必要があります。

運営管理が個人事業主から同族会社へ

画像の説明

以下の図に示す様に、不動産の所有権を有する個人事業主は、一般的に賃貸管理及び設備管理を専門の業者と直接契約を交わし、業務を委託します。

小規模のアパートであれば、直接事業主自ら行うことも可能ですが、往々にしてそういう賃貸住宅は安さばかりが目につき、内情は、設備が古く、修繕すべき個所が随所にみられるものです。

賃借人は、安いから借りたとはいえ、あまりの酷さにすぐに解約して逃げ出したということにならないためにも、古くても清潔感を保ち、設備はきちんと機能する状態を維持すべきです。

そのためには、賃貸管理、設備管理の専門業者に業務を委託することをお勧めします。

但し、当然、業務を他社に委託することになりますので、業務委託費が発生し、家賃収入が当然ながら減少します。

そこで、新たに別の会社(マスターリース会社)を設立し、これまで個人事業主として行ってきた不動産物件全体の管理業務をその会社に移管するわけです。

法人化することによるメリットは、家賃収入(売上高)にもよりますので、一概にはいえませんが、いくつも物件をかかえている場合は、法人化を検討した方がいいでしょう。
この形態が、上記の1番の形態に当たります。

但し、業務を移管しただけで、個人事業主とやることが同じであれば、法人化する必要はありません。つまり、付加価値がなければ、法人に対する報酬を支払う意味はないのです。

この付加価値を如何に法人に持たせるか、というのが非常に重要になります。

その付加価値を明確にし、事業主に対する成果物として報告する義務を規定するのがマスターリース契約です。

従って、契約書の不備は、法人の存在事態を無意味なものに変えてしまう可能性があります。

更に、マスタ-リース契約は、単に事業主とマスターリース会社間の契約だけを考慮すればいいというものではありません。

物件の多くは、中古で何年も他の所有者のもとで、他の管理業者により運営されてきたものです。従って、既にそこには古い所有者と以前の管理業者との間に契約が存在しているわけですので、その契約の内容を無視するわけにはいきません。

当然、古い契約書の内容をしっかり踏襲することが必要ですし、複数の物件を扱う場合は、それらの契約を一つの契約書にまとめるという非常に面倒な作業が待っています。さもなくば、物件毎に事業主とマスターリース会社間で個別契約を締結する必要がありますので、それは、避けるべきです。

こういう作業こそ、書面作成のプロである当事務所の行政書士にお任せ下さい。

所有権及び運営管理が、個人事業主から同族会社

画像の説明

更に一歩進めて、事業主の不動産所有権もマスターリース会社に移管するという考え方が当然でてきます。

事業主から法人へ不動産を譲渡するわけですので、代表者は同じであっても、所有権は、個人から法人に変更されます。従って、一時的に多額の譲渡益が事業主個人に発生することになります。

しかしながら、その後新たな物件を購入し、賃貸収入を得る場合、その帰属先は、個人ではなく、法人となります。よって、事業主個人は、マスターリースの代表者として、役員報酬を法人から受けることになります。

また、家族を社員として雇用することで、税務上のメリットだけでなく、高齢者の場合には生きがいの創出にもつながります。

更に、なんといっても、相続に大きく関係してきます。

個人の相続で一番問題になるのは、不動産です。すぐに現金化できる場合は少ないですし、2015年1月1日から相続税の非課税枠が大幅に小さくなりますので、多額の相続税を納める必要がでてきます。

法人化することにより、相続を株式の譲渡という形に変えて、ご自身の子供に承継させることができます。当然、譲渡税は、相続税の対象となりますが、不動産の評価額そのものが課税対象になるわけではありませんし、マスターリース会社の株式を予め贈与するなどで、相続税を大幅に圧縮することも可能です。

