定款の作成・認証
定款は、俗に法人における憲法といも言われています。では、この定款にはいったい何が記載されており、逆に何を記載しなければならないのでしょうか?
1.定款記載事項
発起人は、会社を設立すると決めたら、まず、会社の根本規則である定款を作成しなければなりません。
この定款には、以下のように絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項と3つのレベルの記載事項が存在します。
以下に、各レベル毎に記載すべき事項とその内容、及び登記の有無について説明します。絶対的記載事項であるからといって、必ずしも登記が必要とは限りませんので、間違えないようにしてください。
①絶対的記載事項
この記載事項の記載を欠けば、定款自体が無効になりますので、最も大切なものといえます。
絶対的記載事項には以下のようなものがあります。
表1.絶対的記載事項
記載事項 | 内 容 | 登記の要否 |
---|---|---|
目的 | 会社の事業目的・事業内容を記載 | ○ |
商号 | 事業活動を行う際の名称(会社名) | ○ |
本店の所在地 | 会社本店の住所(最小行政区画である市区町村(政令指定都市にあっては区)までを記載しなければなりません。) | ○ |
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 | 会社設立時の財産的規模の最低額。(最低資本金制度が廃止されたため、定款記載の金額を集めれば、会社設立可能となります。) | X (注) |
発起人の氏名又は名称及び住所 | 自然人の氏名又は法人名とその住所を記載(法人も発起人となることができます) | X |
発行可能株式総数 | 会社が発行できる株式総数。(設立時に発行する株式の総数は、非公開会社を除いて、発行可能株式総数の4分の1を下回ることはできません。但し、非公開会社には摘要されません。) | ○ |
(注)資本金については、定款に記載してもしなくてもかまいませんが、会社の登記事項になっておりますので、出資した金額のうちいくらを資本金にするかは、発起人会で予め決定しておく必要があります。
②相対的記載事項
記載を欠いても定款自体は無効にはなりませんが、定款に記載しないとその事項の効力は生じません。
相対的記載事項には以下のようなものがあります。
表2.相対的記載事項
記載事項 | 内 容 | 登記の要否 |
---|---|---|
現物出資などの変態設立事項 | 金銭以外の財産で出資することをいい、現物出資をするものの氏名、財産の額、出資に対して割当てる株式数を記載。尚、対象財産は、原則裁判所選任の検査役の調査を受けなければならない。但し、以下を除く。 ・財産の額が500万円を超えない場合 ・対象財産が市場価格のある有価証券 | X |
株式譲渡制限 | 発行する株式全部に譲渡制限を設ける場合非公開会社となり、株式譲渡の承認を代表取締役に一任したり、取締役全員の承諾を要する旨等を記載 | ○ |
相続人に対する売り渡しの請求 | 相続等で株式が会社にとって好ましくない者に移転した場合等、定款で定めることにより、株式売渡請求を行うことが可能 | X |
取締役会の設置 | 取締役が3名以上いる場合で、取締役会を設置することを決定した場合、取締役会設置会社となる旨を記載 | ○ |
監査役、監査役会の設置 | 取締役会設置会社の場合、監査役もしくは監査役会設置は必須。3名以上の監査役がいる場合で、その過半数が社外監査役の場合は監査役会設置会社になることが可能 | ○ |
広告の方法 | 株主や会社債権者に一定の事項を通知する方法で、定款で定めなければ官報に掲載する方法とされる。 以下の通知方法から1つを選択。 ・官報に記掲載する方法 ・時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法 ・電子広告 | ○ |
役員の任期 | 非公開会社の場合、取締役の任期は最低1年、監査役は4年であるが、最長10年に伸長可能 | X |
③任意的記載事項
任意的記載事項は、記載していなくても無効にはなりませんが、明確にしておいたほうがいいと考えられる事項を記載します。
任意的記載事項には以下のようなものがあります。
表3.任意的記載事項
記載事項 | 内 容 | 登記の要否 |
---|---|---|
代表取締役の選任 | 取締役会設置会社を除く株式会社における代表取締役の選定方法の明確化 ・取締役の互選 ・株主総会の決議 どちらかを選定して、定款に記載可能 | X |
会社の事業年度 | 事業年度の最終の月日(決算最終日)の明確化 | X |
役員(取締役、監査役など)の数 | 取締役または監査役の員数の下限や上限を記載。 | X |
