貨物利用運送事業

貨物利用運送事業とは

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貨物利用運送事業とは、荷主との運送契約により、国内外を問わず、陸海空のうち最適な輸送手段を利用して貨物の集荷から配達までを一貫して行う輸送サービス事業です。

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貨物利用運送事業は、他の事業者(実運送事業者)が経営する船舶(外航・内航)、航空(国内・国際)、鉄道、自動車の運送事業を利用して荷主の貨物を運送するものであり、貨物利用運送事業法(平成元年法律第八十二号)において規定されています。

このように、貨物利用運送事業は、運送事業の一つの形態として、実際にトラックや船舶、航空機、鉄道などを所有することなく、元請として自ら運送責任を負いながら、実運送会社に運送を委託する事業であり、この事業を行うには、『貨物利用運送事業許可』を受ける必要があります。

最適な運送モードの選択

貨物利用運送事業は、以下のように最適な輸送モードを選択することによって、荷主の要請に適切に応えることができます。

鉄道や海運  ⇒ 大量輸送貨物
航空や自動車 ⇒ 生鮮食料品や機械部品などの時間に制約のある貨物

貨物利用運送事業は、単に「実運送」(船舶・航空・鉄道又は貨物自動車運送事業者が行なう貨物の運送)を補完するばかりではなく、物流に対する様々な荷主のニーズに対応した輸送サービスの実現を実運送事業者に対し求めていくという積極的な役割が期待されています。

また、貨物利用運送事業は、実運送の利用とともに荷主先までの集貨・配達を併せて行うか否かによって第一種又は第二種事業に分類されます。

貨物利用運送事業と貨物取次事業との違い

運送取次事業とは、以下に記述する事業のどれかに該当します。

  • 荷主に対して運送責任を負うものではなく、他人(荷主)の需要に応じ、有償で、自己の名をもってする運送事業者の行う貨物の運送の取次ぎ
  • 荷主に対して運送責任を負うものではなく、他人(荷主)の需要に応じ、有償で、自己の名をもってする運送貨物の運送事業者からの受取(運送の取次ぎ)
  • 荷主に対して運送責任を負うものではなく、他人(荷主)の需要に応じ、有償で、他人(荷主)の名をもってする運送事業者への貨物の運送の委託
  • 荷主に対して運送責任を負うものではなく、他人(荷主)の需要に応じ、有償で、他人(荷主)の名をもってする運送貨物の運送事業者からの受取り(運送の代弁)

なお、貨物取次事業は、平成15年より規制が廃止されています。

貨物利用運送事業のメリット

貨物運送事業を新規に行おうとする場合、駐車場や営業所など不動産の確保、車両や船舶など輸送機器の購入・配置、運行管理者の確保など政府の許可を得るための非常に高いハードルをクリアする必要があります。

ところが、貨物利用運送事業許可を得ることにより、自己で車両その他輸送機器を購入・管理することなく、運送事業を行うことができます。

また、軽貨物運送事業を営んでいる事業者にとって、大型の荷物や遠距離輸送の要求には応えることは難しいのが実情でしょう。ところが、こういった場合であっても、貨物利用運送事業許可を受けることによって、元請として運送案件を受注することができます。

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このように、荷物の大きさや種類、輸送距離などにより、自社の軽貨物便を利用するか、他社を利用するか選択することができますので、荷主の方でも、そういった条件を気にすることなく発注することが可能になりますので、顧客満足度向上にも寄与します。

第一種貨物利用運送事業とは

第一種貨物利用運送事業とは、貨物利用運送事業法において、「他人の需要に応じ、有償で、利用運送を行う事業であって、第2種貨物利用運送事業以外のものをいう。」と規定されています。

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具体的には、以下の図に示す様に、実際に自動車・船舶・鉄道・航空機による運送事業を直接行うわけではなく、自己の責任において、所定の集荷地点から所定の配送地点まで、荷物を有償で運送することを荷主から請け負う事業をさします(自動車のみ、発送地から配達地までの運送を請負います)。また、この事業者を貨物利用運送事業者といいます。