また、法人化することにより、信用面で大きく向上しますので、賃貸管理や設備管理会社だけでなく、近隣の不動産会社や金機関の見方が変わってきます。

これにより、更に事業を発展させる可能性が高くなります。

当事務所では、そのときの契約形態にあった最適な契約書を作成するとともに、将来に向けたコンサルティング並びに契約書を作成いたします。

【企業・営業の買収・合併 】

日本語よりも英語の「M&A」の方が馴染みが深いかもしれませんね。

ハゲタカなどと呼ばれる敵対的買収から相思相愛で対等合併に踏み切る企業、事業部の一部を譲渡する場合もあれば、近年のように後継者不足で経営者の交替が行われるケース等さまざまです。

M&Aは、オープンにする場合もありますが、比較的秘密裏にことを運んで、基本合意した後、メディアに発表し、その後、独占禁止法に触れないかどうかといった法的な手続きに入るケースが多いのが実情です。

また、どういう内容の協議が行われたのか外部の者は知る由もありませんし、M&Aが完了するまでは、詳細が明らかにされることはないでしょう。

従って、秘密保持契約は欠かせません。

秘密保持契約といっても、その目的によって内容は大きく異なりますので、その目的に沿ったものにしなければなりません。

更に、契約途中に、これまでの交渉を総括し、今後両者の目標を再確認する意味で、基本合意書を締結する場合があります。

但し、創業間もない赤字のベンチャー企業の譲渡等では、株式といっても紙屑同然の場合が多いので、株式譲渡契約書のみで済ませるケースも少なくありません。

それは、ケースバイケースですが、M&Aに必要な典型的な契約関係は以下の通りです。

  • 秘密保持契約
  • 基本合意書
  • 事業譲渡契約
  • 株式譲渡契約
  • 合併契約
  • 株式分割契約
  • 株主間契約

典型的な契約の流れ

以下に、M&Aにおける典型的な契約の流れを示します。

  1. 秘密保持契約の締結
  2. 交渉開始
  3. 基本合意
  4. デュー・デリジェンス
  5. 交渉再開
  6. 本契約
  7. 具体的な手続き 

非常に大雑把な流れですし、順番も多少前後することはあるでしょうが、いずれにしても、その流れに沿って必要な契約書を段階的に準備し、契約の締結を行っていく必要があります。

秘密保持契約

企業の吸収合併や事業譲渡にいては、交渉中にお互いの秘密情報が開示されますので、交渉の前に必ず秘密保持契約を締結する必要があります。

では、その契約書に記載する内容や項目は、一般的な共同開発や代理店契約などを行う場合に締結する契約書に記載された秘密保持契約条項と何が違うのでしょうか?

秘密保持契約の要点

秘密保持契約には、少なくとも以下のような事項の定めが必要です。

  • 秘密情報の定義及び範囲
  • 秘密保持契約の対象者(当事者)
  • 管理方法
  • 目的外及び第三者への開示の禁止
  • 開示禁止の例外
  • 存続期間
  • 損害賠償
  • 秘密情報の返却及び破棄

他の一般的な秘密保持契約と定めるべき事項には、大きな相違はありませんが、秘密情報の定義及び当事者が契約内容によって異なります。

契約の当事者は、一般的には合併したり、事業を譲渡する企業になりますが、株式譲渡による場合には、対象となる会社の株主になりますので、契約の当事者に株主が名を連ねることになります。

秘密情報の定義及び範囲に関しては、契約当事者である企業の従業員はもとより、その子会社や取引先等の情報を含む非常に広範囲なものとなります。

また、秘密情報に当たる範囲が非常に広く特定するのが難しいという事情もありますので、逆に、秘密情報に該当しない情報が何かを契約書に明記する方法をとることも可能です。

基本合意書の要点

契約交渉の途中で締結するのが基本合意書となりますので、最終的な契約がまとまるまでは、このような契約は行わないという選択肢もあります。

合意書を作成する場合、その意義が問題となるわけですが、大企業においては、交渉範囲が多岐にわたり交渉期間も長引くことが考えられますので、ある程度時間が経過したところで、合意に達したものが何であるか、今後の交渉では何について協議を行うのか、また、独占的交渉権の有無や契約違反に対する損害賠償等について規定することになります。