定時株主総会の召集権者 | 通常、取締役会は全ての取締役が招集可能であるが、招集する取締役を定款で指定することが可能 | X |
取締役の報酬 | 取締役の報酬、賞与その他職務執行に伴う財産上の利益について、定款に記載することにより、株主総会の決議が不要となる | X |
2.公証人による定款認証
会社の定款認証は、今や本人の委任を受けた行政書士等が、法務省のオンライン申請手続きを使って行うのが一般的です。これにより、印紙代4万円が不要になるという大きなメリットがあります。個人で行う場合は、オンライン申請はできませんので、これまで通り4万円の印紙代がかかります。
以下、定款認証の手続の概要です。
①事前確認
通常オンライン申請を行う前に事前に所定の公証役場の公証人に対して、発起人の委任状、印鑑証明、定款の案を送付して、定款に間違いや矛盾等がないかチェックが行われるので、実際の定款認証では問題が起こることはほとんどありません。
②法務省オンライン申請手続
公証人の事前チェックが完了した定款のPDFに、オンラインでデジタル署名をした後、公証人により認証作業が行われます。定款認証を行う公証人は、オンライン認証対応の全国の公証役場から選択可能です。従って、申請時は、わざわざ公証役場まで足を運ぶ必要はありません。
③定款謄本および定款原本の入手
オンライン申請では、全てネットワーク上で手続を行うことができましたが、定款謄本と原本は通常、公証役場の窓口で公証人の手数料5万円と必要な部数の謄本料(1部約千円)と引き換えに受け取ります。
定款原本ですが、従来は、定款に原本と朱印が押されておりましたが、現在は、原本はCD-Rで渡されます。
また、謄本も、従来と違って、<同一の情報の提供>という確定日付の入った書面が定款と一緒に交付されます。定款には発起人の印がなく、代わりに手続を行った行政書士や弁護士などの記名、職印が押されているだけなので、謄本を請求された時は、定款と同時に<同一の情報の提供>の書面も提出してください。
この書面に関しては、コピーして提出可能な場合と原本が要求される場合があります。謄本が必要な場合は、再度、手続を行った行政書士等に依頼して入手する必要がありますが、大抵は最新の履歴事項全部証明書と“原本に相違ないことを証明する。”と朱書した最新の定款を提出すれば間に合います。
定款認証までの基本的な手続の流れ
以下は、当事務所における、会社設立及び許認可申請等に関するお問合せを頂いてから業務が完了するまでの基本的な手続の流れです。
(1)お問合せ:電話・メール・FAXによる当事務所へのお問合せやご相談
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(2)お問合せの概要確認と面談の日程の調整:メール、FAXでのお問合せの場合、当事務所より折り返しご連絡いたします。尚、電話でのお問合せ時、面談の日程調整を同時に行いますので、本ステップは省略することがございます。
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(3)面談:基本的に依頼主ご指定場所にて行います。
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(4)直接またはFAX、メールによる報酬のお見積書提示:お見積書の内容、金額、支払い方法などをご確認いただき、当事務所へ依頼するかどうか決定して頂きます。※報酬及び法定手数料は、交通費などの経費を除き全て前払いとなりますので、予めご了承下さい。
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(5)業務内容、報酬、支払い方法などご納得頂いた場合、ご契約:契約書に記名・押印またはご署名いただくと同時に本人確認のために免許証などの証明書の提示ならびに写しを頂きます。尚、証明書の提供は法律で義務付けられております。
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(6)業務着手:契約当日、具体的な作業日程や定款作成に必要な基本的な事項の確認作業を行います。
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(7)定款ドラフトの作成:当事務所にて定款のドラフトを作成いたしますので、商号、目的の確認、加筆修正、ご意見などを頂き、ドラフトを完成させます。また、同時に発起人全員の印鑑証明書を頂きます。
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(8)定款付委任状への押印:当事務所が依頼者の代理として、公証人の事前チェックを受け、最終版を作成致します。その定款と委任状を一緒にとじた書類(「定款付委任状」といいます)に発起人全員の実印を頂きます。