船舶に係る第一種貨物利用運送事業

船舶に係る第一種貨物利用運送事業者は、荷主との契約を基に、所定の発港にある保管庫から実運送会社の船に乗せ、所定の着港にある保管庫まで荷物を搬送します。

「実運送」とは、上図に示すような船舶運航事業者、航空運送事業者、鉄道運送事業者又は貨物自動車運送事業者(以下「実運送事業者」という。)の行う貨物の運送をいいます。

船舶に係る第一種貨物利用運送事業には、外航海運事業と内航海運事業があり、前者は国際貨物を、後者は国内貨物の利用運送を請負います。

内航海運に係る第一種貨物利用運送事業

内航海運に係る第一種貨物利用運送事業者は、日本国内の各港間において貨物定期航路、自動車航送を行う貨物定期航路、貨物不定期航路又は旅客定期航路に就航する船舶を運航する船舶運航事業者と運送に関する契約を締結し、荷主に対して運送責任を負って貨物運送サービスを提供する場合は、内航貨物利用運送事業に該当します。

一方、貨物自動車運送事業又は第一種貨物自動車利用運送事業の一環として貨物の運送を引き受ける場合で、船会社と運送に関する契約を締結せず、旅客定期航路に就航する船舶を利用し貨物運送サービスを提供する場合には、内航貨物利用運送事業に該当しません。

外航海運に係る第一種貨物利用運送事業

外航海運においては、輸出に係る貨物利用運送事業が対象であり、輸入及び三国間に係る貨物利用運送事業は、貨物利用運送事業法による規制の対象とはなりません。
なお、輸入後(本邦の港で陸揚げした後)の輸送に係る貨物利用運送については、本法の対象になります。

航空に係る第一種貨物利用運送事業

航空に係る第一種貨物利用運送事業とは、航空運送事業者の行う運送を利用して、荷主からの依頼により、運送責任を負って、有償で所定の発空港から所定の着空港まで貨物を運送する事業をいいます。

ここで、「航空運送事業」とは、他人の需要に応じ、航空機を使用して有償で旅客又は貨物を運送する事業をいいます。

航空に係る第一種貨物利用運送事業には、船舶同様、国内航空に係る第一種貨物利用運送事業と国際航空に係る第一種貨物利用運送事業があり、各々別途登録が必要です。

航空に係る第一種貨物利用運送事業者は、航空運送事業者と貨物の運送に関する利用運送契約を締結する必要があります。

また、国内航空及び国際航空に係る第一種貨物利用運送事業の登録を受ける場合、「国内航空貨物代理店」及び「国際航空貨物代理店」である必要があります。

一般混載事業と宅配便事業

一般混載事業は、主に企業の複数の貨物を取り扱う事業のことで、荷主の複数の貨物を一つの運送状で対応することが一般的です。
料金については、複数貨物の終配達場所が異なることも鑑み、航空運送部分に係る運賃、集荷、配達に係る料金にそれぞれ区分されており、料金については地域制となっています。

一方、宅配便事業は、主に一般消費者の貨物を取り扱う事業で、一般消費者の一つの貨物を一つの運送状で対応することが一般的です。対象を一般消費者の貨物としていることから、分かりやすい商品とすることが求められています。
料金については、ドアツードアの通し運賃、地帯制の料金体系となっているとともに、商品に特別な名称を付与することが求められています。

また、一般混載事業と宅配便事業の要件は、国内航空及び国際航空に係る貨物利用運送事業の各々において規定されていますので、該当する事業が決まりましたら、よく確認する必要があります。

鉄道に係る第一種貨物利用運送事業

鉄道に係る第一種貨物利用運送事業とは、鉄道運送事業の行う運送を利用して、荷主の依頼により、運送責任を負って、有償で、貨物の運送を行う事業です。

鉄道に係る第一種貨物利用運送事業者は、鉄道運送事業者と貨物の運送に関する利用運送契約を締結する必要があります。

自動車に係る第一種貨物利用運送事業

自動車に係る第一種貨物利用運送事業とは、「一般貨物自動車運送事業者」又は「特定貨物自動車運送事業者」の行う運送事業を利用して貨物の運送を行うものをいい、荷主からの依頼により、運送責任を負って、有償で、貨物をお届け先まで運送します。

また、貨物自動車運送事業者を利用して貨物の運送を有償で請負う場合のみならず、利用運送事業者が他の利用運送事業者に運送を委託する場合(利用の利用)も利用運送事業に該当します。