目標を明確にするという意義もありますし、決定事項や交渉の進展状況の確認、契約解除条件などを明記して、法的な問題を事前にクリアするという意義もあります。

本契約

本契約の内容は、以下のように交渉の目的によって大きく異なります。

合併契約

合併には、一方の会社が存続し、もう一方の会社が消滅する吸収合併と合併するすべての会社が消滅し新しい会社が設立される新設合併があります。

新設合併よりも吸収合併の方が一般的に多く用いられておりますので、ここでは、吸収合併について記載します。

吸収合併とは、消滅会社のすべての権利義務を存続会社が承継します。従って、消滅会社に債務や訴訟案件などがあれば、それらもすべて存続会社が引き継ぐことになります。つまり、遺産相続における単純承認の場合と同じですので、消滅会社に大きな負債などがあれば、存続会社の屋台骨を脅かす可能性すらあります。

従って、いきなり吸収合併という選択肢はとり辛い面があるので、最初は事業譲渡や株式譲渡などにより、事業の一部のみ取得したり、経営権のみ取得するのが一般的です。

そうはいっても、別の会社ですので、合併契約書には、少なくとも法定された以下の契約内容を記載する必要があります。つまり、これらの事項が契約書に記載されてていない場合には、合併が無効となってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

≪法定記載事項≫

  • 存続会社と消滅会社の商号・住所
  • 消滅会社の株主・社員に交付する株式や金銭等に関する事項
  • 消滅会社の新株予約権者(存在すれば)に交付する新株予約権や金銭などに関する事項
  • 効力発生日

その他、財産の承継や業務の運営、更には解除条件等を記載します。
合併契約書を作成し、記名押印した場合でも、実務はこれからですので、合併が完了するまでの間に契約書に記載された事項に違反するようなことがあれば、契約を解除し、白紙撤回できるようにしておく必要があります。

吸収分割契約

会社分割には、分割される事業を既存の会社に承継させる吸収分割と、新しく設立される会社に承継させる新設分割があります。

どちらにしても、切り出された事業の権利義務は、承継した会社が承継するという点では吸収合併と同じです。

吸収分割においても、吸収合併同様、法定された契約事項がありますので、契約書がそれらの一部を欠いていた場合、契約自体が無効となる場合がありますので、注意が必要です。

≪法定記載事項≫

  • 分割会社と承継会社の商号・住所
  • 承継会社が分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
  • 分割会社又は承継会社の株式を承継会社に承継させるときは、当該株式に関する事項
  • 承継会社が吸収分割に際して分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等に関する事項
  • 分割会社の新株予約権の新株予約権者に対して当該新株予約権に代わる承継株式会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権の内容及び割当に関する事項
  • 効力発生日
  • 分割会社が効力発生日に、全部取得条項付種類株式の取得、剰余金の配当をするときは、その旨

その他の事項につきましては、合併契約に同じです。

事業譲渡契約

事業譲渡は、企業が有する事業に関連する有形・無形資産(ノウハウ、取引関係、ブランド、知的財産権等)を一体として譲渡するものであり、別名「営業譲渡」と呼ばれます。

特に、企業内に存在する事業の一部の事業のみを買収したい場合や債務等を承継しないで元の会社に残しておきたい場合に用います。遺産相続における限定承認の考え方に似ていますね。

事業譲渡契約書に記載すべき主な事項は、以下の通りです。

  • 承継する資産及びその範囲
  • 承継する契約関係
  • 労使関係
  • 譲渡代金(のれん代)
  • 譲渡日
  • 承継人が引き受ける負債
  • 譲渡人の担保責任
  • 損害賠償及び契約解除
  • 譲渡人の競業避止義務

事業譲渡の場合、契約締結後の資産の移転や登記、引渡しなどの手続きを個別に行う必要がありますし、契約関係についても、個別に対応する必要がありますので、実務上の処理が煩雑になりがちです。

また、行政上の許認可につきましては、譲渡できませんので、譲受人は新たに許認可を取得する必要があります。

株式譲渡契約

株式譲渡は、対象企業全体をそのまま買収したい場合に用います。

他のM&Aとは異なり、対象企業の株式が売買されるだけで、資産や権利関係にはなんら影響を及ぼしませんので、最も手続きが容易なM&Aと言えます。

但し、対象企業が抱えるリスクを丸ごと引き受けることになりますので、ある意味吸収合併と同じリスクを抱えることになります。

譲渡契約書に記載すべき事項は、以下の通りです。

  • 譲渡される株式の内容
  • 株式の譲渡日
  • 株主の担保責任
  • 譲渡代金
  • 役員人事
  • 譲渡人の競業避止義務
  • 損害賠償と契約解除

