コンプライアンス事例


1. 飲食店におけるコンプライアンス違反の事例

飲食店における不適切な画像のインターネットへの投稿が相次いでいます。
しかも、不適切な行いをしたのが、主にその飲食店の従業員やアルバイトであり、自らその画像をFacebookやTwitterといった不特定多数が閲覧することのできるソーシャルネットワーク(SNS)とよばれるサイトにアップしていました。

以下は、テレビや新聞雑誌を騒がせたコンプライアンス違反のニュースの一部です。


【「ローソン」では、店員がアイスクリーム冷凍陳列ケースで寝そべる画像がFacebookに投稿され、同日休業】


【「ミニストップ」では、客がアイスケースに寝そべる画像が投稿され、同店のアイスクリーム類の撤去及び購入者に返金、更にケースの入れ替えを余儀なくされた】


【「ほっともっと」では、店員が冷蔵庫で寝そべる画像がTwitterに投稿され、謝罪】


【「丸源ラーメン」では、従業員が食材であるソーセージなどを口にくわえる画像がTwitterに投稿され、同店の開封済食材の廃棄、冷凍庫の消毒が済むまで休業し、謝罪】


【「バーガーキング」では、ハンバーガー用のパンの上にアルバイト従業員男性が寝そべる画像が投稿され、謝罪】


【ステーキ・ハンバーグレストランチェーンの「ブロンコビリー」では、男性アルバイト店員2人が冷凍庫に入った写真がTwitterに投稿され、同店を閉店】


【多摩のそばや「泰尚(たいしょう)」では、学生アルバイトが大型食器洗浄機に入っている画像がTwitterに投稿され、同店は一旦閉店、そして倒産に追い込まれた】


上記のような事例は、恐らく氷山の一角ではないかと思われますし、インターネットが普及する以前から行われた可能性があります。
以前は、ネットがなかったり、今のようにSNSに簡単にアップできるような機能が備わっていなかったために出来なかっただけかもしれません。

いずれにしても、分別をわきまえた大人が、園児や小学校低学年と同レベルかそれ以下と思われるような行為を行ったことに対して許されるわけがありません。

では、上記のような行為は、法律違反なのか?

結論からいうと、刑事罰を問うことは難しい事件が多いと考えられます。

確かに不衛生ですので、上記のような行為により、顧客が食中毒をおこしたり、上記行為により持ち込まれた病原菌により病気になった場合は、食品安全基本法違反などで処罰することは可能と考えられます。

しかしながら、そういう被害は報告されていません。

では、事件を起した本人並びにその会社にどういう社会的な制裁が課されるのか・・・


そもそも法律というのは、社会で起こる全ての行為について規定しているわけではありませんし、現実的に考えても不可能です。では、このような行為に対して、一般国民は黙って見過ごさなければいけないのかというと、そうではありません。

企業は、消費者から物やサービスを購入していただいてはじめて成り立つものですから、消費者から相手にされなければ存続することはできません。

消費者は、倫理的に正しい行為か、倫理的に許される行為か、という観点から上記のような事例を見ます。法律はむしろ二の次かもしれません。
倫理的に決して許される行為ではないと判断した場合、そういう行為を行った者やその直属の上司はもちろんのこと、その会社のトップを許しません。

不買運動を起す場合もあれば、運動は起さないにしても、誰もその店でものを買ったり、サービスを利用することはなくなるでしょう。最終的には、閉店せざるを得ないというだけでなく、それに対して適切な対応をしなかった企業そのものが社会から見放されることになります。

今回の不祥事が発覚し、トップに情報が伝わった時点で消費者に謝罪し、場合によっては会社自ら営業停止若しくは閉店という決定を下したことは、企業にとって被害を最小限に食い止める適切な行為であったと考えられます。

消費者は、上記のような食品を扱っている会社は勿論のことそれ以外の企業に対しても、安全・安心を求めています。法律に規定している水準を満足しているからといっても、その水準が、消費者が納得できるレベルに達していなければ、社会の要請に応えているとはいえません。

これを、コンプライアンス違反というわけです。

つまり、企業にとって、法令順守は当然のこと、それ以上に倫理的な観点から社会の要請に応えているかという、コンプライアンスの観点から自らの行為を俯瞰することが大切であるといえるわけです。