ここで、「一般貨物自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいいます。また、「特定貨物自動車運送事業」とは、特定の者の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業をいいます。

第一種貨物利用運送事業の登録

第一種貨物利用運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければなりません。

登録申請の流れ

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以下は、第一種貨物利用運送事業の登録申請における手続きの流れです。

登録申請書類一覧

第一種貨物利用運送事業の登録申請書には、以下の書類を添付する必要があります。

  1. 次に掲げる事項を記載した事業の計画
    1. 利用する運送を行う実運送事業者又は貨物利用運送事業者の概要
    2. 貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、保管施設の概要
    3. その他事業の計画の内容として必要な事項
  2. 利用する運送を行う実運送事業者又は貨物利用運送事業者との運送に関する契約書の写し
  3. 貨物利用運送事業の用に供する施設に関する事項を記載した書類(貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、保管施設の面積、構造及び附属設備を記載した書類を含む。)
  4. 既存の法人にあっては、次に掲げる書類
    1. 定款又は寄附行為及び登記事項証明書
    2. 最近の事業年度における貸借対照表
    3. 役員又は社員の名簿及び履歴書
  5. 法人を設立しようとするものにあっては、次に掲げる書類
    1. 定款又は寄附行為の謄本
    2. 発起人、社員又は設立者の名簿及び履歴書
    3. 設立しようとする法人が株式会社である場合にあっては、株式の引受けの状況及び見込みを記載した書類
  6. 個人にあっては、次に掲げる書類
    1. 財産に関する調書
    2. 戸籍抄本
    3. 履歴書
  7. 登録拒否要件(法第6条第1項第一号から第五号まで)のいずれにも該当しない旨を証する宣誓書

第一種貨物利用運送事業登録簿への登録事項

第一種貨物利用運送事業の登録を受ける場合、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければなりません。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 主たる事務所その他の営業所の名称及び所在地
  • 事業の経営上使用する商号があるときはその商号
  • 利用運送に係る運送機関の種類、利用運送の区域又は区間及び業務の範囲

第一種貨物利用運送事業登録に当たっての処理基準

第一種貨物利用運送事業の登録を受ける者は、以下の処理基準に適合しなければなりません。
尚、審査の標準的な処理期間は、2~3か月です。但し、書類の不備などにより補正が必要な場合は、更に処理期間が延びることがあります。

事業計画(施設)の適切性

  1. 貨物利用運送事業を遂行するために必要な施設の保有
    1. 使用権原のある営業所、事務所、店舗等を保有しているものであること。
    2. 当該営業所等が、都市計画法・農地法・建築基準法等の関係法令に抵触しないものであり、規模が適切なものであること。
  2. 貨物利用運送事業の遂行に必要な保管施設の保有
    1. 貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、貨物利用運送事業の遂行に必要な保管能力を有し、かつ盗難等に対する適切な予防方法を講じた保管施設を保有していること。
    2. 当該保管施設が、都市計画法・農地法・建築基準法等の関係法令に抵触しないものであること。

事業適格遂行能力

  1. 財産的基礎
    1. 貨物利用運送事業の遂行に必要な最低限度の財産的基礎(純資産300万円以上)を有していること。
  2. 経営主体
    1. 事項の登録拒否要件に該当しないこと。

登録拒否要件

登録の申請をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を受けえることができません。

  • 1年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 第1種貨物利用運送事業の登録又は第2種貨物利用運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者
  • 申請前2年以内に貨物利用運送事業に関し不正な行為をした者
  • 法人であって、その役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下同じ。)のうちに前3項目のいずれかに該当する者のあるもの
  • 船舶運航事業者若しくは航空運送事業者が本邦と外国との間において行う貨物の運送(以下「国際貨物運送」という。)又は航空運送事業者が行う本邦内の各地間において発着する貨物の運送(以下「国内貨物運送」という。)に係る第一種貨物利用運送事業を経営しようとする者であって、次に掲げる者に該当するもの

イ 日本国籍を有しない者
ロ 外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの
ハ 外国の法令に基づいて設立された法人その他の団体
ニ 法人であって、イからハまでに掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の3分の1以上若しくは議決権の3分の1以上を占めるもの