株式譲渡で一番問題になるのが譲渡代金です。
契約交渉から譲渡日の間でも対象会社の資産内容は刻々と変動しますので、どの段階で、どのような方法で対応するか当事者同士、合意する必要があります。

株主間契約(合弁会社設立)

2社又はそれ以上の複数の会社で、製品の共同開発や販売を行うために、株式会社や合同会社、有限責任事業組合等を設立する場合に交わされるのが、株主の間で交わされる株主間契約です。

株主間契約に最低限記載すべき事項は、以下の通りです。

  • 合弁会社設立の目的及び合弁会社の概要
  • 合弁会社に対する出資比率及び維持・変更
  • 株主の権利行使の方法
  • 合弁会社解消時の処理等

また、契約書作成と同時に合意文書として、定款案の作成及び添付が必要です。

具体的な事項については、定款案に記載しているので、契約書の中に新会社についての詳細説明は不要となります。

その他

印紙

  • 秘密保持契約書には、印紙の添付は不要です。
  • 基本合意書の印紙の貼付は、その内容によりますので、一概に言えません。
  • 合併契約書及び吸収分割契約書には、40,000円の印紙を添付する必要があります。
  • 事業譲渡契約書には、印紙の貼付が必要です(印紙税額一覧表の1号文書に該当)。
  • 株主間契約書には、印紙の添付は不要です。

【知財と秘密保持契約】

知的資産の中には、特許、実用新案、意匠や商標といった産業財産権と言われているものや著作権などを含めた知的財産権(以下、「知財」という。)だけでなく、企業独自のナウハウや取引先などの情報、社内研修なども含まれます。

企業間で共同開発する場合を考えますと、ノウハウの交換はもちろんのこと、お互い持ち合わせている知財の使用許諾を契約に盛り込むことは珍しくありません。

中には、知財そのものの売買も発生するかもしれませんが、何はともあれ、企業間のやりとりには秘密保持契約は欠かせません。

いずれにしても、知財、秘密保持に関する規定は、単独で契約を締結する場合もあれば、他の契約書の中の一部として利用される場合もありますので、知財を知らずしてビジネス契約書の作成はできないといっても過言ではありません。

また、近年、大企業だけでなく、中小企業においても、国内外で秘密情報の持ち出しなど不正競争防止法に関する事件が多発していますので、契約の前に社内での情報管理についてもしっかり行わなければなりません。

秘密保持契約

企業間で高額な知的財産権のライセンス供与や大規模な共同開発を行う場合などでは、具体的な打ち合わせに入る前に、まず秘密情報保持契約の締結が行われるのが一般的です。

技術情報や営業秘密など、一般的に知られていない企業内部の情報を相手方に開示する必要性があると考えられるからです。

開発の規模が小さい場合などは、基本契約の中で秘密保持契約について規定しているのをよく見かけます。契約当事者の一方が中小企業の場合などでは、このケースの方が多いかもしれません。

ところで、この秘密保持契約を結んだからといって安心できるわけではありません。

契約当事者の一方が、秘密保持契約違反を犯した場合、民法の債務不履行による損害賠償の請求は可能ですが、訴える側が、相手方の債務不履行を立証する必要がありますので、かなりハードルが高いといえます。

そこで、近年よく用いられているのが、不正競争防止法ですが、これを使用するためには、秘密情報を一般的な情報と明確に区別し、容易にアクセスできないような管理下に置く必要があります。

こうすることにより、秘密情報の対象が何であるか、という特定もできますし、違反を起こした場合、起こした側に違反行為を行っていないという立証責任が生じます。
また、不正競争防止法の損害額に関する規定を利用することで、損害額の算定も容易に行うことが可能となります。