2. 偽装表示におけるコンプライアンス違反の事例

阪急阪神ホテルズの内部告発ではじまったホテル、百貨店の誤表示、偽装表示問題ですが、責任をとってトップが辞任したのは、最初の阪急阪神ホテルズのみでした。

他の企業では、典型的な『赤信号皆で渡れば怖くない』的な対応で、誰も辞任の辞の字も口にしません。

記者会見で、「申し訳ございませんでした。今後、再発防止に最善を尽くします。」といういつもの文言で全て幕引きが図られています。

ところで、こういった表示が本当に法律に違反していないのかどうかというのがまず問題になります。

消費者庁が平成24年1月に発行している『食品表示の適用範囲について』という資料によれば、JAS法、食品衛生法、健康増進法は、外食に関しては表示義務を課していません。

つまり、一連の外食産業の表示に関しては、上記三法における法律違反は問えないと考えられます。

では、景品表示法ではどうでしょう。

景品表示法第四条一号(以下)の有利誤認に当る可能性があるかどうか、ちょっと検討してみたいと思います。

(不当な表示の禁止)
第四条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

一連の事件では、実際のものより著しく優良であると示していることは確かです。

しかしながら、他社との競争や、顧客の不当な誘引、一般消費者の合理的な選択を阻害したかどうかといわれると確たる証拠もなければ、消費者自信の口からそういったクレームも聞こえてきません。

結果として、経営トップは、法律違反していないから辞任する必要はないという決断を下したのだと考えられます。

ところで、これが倫理的に許される行為ですか、と問われると・・・お応えできる人はまずいらっしゃらないのではないでしょうか。

「だから、謝罪したのだ」といってしまえばそれまでですが、消費者自身がこんなコンプライアンス違反は許せないといえば、対応は随分と変わったものになったと考えられます。

これまでも賞味期限の改ざんや使いまわしでトップの辞任や倒産、事業譲渡などがありました。これは、食材を入荷しているスーパーや百貨店、生協などの流通業者がその食品会社の製品を購入しないと決めたからです。

その一番の原因は、やはり消費者の目が怖かったからでしょう。問題なった企業の商品を仕入れているというだけで、同じような疑いの目で見られたくないという気持ちが働いたのだと考えられます。

しかしながら、同じことが今回は起こりませんでした。

それは、一斉に同業者がコンプライアンス違反を自主的に認め、会見を開いたからではないかと思います。

これも、不祥事を起した企業の生き残るための有効な作戦ですから、一概に責める訳にはいきません。

つまり、企業が成長するにつれいろいろな問題をかかえることになりますので、コンプライアンス違反等をどのタイミングで自主的にオープンにするかというのは、今後益々重要になってくるものと考えられます。

3. 国家公務員の内部告発の事例における問題点

内部告発に関するニュースとしてマスメディアで大きく取り上げられているものとして、「J-ADNI」の問題があります。

これは、アルツハイマー病の早期発見を目指す全国規模での臨床研究を行っているプロジェクトで、アルツハイマー型認知症の患者を長期的な観点から観察し、軽度認知障害から重度に移行する過程を観察するものです。

これには、経産省、文科省、厚労省が携わっており、プロジェクトの中心は、東大医学部を中心とした研究チームと全国38の医療機関、薬品会社11社です。

ことの発端は、目ぼしい成果もなく、論文の発表もないまま6年の歳月だけが流れ、焦りが背景にあったようです。

そこで、研究チームのトップをはじめ、一部の研修者がデータの一部改ざんを医療機関に支持し、それを受けた医療機関がデータベースを構築する担当者に修正を依頼し、改ざんされたデータがデータベース化されています。

これに対して、改ざんを知った一部の研究者が、監督官庁である厚労省に告発したところ、以下のような対応をしたため、公になってしまったようです。

内部告発事件

今回のプロジェクトは、ご存知の通り、国家プロジェクトであり、参加者は、国立大学の教授はもちろんのこと、私大であろうが、民間の研究者であろうが、準国家公務員として扱われますので、「公益通報者保護法」の対象外となります。

では、彼らは何によって保護されるかというと、国家公務員法等によって保護されることになるわけですが、厚労省の対応は、あまりにもずさん・・・・。

告発メールを改竄を支持した人に転送し、それにより、告発者は、プロジェクトを追われ、尚且つ、今回の改竄問題の調査を、改竄を指示した人にやらせている点は、隠蔽工作以外のなにものでもないと言わざるを得ません。