  • その事業に必要と認められる国土交通省令で定める施設を有しない者
  • その事業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない者

利用運送約款の作成

第一種貨物利用運送事業者は、利用運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。これを変更しようとするときも、同様です。

利用運送約款の認可基準

  • 荷主の正当な利益を害するおそれがないものであること。
  • 少なくとも貨物の受取及び引渡し、運賃及び料金の収受並びに第一種貨物利用運送事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
  • 国土交通大臣が標準利用運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、第一種貨物利用運送事業者が、標準利用運送約款と同一の利用運送約款を定め、又は現に定めている利用運送約款を標準利用運送約款と同一のものに変更したときは、その利用運送約款については、国土交通大臣の認可を受けたものとみなされます。

登録免許税の納付

事業の新規登録の場合は、登録後、運輸局から「登録免許税納付通知書」が送付されますので、登録日以後1ヶ月以内に登録免許税として 9 万円の納付が必要です。

複数のモードを同時に申請しても登録免許税は同じです。但し、外国人の場合には、取り扱いが異なります。

運賃及び料金の届出

内航運送又は貨物自動車運送に係る第一種貨物利用運送事業者

内航運送又は貨物自動車運送に係る第一種貨物利用運送事業を経営する貨物利用運送事業者は、運賃及び料金を定め又は変更したときは、運賃及び料金の設定又は変更後30日以内に、次に掲げる事項を記載した運賃料金設定(変更)届出書を所轄地方運輸局長に提出しなければなりません。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 設定し、又は変更した運賃及び料金を適用した貨物利用運送事業の種別及び利用運送に係る運送機関の種類
  • 設定し、又は変更した運賃及び料金の種類、額及び適用方法(変更の届出の場合にあっては、新旧の対照を明示すること。)
  • 設定又は変更の実施の日

貨物利用運送事業者(内航運送又は貨物自動車運送以外)

貨物利用運送事業者(内航運送又は貨物自動車運送以外)は、運賃及び料金を定め又は変更したときは、運賃及び料金の設定又は変更後30以内に、次に掲げる事項を記載した運賃料金設定(変更)届出書を国土交通大臣に提出しなければならない。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 設定し、又は変更した運賃及び料金を適用した貨物利用運送事業の種別及び利用運送に係る運送機関の種類
  • 設定し、又は変更した運賃及び料金の種類、額及び適用方法(変更の届出の場合にあっては、新旧の対照を明示すること。)
  • 設定又は変更の実施の日

運賃料金設定(変更)届出書を提出しなくてもよい場合

  1. 不定期航路事業を営む者が行う貨物の運送
  2. 外航貨物定期航路事業を営む者が行う次に掲げる貨物の運送
    1. 石炭、コークス、鉱石、塩、砂糖、セメント、肥料、木材、穀類、生動物、その他主としてばら積又は満船積を通例とする貨物
  3. 内航貨物定期航路事業を営む者が行う次に掲げる貨物の運送
    1. 石炭、コークス、鉱石、塩、砂糖、セメント、肥料、屑ゴム、木材、穀類、銑鉄及び鋼材、わら工品、その他主としてばら積又は満船

第二種貨物利用運送事業とは

第二種貨物利用運送事業とは、貨物利用運送事業法において、「他人の需要に応じ、有償で、利用運送を行う事業であって、船舶運航事業者、航空運送事業者又は鉄道運送事業者の行う運送に係る利用運送と当該利用運送に先行し及び後続する当該利用運送に係る貨物の集貨及び配達のためにする自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)による運送(貨物自動車運送事業者の行う運送に係る利用運送を含む。)とを一貫して行う事業をいう。」と規定されています。

具体的には、以下の図に示す様に、実際に自動車・船舶・鉄道・航空機による運送事業を直接行うわけではなく、自己の責任において、荷物を有償で、荷主から荷受人まで一貫して運送することを荷主から請け負う事業をさします。また、この事業者を貨物利用運送事業者といいます。

船舶に係る第二種貨物利用運送事業

船舶に係る第二種貨物利用運送事業者は、荷主との契約を基に、荷主から所定の発港にある保管庫へ自動車により搬送し、保管庫から実運送会社の船に乗せ、所定の着港にある保管庫まで貨物を搬送します。更に、着港の保管庫から自動車により荷受人まで責任をもって貨物を搬送しなければなりません。

