セコムパスポート for G-IDを使って、PDFファイルに電子署名を行う場合、法務省のページをみると、未だにAdobe Acrobat Standard/ProとMistyGuard<SignedPDF>署名プラグインソフトの組合せが推奨されています。しかしながら、署名プラグインソフトは、32ビットのAcrobatしかサポートしていませんので、Adobe側で勝手にAcrobatを32ビットから64ビットにアップデートされてしまうと、電子署名の仕組みが正常に動作しません。いざ電子署名しようとしても、エラーが起こってうまくいきません。私も最初その原因が分からずあたふたしてしまいましたが、幸いにも、もう1台のPCが32ビットのWindows 10だったので、Acrobatも32ビットのままでしたから、なんとかその場はしのぐことが出来ました。
でも、このままではもう一台の64ビットのWindows PCは電子署名ができないままになってしいます。何か解決策はないかといろいろ試してみたのですが、64ビットWindows 10では、どうしても64ビットのAcrobaがインストールされてしまうため、MistyGuard<SignedPDF>署名プラグインソフトを使う限り、このシステムで電子署名を付すのは不可能と判断しました。
ではこの問題をどうやって解決するべきかいろいろ調べたところ、無料のAdobe Acrobat Reader DCを使い、しかも、署名プラグインを使うことなく電子署名ができるということを書いているページをいくつか見つけたので、試してみました。また、電子署名をする場合、定款認証ではデジタル印が必須と思っていたのですが、テキストデータとして署名しても、デジタル印という形で署名しても、別にどちらでも構わないということが分かってきました。しかしながら、定款だけでなく、契約書や請求書などに職印を押印する場合を考えると、署名プラグインでやっていたようにデジタル印をPDFに押印する方が望ましいことは明らかです。実際に設定してみると、若干設定の手間はかかりますが、署名プラグインソフトを使うのに比べると、雲泥の差でした。
では、実際に設定してみましょう。
- Adobe Acrobat Reader DC(32ビット版か64ビット版かは、WindowsのOSに合わせた方がいいでしょう)をPCにインストールします。
- Acrobat Reader DCをオープンします。
- 上部メニューから「編集」をクリックし、次に一番下にある「環境設定」をクリックします。
- すると一連の細かなメニューが縦に表示されますので、「署名」をクリックします。
- 右側に「デジタル署名」の設定画面が表示されますので、一番上にある「作成と表示方法」オプションの「詳細」ボタンをクリックします。
- 「作成と表示方法の環境設定」画面が表示されるので、画面一番下にある「表示方法」オプションの中から「新規」ボタンをクリックします。
- 「署名の表示方法の設定」画面が表示されるので、まず一番上のタイトル欄に「行政書士電職印」といった分かりやすい名前をつけます。
- 次に「グラフィックの設定」オプションの中から「取り込まれたグラフィック」ボタンを選択した後、その横にある「グラフィックの取り込み元!」の下にある「ファイル名」ボタンをクリックします。
- 「ピクチャーの選択」画面が表示されるので、「参照」ボタンを使って、行政書士の職印を保存してあるファイル名を指定し、「OK」ボタンをクリックします。
- 「署名の表示方法の設定」画面に戻りますので、次に「テキストの設定」オプションから「名前」「日付」「ロゴ」「ラベル」のチェックを外します。
- そうすると、その上にあるプレビュー画面には、全てのテキストが消え、職印だけが表示されているはずです。
- これで、署名の表示方法の設定は終了しましたので、「OK」ボタンをクリックします。
- 「作成と表示方法の環境設定」画面が表示されるので、ここでも、「OK」ボタンをクリックすると、最初の「デジタル署名」の画面に戻ります。
引き続き「IDと信頼済み証明書」の設定を行います。設定方法は以下の通りです。
- Adobe Acrobat Reader DCをオープンし、上部メニューから「編集」➡「環境設定」➡「署名」と順番にクリックし、「デジタル署名」の画面を表示します。
- 「デジタル署名」の画面の中にある「IDと信頼済み証明書」オプションの「詳細」ボタンをクリックします。
- 「デジタルIDと信頼済み証明書設定」画面が表示されるので、「ID追加」アイコンをクリックします。
- 「デジタルIDを追加」画面が表示されるので、「◎既存のデジタルIDを次の場所から選択:」オプションから「ファイル」選択し、「次へ>」ボタンをクリックします。
- 「参照」ボタンを使って、セコムパスポート for G-IDの証明書が入ったファイル名(cert.p12)を選択してファイル名を入力し、パスワード(PINコード)を入力します。
- 「次へ>」ボタンをクリックし、最後に「完了」ボタンをクリックします。
- 「デジタルID」画面に戻りますので、上部の「使用方法」オプションメニューから「ニックネームの設定」を選択します。
- 「ニックネームの設定」画面が表示されるので、分かりやすい任意の名前を入力します。例えば、「行政書士証明書」でも何でも構いません。入力したら、「OK」ボタンをクリックします。
- 「デジタルIDと信頼済み証明書設定」画面に戻ったら、右上の✖印をクリックして、設定画面を閉じると、「デジタル署名」の画面に戻るので、「OK」ボタンをクリックします。
以上で、設定が終わりましたので、次に実際に電子証明書をPDFファイルに付加してみましょう。手順は以下の通りです。
電子証明書の追加方法
- PDFファイルをオープンし、「ツール」タブをクリックします。
- 複数のアイコンが表示されるので、「証明書」アイコンをクリックします。
- 画面上部の「証明書メニュー」から「デジタル署名」タブをクリックし、マウスボタンを押しながら左上から右下にデジタル印を押印する範囲を指定します。
- 「デジタルIDで署名」ポップアップ画面が表示されるので、その中から先程設定したニックネームのついたデジタルIDを選択し、「続行」ボタンをクリックします。
- 次に表示方法を選択する画面が表示されるので、「表示方法」ボタンからグラフィック表示設定画面で作成したタイトル名を選択します。表示方法は、デフォルトでは「標準テキスト」表示になりますので、職印を追加したい場合は、変更が必要になります。
- プレビュー画面で確認できますので、職印のみ表示されているのを確認できたら、「署名」ボタンをクリックします。
- 最後に、署名したファイルを保存する場所とファイル名を指定する画面が表示されるので、保存したいフォルダとファイル名を指定すると、画面には元のPDFファイルが表示され、デジタル印が押印されるのを確認することができます。