また、今月には、J-ADNIとして論文はまだ発表していないといってはいましたが、昨年8月既に論文が発表されており、しかも、論文に使用されたデータの14%に改ざんされたデータが含まれていたことが判明したため、その内部告発者が共同研究者12人に対し、論文の撤回を申し入れるにいたっています。

プロジェクトと研究者の今後の行く末は、政府にお任せするしかありませんが、ここでの問題をもう一度整理すると以下のようになります。

  • データ改ざんという事実のもみ消し
  • 内部告発者の情報を当事者に通知
  • データ改ざんに関する調査を当事者が実施

いくら公務員が公益通報者保護法適用外といっても、コンプライアンスという点からすると、「トップが不正をした場合、コンプライアンスは全く意味を持たなくなる」という最も基本的なルールを侵していることになり、もはや絶望的なレベルにあるといえるのではないでしょうか。

4. グローバル企業のコンプライアンス

「上海福喜食品」の期限切れ鶏肉や豚・牛肉を加工して日本などに供給していたという不祥事が従業員の内部告発によって明らかになりました。

事実かどうか2014年7月29日現在、不確かな点はありますが、TV局の職員が従業員にまぎれて、隠しカメラにより内部を撮影した模様が連日のように放送されております。

床に落ちた食肉、青くカビの生えた食肉を再度加工にまわしている様子など、衛生面、健康面においても大きな問題ですが、それにもまして、従業員の「食の安全」に対するモラルの低さに驚かされます。

最初にこのニュースを耳にしたときは、中国の企業だからそういうこともありうるな、と思われた人も多かったはずです。しかしながら、そうではなく、世界17カ国に拠点を持ち、40カ国以上に食肉を供給している米食肉大手OSIグループの子会社であることが分かるやいなや見方は全く違った方向に向き始めました。

OSIグループのCEOは、当初「組織的な関与を否定し」、「工員の個人的な行為」との見解を示しましたが、日本マクドナルドやファミリーマートなど大手ユーザからの取引停止の通知を受け、単に子会社の問題では片付けることができないと悟るや、一転してOSIグループとして謝罪、再発防止に努める旨記者会見を開きました。

何故、OSIグループは一転して、窮地に立たされてしまったのでしょうか?
(これは、私的な意見ですので、事実は異なる部分もあるかもしれません。予めご承知置きください。)

  • 消費者が食品会社に求めている最も重要なことは「食の安全」であり、OSIはじめ全ての食品会社が最も気をつけなくてはいけないことですが、それを軽視していたように見えてしまったこと。
  • 工員の不祥事は、会社の責任であり、特に食の安全など命にかかわる場合、従業員や単なる子会社役員の責任だけでは済まされないという自覚がOSI及びCEOに欠如していたように見えたこと。
  • 食の安全確保に対する子会社の役員を含む従業員に教育がなされていないか、若しくは十分でないことを露呈してしまったこと。
  • 利益にばかり目を向け、労働者の就労環境に目を瞑り、ひいては食の安全をないがしろにして、OSIが最も大切しなければいけない社会からの信頼を裏切ってしまったこと。

では、今回、OSIグループがこのような大失態を犯した背景にはいったい何があったのでしょうか?

単なる内部告発では済まない問題が潜んでいるといわれています。

内部告発という手段を使い、外資子会社における従業員の低賃金などの劣悪な作業環境の改善を促すことであり、中国政府からOSIが利用されたという見方もあります。

いずれにしても、先進諸国にとってショックなのは、コンプライアンスを逆に利用されてしまったこと。

中国の一企業であれば、当然のごとく重大なコンプライアンス違反として、その企業の責任を追及してお終いになるところですが、それが、親会社の米国企業の責任に至ってしまったというところに、これまでとは大きく違う何かを感じざせます。

これは、対岸の火事ではありません。

中国をはじめ発展途上国に進出している日本の企業にとっても、従業員の不満が爆発して、同じような結末を迎える可能性が否定できないからです。

大企業だから中小企業だからなんて悠長なことは言っておられません。

海外を含む全てのグループ会社におけるコンプライアンスに関する体制、組織、教育などの点検、見直しを早急に進めるべきではないかと思われます。