ところで、荷主から保管庫、保管庫から荷受人まで貨物を搬送するためには自動車が不可欠ですが、第二種貨物利用運送事業には、第一種貨物利用運送と違い自動車による搬送が含まれていません。

そこで、第二種貨物利用運送事業者は、自動車に係る第一種貨物利用運送事業の登録を行うか、又は一般貨物自動車運送事業若しくは特定貨物自動車運送事業の許可を取得して自動車による「実運送」を行う必要があります。

また、自動車に係る第一種貨物利用運送事業の登録を行っている事業者が、第二種貨物利用運送事業の許可を取得した場合、貨物自動車運送事業の許可を得ていなくても、自ら貨物の集配を行うことができます。

逆に、既に貨物自動車運送事業の許可を得ている事業者が第二種貨物利用運送事業の許可を取得した場合には、貨物利用運送事業の登録は必要ないということです。但し、貨物自動車運送事業者は、利用運送事業者を利用して貨物の集配を行うことはできませんので、注意が必要です。

船舶に係る第二種貨物利用運送事業には、第一種貨物利用運送事業と同様に、外航海運事業と内航海運事業があり、前者は国際貨物を、後者は国内貨物の一貫した利用運送を請負います。

尚、保管庫は必ずしも必要ではありません。保管する必要がなく、直接幹線輸送事業者に貨物を引き渡したり、貨物を受け取る場合には不要です。

内航海運に係る第二種貨物利用運送事業

内航海運に係る第二種貨物利用運送事業者は、日本国内の各港間において貨物定期航路、自動車航送を行う貨物定期航路、貨物不定期航路又は旅客定期航路に就航する船舶を運航する船舶運航事業者と運送に関する契約を締結し、荷主に対して運送責任を負って貨物運送サービスを提供する場合は、内航貨物利用運送事業に該当します。

また、内航海運に係る第二種貨物利用運送事業者は、貨物の集荷先から国内の仕立港まで並びに国内の仕向港から配達先までの自動車による運送に関しても、一貫して荷主に対して運送責任を負います。

一方、貨物自動車運送事業又は第一種貨物自動車利用運送事業の一環として貨物の運送を引き受ける場合で、船会社と運送に関する契約を締結せず、旅客定期航路に就航する船舶を利用し貨物運送サービスを提供する場合には、内航貨物利用運送事業に該当しません。

外航海運に係る第二種貨物利用運送事業

外航海運においては、輸出に係る貨物利用運送事業のみが対象であり、貨物の集荷先から仕向港まで国内の自動車を利用し、仕向港から外航船を利用して仕立港まで、仕立港から配達先まで自動車を利用して、貨物の輸送において荷主に対し一貫して運送責任を負っています。

従って、海外における貨物の配達に関しては、各国の法律に基づいた貨物運送事業者を利用する必要があります。

また、輸入及び三国間に係る貨物利用運送事業は、貨物利用運送事業法による規制の対象とはなりません。

航空に係る第二種貨物利用運送事業

航空に係る第二種貨物利用運送事業とは、荷主からの依頼により、運送責任を負って、有償で、貨物自動車運送事業者の行う運送を利用して集荷先から所定の発空港まで、航空運送事業者の行う運送を利用して発空港から所定の着空港まで、貨物自動車運送事業者の行う運送を利用して着空港から配達先まで、一貫して貨物を運送する事業をいいます。

航空に係る第二種貨物利用運送事業には、船舶同様、国内航空に係る第二種貨物利用運送事業と国際航空に係る第二種貨物利用運送事業があり、各々別途登録が必要です。

航空に係る第二種貨物利用運送事業者は、航空運送事業者と貨物の運送に関する利用運送契約を締結する必要があります。また、同時に、航空に係る第二種貨物利用運送事業者が、貨物自動車運送事業者でない場合には、自動車に係る貨物利用運送事業者若しくは貨物自動車運送事業者との間で貨物の運送に関する利用運送契約を締結する必要があります。