つまり、契約を結ぶにしても、その前にお互いやるべきことがあるということです。

秘密保持契約書の記載事項

秘密保持契約書に最低限記載すべきと考えられる事項は、以下の通りです。

秘密情報並びに秘密情報の範囲の特定

一般的には、公知でない情報という言葉がよく使われますが、打ち合わせや開発過程においてしか知りえない特別な情報が「秘密情報」として規定されるケースがほとんどです。

また、開発等においては、関連会社や子会社に一部を委託する場合もよくあることですので、その場合の条件についても忘れづに規定する必要があります。

管理方法

管理責任者を置き、関連会社を含めえた情報の管理について規定します。

目的外使用の禁止

当たり前のことですが、目的以外では使用できない旨を規定します。

第三者への開示の禁止

第三者への開示禁止と同時に、開示してもよい場合の範囲及び条件等を合わせて記載します。

例えば、社内役員や弁護士、会計士などへの開示条件や税務署、検察などの公的機関への開示許可について規定します。

存続期間

契約期間とは別に、秘密保持契約の効力が及ぶ期間を規定します。

例えば、契約期間満了から5年間とか、期間を定めない場合とか、契約によってまちまちです。特にこうしなければいけないという決まりはありませんので、当事者同士で納得いく期間を決めてください。

秘密情報の破棄又は返却

契約期間満了後の情報の取り扱いについての規定です。
ハード的なものの返却若しくは廃棄だけでなく、ソフトウェアの消去なども含まれます。

損害賠償

共同開発等の前段階での契約とはいえ、他の契約締結前に生じた契約違反に対する損害賠償についても記載しておく必要はあります。

知的財産権に関する契約

知的財産権は、それ自体に不動の資産的価値があるわけではなく、相手方にその権利を譲渡若しくは使用(実施)させて初めて財産的な価値が生じます。

また、知財の種類や使用する態様によって、その価値は変わってきます。

例えば、商標利用権一つとっても、包括的な商標利用契約にするのか、生産する商品1個当たりいくらという契約をするかによって、随分と金額的に差がでてくることがあります。

後者の場合、当然たくさん売れれば、包括利用契約よりも得するわけですが、売れ行きがはかばかしくなければ、逆になるわけです。

このように取引の内容によって、売上及び利益が大きく変わってくる可能性が十分ありますので、知財の種類やビジネスの状況などを考慮しつつ、相手方も納得できるような契約書を作成する必要があります。

また、著作権に至っては、一つの著作物に対し複数の権利が付属してきますので、その権利ごとに使用許諾を行うのか、一括するのかによって、契約内容が大きく異なります。

従って、知財に関する契約においては、一般的に販売されている雛形と呼ばれる契約書を多少書き換えて使用するという手は通用しないのではないかと思われますので、専門家に依頼することをお勧めします。

POINT

一般的な契約の中での使用

秘密保持及び知財に関する規定は、基本契約や個別契約など、契約書のどこかで必ず目にする規定ですので、必ず、その有無を確認するようにしてください。

契約の内容によっては、一見知財に関するものなんてどこにも見当たらないと思ってしまうものもあるでしょうが、創作したものには、黙っていても著作権が発生するので、知財に関するものが何もないというのは寧ろ例外的なことだと思ってください。

一般的な契約書の中で記載する事項ですが、上記の秘密保持契約の中で記載した基本的な事項は、一般的な契約書の中においても記載してしかるべき事項です。
秘密保持契約書と内容的に差をつける必要はありません。

著作権に関しては、著作物の所有権、著作権の帰属をどうするか、ということが重要事項ですので、以下のような点に留意して記載する必要があります。

  • 契約前に既に保持していた創作物の著作権の帰属
  • 契約後に創作された著作物の著作権の帰属
  • 契約前に保持していた著作物と契約後に創作された著作物が分離できない場合の著作権の帰属
  • 著作権の使用許諾など

知財契約の例

  • 特許権(実用新案権、商標権、意匠権)譲渡契約
  • 著作権譲渡契約
  • 特許権実施許諾契約
  • 商標使用権許諾契約
  • 著作権専用実施権許諾契約
  • ソフトウェア使用許諾契約
  • 出版契約
  • 著作権質権設定契約