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(9)定款認証:当事務所が依頼者の代理として、オンラインで定款認証の申請を行い、その後、公証役場にて原本作成(CD-R)、定款謄本の取得を行います。
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(10)定款認証終了の通知及び依頼者への受渡し:定款認証が完了しましたら、原本及び謄本の発起人へお渡しします。同時に今後の作業について詳細をご説明して、定款作成までの作業は完了します。
定款変更手続
定款の変更を行う場合の流れを以下に説明します。
①株主総会の開催および議事録の作成
定款に記載された事項を変更する場合は、必ず株主総会によって行う必要がありますし、その内容を議事録として残しておくよう法律で義務付けられています。
しかしながら、定款変更をしたら法務局に変更登記の申請をしなくてはいけないかというと、全部が全部そうとは限りません。あくまでも、登記事項として規定されたものだけですので、絶対的記載事項、相対的記載事項に当てはまらないものは株主総会だけで効力が生じます。
任意的記載事項でも、内容によっては、登記に絡むものもありますので、古い定款をお持ちの方は再度見直して下さい。手間と経費の節約になる場合があります。例えば、役員の任期ですが、従来ですと、取締役の任期は2年でしたので、2年ごとに役員の改選が必要になりましたが、譲渡制限会社であれば10年まで伸長できますので、10年に変更するだけで、登記手続きの手間が5分の1に減ります。
株主総会議事録作成には、総会議長である代表取締役、ならびに出席取締役全員の氏名を記載しますが、記名、押印は基本的に必要ではありません。
但し、登記が必要な場合は、代表取締役のみ会社代表印を使用し、他の取締役は認印で押印します。
株主総会にて、新代表取締役の選任を行う場合は、通常出席取締役は個人の実印を押印しますが、前任代表取締役が出席している場合は、前任代表取締役が代表印、その他の取締役は認印で構いません。この場合、新しく就任する代表者は、株主総会に就任承諾の記載があれば、就任承諾書の代わりに株主総会議事録を援用することが可能です。
②登記申請書類の作成
登記事項を変更する場合、その変更する内容によって、作成する資料および添付する資料が異なります。
最低限必要な書類は、以下の通りです。
(1)株式会社変更登記申請書
商号、本店、登記の事由、登記すべき事項、登録免許税、添付書類を記載し、申請人(法人名称、本店住所)、代表者氏名と住所及び代表印を押印します。
(2)登記すべき事項
登記すべき事項を記載したCD-RもしくはA4用紙(OCR用紙である必要はない)を添付。
(3)登録免許税
登記の事由によって金額が異なります。資本金1億円以下の会社の役員変更登記は、1件につき1万円(複数名同時に登記する場合も1万円で済みます)ですが、目的、商号、本支店移転、増資は概ね3万円です。
但し、本支店を管轄している法務局以外に移転する場合は、6万円が必要になり、申請書も両方の登記所の分を準備して、旧登記所に同時に提出する必要があります。
(4)株主総会議事録
株主総会議事録のフォームは、インターネットや本屋でよく見かけますので、ここでは、最低限記載が必要な項目についてご説明します。
議決権のある当会社株主総数 ○名
議決権のある発行済株式総数 XX株
総株主の議決権の数 XX個
出席株主数(委任状による出席者含む) ○名
この議決権のある持株総数 XX株
この議決権の総数 XX個
出席取締役 xx xx(議長兼議事録作成者)
取締役 △△ △△
定時(又は臨時)株主総会が適法に成立した旨の宣言
決議事項
出席取締役の記名押印(代表者のみ会社実印、その他は認印)
③変更登記申請
必要な書類が揃った段階で、本店所在地を管轄する法務局もしくは出張所の法人登記窓口に書類と印紙を一緒に提出します。手続は、法務局の混み具合にもよりますが、通常5分もあれば終了します。
新規の法人登記は約1週間程度かかりますが、変更登記は、3日程度で済みます。
完了日を記載した用紙が窓口に置いてありますので、1枚頂いてくれば、間違いないでしょう。
④履歴事項全部証明書等の書類の入手
登記が完了すると履歴事項全部証明書を必要部数入手するわけですが、管轄登記所が東京23区内であれば、誰でも、23区内のどこの出張所でも入手可能です。
法務局で登記印紙(550円x必要部数)を購入し、登記事項証明書交付申請書に必要事項を記入し、印紙を貼って、窓口に提出します。
数分で証明書が交付されますので、登記事項に間違いがないか確認して終了です。