また、国内航空及び国際航空に係る第二種貨物利用運送事業の登録を受ける場合、「国内航空貨物代理店」及び「国際航空貨物代理店」である必要があります。

一般混載事業と宅配便事業

一般混載事業は、主に企業の複数の貨物を取り扱う事業のことで、荷主の複数の貨物を一つの運送状で対応することが一般的です。
料金については、複数貨物の終配達場所が異なることも鑑み、航空運送部分に係る運賃、集荷、配達に係る料金にそれぞれ区分されており、料金については地域制となっています。

一方、宅配便事業は、主に一般消費者の貨物を取り扱う事業で、一般消費者の一つの貨物を一つの運送状で対応することが一般的です。対象を一般消費者の貨物としていることから、分かりやすい商品とすることが求められています。
料金については、ドアツードアの通し運賃、地帯制の料金体系となっているとともに、商品に特別な名称を付与することが求められています。

また、一般混載事業と宅配便事業の要件は、国内航空及び国際航空に係る貨物利用運送事業の各々において規定されていますので、該当する事業が決まりましたら、よく確認する必要があります。

鉄道に係る第二種貨物利用運送事業

鉄道に係る第二種貨物利用運送事業とは、荷主からの依頼により、運送責任を負って、有償で、貨物自動車運送事業者の行う運送を利用して集荷先から拠点駅まで、航空運送事業者の行う運送を利用して拠点駅から仕向駅まで、貨物自動車運送事業者の行う運送を利用して仕向駅から配達先まで、一貫して貨物を運送する事業をいいます。

鉄道に係る第二種貨物利用運送事業者は、鉄道運送事業者と貨物の運送に関する利用運送契約を締結する必要があります。また、同時に、鉄道に係る第二種貨物利用運送事業者が、貨物自動車運送事業者でない場合には、自動車に係る貨物利用運送事業者若しくは貨物自動車運送事業者との間で貨物の運送に関する利用運送契約を締結する必要があります。

第二種貨物利用運送事業の許可

第二種貨物利用運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません。

許認可申請の流れ

以下は、第二種貨物利用運送事業における許可申請手続の流れです。

許可申請書類一覧

第二種貨物利用運送事業の許可申請書には、以下の書類を添付する必要があります。

  1. 次に掲げる事項を記載した事業の計画
    1. 利用する運送を行う実運送事業者又は貨物利用運送事業者の概要
    2. 貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、保管施設の概要
    3. その他事業の計画の内容として必要な事項
  2. 次に掲げる事項を記載した集配事業の計画
    1. 貨物の集配の拠点、集配を行う地域
    2. 貨物の集配に係る営業所の名称及び位置
    3. 貨物の集配を自動車で行う場合は、各営業所に配置する事業用自動車の数、車庫の位置及び収容能力
    4. 貨物の集配を他のものに委託して行う場合は、受託者の氏名又は名称、住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名及び営業所の名称及び位置、並びに事業用自動車の数
  3. 利用する運送を行う実運送事業者又は貨物利用運送事業者との運送に関する契約書の写し
  4. 貨物利用運送事業の用に供する施設に関する事項を記載した書類(貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、保管施設の面積、構造及び附属設備を記載した書類を含む。)
  5. 既存の法人にあっては、次に掲げる書類
    1. 定款又は寄附行為及び登記事項証明書
    2. 最近の事業年度における貸借対照表
    3. 役員又は社員の名簿及び履歴書
  6. 法人を設立しようとするものにあっては、次に掲げる書類
    1. 定款又は寄附行為の謄本
    2. 発起人、社員又は設立者の名簿及び履歴書
    3. 設立しようとする法人が株式会社である場合にあっては、株式の引受けの状況及び見込みを記載した書類
  7. 個人にあっては、次に掲げる書類
    1. 財産に関する調書
    2. 戸籍抄本
    3. 履歴書
  8. 欠格事由に該当しない旨の宣誓書

第二種貨物利用運送事業の許可要件

第二種貨物利用運送事業の許可を受ける場合、次に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければなりません。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 利用運送に係る運送機関の種類、利用運送の区域又は区間、営業所の名称及び位置、業務の範囲その他の国土交通省令で定める事項に関する事業計画
  • 貨物の集配の拠点、貨物の集配の体制その他の国土交通省令で定める事項に関する集配事業計画

第二種貨物利用運送事業の許可に当たっての処理基準

第二種貨物利用運送事業の許可を受ける者は、以下の処理基準に適合しなければなりません。
尚、審査の標準的な処理期間は、3~4か月です。但し、書類の不備などにより補正が必要な場合は、更に処理期間が延びることがあります。

以下は、国際航空に係る利用運送事業(国際一般混載事業)についての具体的な処理基準です。

航空輸送との接続の適切性

  1. 航空貨物輸送の利用効率の向上に資するものと認められる事業運営体制の整備が行われるものであること
  2. 国際航空貨物代理店であること

事業計画(施設)の適切性

  1. 事業内容の一般性
    1. 単なる代理店ではなく、コモン・キャリアとしての役割を果たす利用航空運送事業(航空に係る第二種貨物利用運送事業をいう。)であることに鑑み、広く一般の需要に応ずるに足る事業内容となっていること
  2. 貨物利用運送事業を遂行するために必要な施設の保有
    1. 使用権原のある営業所、事務所、店舗等を保有しているものであること。
    2. 当該営業所等が、都市計画法・農地法・建築基準法等の関係法令に抵触しないものであり、規模が適切なものであること。
  3. 貨物利用運送事業の遂行に必要な保管施設の保有
    1. 貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、貨物利用運送事業の遂行に必要な保管能力を有し、かつ盗難等に対する適切な予防方法を講じた保管施設を保有していること。
    2. 当該保管施設が、都市計画法・農地法・建築基準法等の関係法令に抵触しないものであること。
  4. 貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、貨物利用運送事業の遂行に必要な保管能力を有し、かつ盗難等に対する適切な予防方法を講じた保管施設を保有していること。また、当該保管施設が関係法令に抵触しないものであること。
  5. 仕分体制
    海外の仕向地における仕分体制を自ら整備しているか又は仕分代理店との委託契約が適切になされていること。

事業適格遂行能力

  1. 財産的基礎
    1. 貨物利用運送事業の遂行に必要な最低限度の財産的基礎(純資産300万円以上)を有していること。
  2. 過去数年間の健全経営
    1. 過去3か年程度法人の経常収支が健全であること。(新たに法人を設立する場合にあ
      っては、健全な経営が行われるものと認められるものであること。)
  3. 組織・経営主体
    1. 貨物利用運送事業の遂行に必要な組織及び法令知識を有し、事業運営に関する指揮命令系統が明確であり、許可拒否要件に該当しないこと。

集配事業計画の適切性

  1. 集配体制
    1. 集配営業所ごとに集配車両2両以上を含む集配体制が整っていること。自己の車両で集配をする場合にあっては、当該集配業務に適切な構造を有する事業用自動車の使用権原を有すること。
  2. 自己の車両で集配をする場合
    1. 自動車車庫
      1. 配置する計画車両を収容し得る車庫を有すること。この場合、車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保されていること。
      2. 所有権又は使用権の裏付けがあり、かつ、関係法令に抵触しないものであること。
      3. 他の使途に使用されないものであること。
    2. 運行管理体制(自社の貨物自動車運送事業からの併用部分を除く。)
      1. 運行管理者及び整備管理者の選任等事業の適正な運営を確保するために必要な運行管理体制を整えていること。
      2. 集配事業計画に基づき配置される集配車両数が5両以上の場合には、貨物自動車運送事業輸送安全規則第34条及び第18条の規定に基づき運行管理者を選任すること。
      3. 事業計画の遂行に十分な数の集配自動車の運転者を常に確保できるものであること。
  3. 集配業務を他の者に委託する場合
    1. 受託者との間に、集配業務委託契約が締結されていること又はこれと同等のものと認められ得ること。
    2. 受託者が航空に係る第二種貨物利用運送事業者であること又は航空貨物の集配のための必要な体制を有している一般貨物自動車運送事業者であること。

許可拒否要件

許可の申請をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可を受けることができません。

  • 1年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 第1種貨物利用運送事業の登録又は第2種貨物利用運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者
  • 申請前2年以内に貨物利用運送事業に関し不正な行為をした者
  • 法人であって、その役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下同じ。)のうちに前3項目のいずれかに該当する者のあるもの
  • 船舶運航事業者若しくは航空運送事業者が本邦と外国との間において行う貨物の運送(以下「国際貨物運送」という。)又は航空運送事業者が行う本邦内の各地間において発着する貨物の運送(以下「国内貨物運送」という。)に係る第二種貨物利用運送事業を経営しようとする者であって、次に掲げる者に該当するもの

  イ 日本国籍を有しない者
  ロ 外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの
  ハ 外国の法令に基づいて設立された法人その他の団体
  ニ 法人であって、イからハまでに掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の3分の1以上若しくは議決権の3分の1以上を占めるもの

  • その事業に必要と認められる国土交通省令で定める施設を有しない者
  • その事業の遂行上適切な計画(集配事業計画を除く。)を有しないもの
  • その事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有しないもの
  • 貨物の集配を利用運送と一貫して円滑に実施するための適切な集配事業計画が定められて
  • 貨物の集配を申請者が自動車を使用して行おうとする場合であって申請者が当該貨物の集配について、一般又は特定貨物自動車運送事業の許可を受けていない者であるとき、集配事業計画が当該貨物の集配に係る輸送の安全を確保できない場合
  • その事業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない者

利用運送約款の作成

第二種貨物利用運送事業者は、利用運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。これを変更しようとするときも、同様です。

利用運送約款の認可基準

  • 荷主の正当な利益を害するおそれがないものであること。
  • 少なくとも貨物の受取及び引渡し、運賃及び料金の収受並びに第二種貨物利用運送事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
  • 国土交通大臣が標準利用運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、第二種貨物利用運送事業者が、標準利用運送約款と同一の利用運送約款を定め、又は現に定めている利用運送約款を標準利用運送約款と同一のものに変更したときは、その利用運送約款については、国土交通大臣の認可を受けたものとみなされます。

登録免許税の納付

事業の新規登録の場合は、登録後、運輸局から「登録免許税納付通知書」が送付されますので、許可日以後1ヶ月以内に登録免許税として 12万円の納付が必要です。

複数のモードを同時に申請しても登録免許税は同じです。但し、外国人の場合には、取り扱いが異なります。

運賃及び料金の届出

内航運送又は貨物自動車運送に係る第二種貨物利用運送事業者

内航運送又は貨物自動車運送に係る第二種貨物利用運送事業を経営する貨物利用運送事業者は、運賃及び料金を定め又は変更したときは、運賃及び料金の設定又は変更後30日以内に、次に掲げる事項を記載した運賃料金設定(変更)届出書を所轄地方運輸局長に提出しなければなりません。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 設定し、又は変更した運賃及び料金を適用した貨物利用運送事業の種別及び利用運送に係る運送機関の種類
  • 設定し、又は変更した運賃及び料金の種類、額及び適用方法(変更の届出の場合にあっては、新旧の対照を明示すること。)
  • 設定又は変更の実施の日

貨物利用運送事業者(内航運送又は貨物自動車運送以外)

貨物利用運送事業者(内航運送又は貨物自動車運送以外)は、運賃及び料金を定め又は変更したときは、運賃及び料金の設定又は変更後30以内に、次に掲げる事項を記載した運賃料金設定(変更)届出書を国土交通大臣に提出しなければならない。

  • 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 設定し、又は変更した運賃及び料金を適用した貨物利用運送事業の種別及び利用運送に係る運送機関の種類
  • 設定し、又は変更した運賃及び料金の種類、額及び適用方法(変更の届出の場合にあっては、新旧の対照を明示すること。)
  • 設定又は変更の実施の日

運賃料金設定(変更)届出書を提出しなくてもよい場合

  1. 不定期航路事業を営む者が行う貨物の運送
  2. 外航貨物定期航路事業を営む者が行う次に掲げる貨物の運送
    1. 石炭、コークス、鉱石、塩、砂糖、セメント、肥料、木材、穀類、生動物、その他主としてばら積又は満船積を通例とする貨物
  3. 航貨物定期航路事業を営む者が行う次に掲げる貨物の運送
    1. 石炭、コークス、鉱石、塩、砂糖、セメント、肥料、屑ゴム、木材、穀類、銑鉄及び鋼材、わら工品、その他主としてばら積又は満船積を通例とする貨物